5. 陽光に照らされて
「くぅちゃん、今日は陸上部見に行こう」
「空とさやかが行けるならうちも行くよ。昨日は他に見学者いなくてすぐ帰ってきちゃったんだよなぁ」
南ちゃんは昨日見に行ってたんだ。
「うん、今日は大丈夫。三人で行こうか」
三人なら見学もしやすいだろう。ただ、すごい勧誘されないか心配。
放課後、私達は校舎を出てグラウンドに向かおうとする。ただ昨日と違って校舎前ではどこかの部活の勧誘が行われていた。
「こんにちはー、見学どうですかー?」
一人の男子生徒がチラシを配っている。黒のメッシュ……見たことあるような?
「あ、そこの女の子三人。陸上部見ていかないか? 見学だけでもいいから」
あぁ、そうか。この人部活紹介に出てた人だ。近付いてくるとしっかり顔が見えた。黄緑色の瞳をしている。
「あれ? そっちの君は昨日見学に来てた子だよね?」
「はい、そうです。あれ、昨日は勧誘してなかったですよね?」
先輩は溜息をついてこう答えた。
「そうなんだよ。その予定はなかったんだけどね。でも昨日の――」
話している途中で、別の男子生徒が割り込んできた。
「昨日見学者が全然いなかったから危機感を覚えて、この次期部長様が声掛けをすることになった」
肩くらいまである茶髪をハーフアップにしている人が笑顔でそう言った。この人も黄緑色の瞳だ。
「おい、
肩を組んでいる様子を見るに仲が良いみたいだ。
「そんなこと気にしないの。ほら、怒ると女の子たちが怖がっちゃうよ」
「え、あぁ、すまない……」
仲は良いけれど、振り回されてる感もある。
「先輩方、うちらちょうど陸部に見学行こうとしてたんですよ」
そう言うと次期部長さんは目を輝かせて、私達をグラウンドまで引っ張っていった。
部員が走っているのを見ながら、説明が始まった。
「実際の練習に入る前に、走るのとストレッチが基本。それから競技ごとの練習に入る。あ、そうそう。俺は二年、一条
「陸上部とは何も関係ない二年の宇佐見
この人何にも関係なかったのね。
私達もそれぞれ自己紹介をした。
「良い子達そうだねぇ。みんな入ってくれれば安泰なのにね、陽?」
「そうともいかないのが現実……」
がっかりしている様子。するとそれを聞いた南ちゃんが話し始める。
「うちは陸上部入りますよ!」
おぉと宇佐見先輩が声を漏らす。
「本当か! よかった、それはよかった」
一条先輩は今にも泣きそうなくらいだ。
「二人はどうかな? 選手じゃなくても、マネージャーっていう手もあるんだけど」
「え、マネージャーも募集してるんですか?」
さやかちゃんが声を弾ませた。競技やるのは自信がないって言ってたもんね。
「おう。どう? マネージャー? 入らない?」
ちょっと間が空いてさやかちゃんは答えた。
「マネージャーやります」
「本当か。よっし、よっし」
一条先輩は「ぶちょぉぉ」と言いながら、練習中の一人に駆け寄っていった。何か言葉を交わすと、部長と呼ばれたその人はガッツポーズをした。
新入部員を集めるのって思ったより大変なんだなぁ。
「二人も決まったら陽が勧誘した甲斐があるってもんだねぇ。南ちゃんとさやかちゃん? 陽のことお願いね」
宇佐見先輩はそう言って、私達に背を向け何処かへ行こうとした。だが一度振り返ってこう言った。
「君もね」
私のほうを見てウインクした。
なんで私もなんだろう? 部活に入らなければあまり関係なさそうだけど。
宇佐見先輩が行ってしまった後、一条先輩が戻ってきていないことに気付いた。
「あれ、光がいない。本当に気まぐれだなぁ」
頭をポリポリ掻いてまた溜息をつく。
「三人はもう少し見学していってくれ。俺は練習に戻るから質問とか受けれないが」
それじゃあと手を上げ、一条先輩は行ってしまった。
「まさかマネージャーも募集してるなんて思わなかったなぁ。明日入部届貰おうっと」
「あ、じゃあうちも一緒に貰いに行くよ。空はどうする?」
「私は部活はいいかなぁ。委員はやってみようかなとは思うんだけどね。入会届はもう渡されたんだよね」
「そうかそうか、じゃあ今日は帰ろうぜー」
そうしようと私達は家に帰った。
二人が部活やるって言った勢いで、私も委員会やる流れにしてしまったけど、大丈夫かな。まぁでも難しいことやるわけではなさそうだし、心配しなくてもいいか。
委員やってたら、カウンターで寝てた人にまた会うかもしれない。そんなことを思いながら、この日は眠りについた。
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