20.魅惑の誘い


 お昼になった。待ちに待ったご飯の時間。今日はさやかちゃんも南ちゃんも部活のミーティング、なつかちゃんは何か用があるとかで一人である。


 今日に限ってお弁当ではない。食堂で食べてみようかな。


 一階の食堂は活気に溢れていた。一年生はあまりいなく、上級生の体格の良い人達が多いようだ。


 居心地の悪さを感じながらも、どうにかきつねうどんを頼む。人が周りにいない席を選び座った。


 やっぱり混んでるんだなぁ。


 ズルズルとうどんを啜りながら、明日はみんないるといいなぁと考えていた。


「猫宮さん、隣いいかな?」


 声がした方を向くと、そこにはお盆を持った春野先輩がいた。


 慌ててうどんを飲み込んで返事をする。


「ど、どうぞ」

「ありがとう」


 私の右隣に座る先輩。


「僕、食堂って大きい人ばかりで苦手なんだよね。それなのに、お弁当は忘れるし購買はほとんど売り切れてるし。どうしようかと思ってたところに猫宮さんがいたから助かったよ。隣を他の人に盗られないように急いで来たんだ」


 どうしてそんなに無邪気に恥ずかしいことを言うんですか。


 そんなことは言えずに「そうなんですね」と返した。


「あ、きつねうどん同じだね」


 春野先輩といるとふわふわした気持ちになる。


「そういえば、前言ってたお祭り行く人決まった?」

「あぁ、いえ。すっかり忘れてました。みんな忙しいから多分行かないですね。一人で行く勇気はないですし……」


 すると、先輩は驚くことを言った。


「一緒に行かない?」


 え、なんで、え。


「僕も行く人いなくて、でも行ってみたくて。猫宮さんとなら楽しそうだなって今思って。……どうかな?」


 そんな風に言われて、断る人が何処にいるというのか。


「是非一緒に行きましょう!」


 今から緊張してきたのは言うまでもない。


「そっか、よかった。嬉しいよ。ありがとう」


 この後のうどんの味は私には分からなかった。

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