六月
18.恋は仕勝ち
「やぁ、猫ちゃん。元気?」
廊下で出会った光先輩に声をかけられた。
「そこそこですよ。それに、何日か前に会ったばかりじゃないですか」
「猫ちゃん、何日かは経っているんだよ。それはもう元気かどうか聞くには十分じゃないかな」
真剣なように見えるが、多分色んな人に言っているんだろう。
「それで、元気がそこそこだなんて悲しくないかい? もっと毎日元気に生きた方が楽しいはずさ。俺が、猫ちゃんが毎日元気に過ごせるようにお手伝いさせてくれないかい?」
廊下でそんなこと言われたら、行き交う人がこちらを見てくる。
「先輩、そういうことは恥ずかしいのでこんな場所で言わないでください」
そして何が悪いのか分からないというような表情をしないでください。
「俺はね、ちゃんと伝えたいんだよ。今言わないでいつかなんて思っていたら、永遠に言えなくなってしまうかもしれないからね」
優しい柔らかな微笑みで先輩はそう言った。
「それはそうかもしれないですけど……」
なんだか寂しそうにも見えて、私は他に言葉が出てこなかった。
「まっ、気になる女性にはしっかりアプローチしないとね。恋は仕勝ちって言うし!」
すぐに私が知っている光先輩に戻った。寂しそうに見えたのが気のせいだったかもしれない。
「あぁ、またそういうこと言って」
「いいじゃない。俺はこのやり取りも好きだよ」
光り輝くような笑顔だった。
私はまた何も言えなくなった。
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