19話 顔を埋めた股間が射精した時ってどんな感じ?
「なるほどね。すごくいい仮説だ。じゃあ確かめてみようよ」
立川の一分の隙もない完璧な仮設に対して米五がそんなことを言いやがった。
「は? 確かめる? どうやってだよ。無理だろうが」
とある個体の振る舞いだけに注目した場合、AIと人間を見分けることができないというのはもはや常識である。人間とAIを振る舞いだけで見分ける場合に用いられることが多いチューリングテストのクリアは現代のAIなら平気で出来てしまう。
由希が鼻で笑った。
「アホね」
「・・・・・・あ?」
露骨な罵倒に青筋が走る。
「別にAIと人間を見分けることが出来なくても今の仮説の検証なら出来るでしょ」
「・・・・・・チッ」
言われて思いついたのだが、認めるのも癪だったので舌打ちをする。
・・・・・・どうやら俺は立川の仮説に相当浮かれているらしい。
「た、互いにエピソードを話すんだよね?」
ドヤ顔の由希が口を開こうとしたところに先んじて立川が言う。
まあ放っておいたら俺は間違いなく由希と喧嘩してたからな。
「うん、そうそう」
口喧嘩を未然に防げたことにほっと息をつく立川に、米五が首肯する。
思考を模したAIと言ってもそれは俺ではない。確実に少し違う。なので、立川の仮説が正しい場合、俺たちがそれぞれのVR空間で経験した出来事は確実に違う。それを互いに照らし合わせれば仮説の検証が出来るというわけである。また最初に想像したように俺たちが全員同じVR空間で高校に通っているのならば、当然だが、俺たちの経験した出来事は全て同じになるはずだ。
「ということで、わたしの経験したエピソードを初めに話すよ。無子アルフ火累初花が四人同時にいたエピソードで印象的なものだと・・・・・・」
少しの間記憶を探るように腕を組んでいた米五が、やがてパチンと指を鳴らして口角を吊り上げる。
「これでいこう。あれは先週の水曜日だったかな」
ふむ、水曜日。俺のVR高校では俺たち四人が昼食を食堂で食べた日だな。
「四人で一緒に食堂でご飯を食べたんだけど、倉吉さんのお弁当を食べたアルフくんが気持ち悪くなってトイレに行ったんだよね」
・・・・・・ふむ、同じ事を経験した気もするがまあそういうこともあるだろう。
気になって立川と由希の顔をちらっと見やると二人とも顔を引き攣らせていた。どうやら二人にも同じ事があったらしいな・・・・・・。
いやでもさすがに次の頭のおかしな出来事はかぶらないだろう。
「で、育山くんも倉吉さんと昼食を交換することになったんだけどそこに丁度アルフくんが帰ってきてね?」
米五がこらえきれないといった様子で肩を揺らす。
・・・・・・嫌な予感が。
「で、倉吉さんから逃げる育山くんがアルフくんの方に倒れる。そして」
そこで米五が一瞬言葉を切ると同時に、顔を真っ赤にした立川が音をたてて立ち上がる。
「あ、あー! わ、私先に教室帰るね!」
立川は叫ぶと走って教室を出て行ってしまった。
残されたのは俺由希米五。
・・・・・・残念だが、どうやら俺たちは同じVR空間に存在する高校に通っているらしい。
「あのさ、気になってたんだけど、遊梨浜さん」
導かれた結論に微妙な気持ちになり黙っていると、米五が言った。由希が視線だけを米五に向けて続きを促す。
「自分が顔を股間に埋めてる相手に絶頂される気持ちってどんななの?」
「どうしてそ・・・・・・」
由希は「どうしてそんなことあたしが答えないといけないのよ」とおそらく言おうとして途中で口を閉ざす。
んんっ、と咳払い。
「・・・・・・気持ちの悪い温かさと変な臭いで最悪ね」
「じゃあ倉吉さんの胸を揉んだ時は?」
「そもそも胸だと気づかなかったわ」
「おい」
由希の台詞に俺の中の倉吉初花が『ま、まだ成長期だから!』と涙目になっていた。
というか明日からVR、どうするんだよ・・・・・・。
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