17.近場のミステリー

 放課後になるとみんな部活や習い事に行ってしまい、私は暇を持て余している。そうなると真っすぐ家に帰るのももったいないような気がしてしまい、なかなか家に帰れない。


 人が少なくなった教室にいるのも寂しく思い、図書室に向かう。色んな本を読むいい機会だ。


 扉が開いているため、中からは音が聞こえる。


 入ると、カウンターには楠木君と泉先生がいた。


「「あ、猫宮さん。ちょうどいいところに」」


 二人同時に私に声をかける。


「どうしたんですか?」

「それが見当たらなくてですね。先程返却されたばかりの本が」

「カウンターに置いてあったんだ。それなのにこの数十分の間に消えたんだよ」


 困っているはずなのになんだか楽しそうな二人。


「誰かが今読んでるとか?」


 泉先生は目をきらきらさせながらこう答えた。


「それが、本が返却されてからは誰も借りに来たりしてないんですよ」


 消えた本、謎というわけか。


「先生、これはミステリーですね。僕わくわくします!」


 本を探したいというより、この謎を解きたいようだ。


「とにかく、先生と楠木君はもう一度カウンター周辺を見てみてください。私は誰かが読んでないか見て回ってきます」


 さて、そんなに人もいなさそうだからすぐ終わるかな。


 テーブル席の人を確認するも、みんな勉強していて本は読んでいない。窓際のカウンター席には、うん、いつもの春野先輩しかいない。


 戻ってなかったことを報告しよう。


 戻ると、なにやら盛り上がっている二人。


「あ、猫宮さん。やっぱりこの辺りにはなかったよ。それで先生と話してたんだけど、やっぱりこれは何かがいるんじゃないかって」


 絶対何処かにあるよ、と言う空気ではないな……。


「とりあえず、他の人が読んでるということはなかったです。関係ないとは思いますけど、春野先輩が寝てました」

「また春野は寝てるのか」

「そういえば、さっき春野先輩と話してませんでしたか?」


 ん? ということは、カウンター付近に来てたのか。


「そうそう、最近貸し出し数が減ってるよねっていう話を」

「もしかして、先輩が持って行ったんじゃ……」

「「え」」


 三人で寝ている春野先輩に近づく。


「ないですね」

「なさそうです」

「あの上着の下は?」


 先生が上着を捲ると、そこにはもちろん。


「「あった」」


 がっかりしたのか肩を落とす二人。


「あってよかったです、よね?」

「そうですね、そうですよね」

「うん、あったほうがいいよ。うん」


 この後、ずっと二人は謎解きの時間だと思ったのにという話をしていた。「春野先輩のせいで楽しみが無くなった」と嘆いていた。


 もしかしたら、このまま帰りの時間までは謎のままの方がよかったのかもしれない。


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