16話 真・ラッキースケベ
「・・・・・・相談がある」
「え!? 相談!? なになに!?」
火累の言ったその一言に俺のテンションがぶち上がる。
え!? 天上天下唯我独尊野郎、火累が俺に相談だと!? どうやら俺の想定以上に好感度を稼げているらしいな!
いつの間にか近づきすぎていた俺に火累は少し身体をのけぞらせ、顔を真っ赤にしてぼそりと言う。
「・・・・・・これは友達の話なんだが」
「う、うんうん!」
あっ、これ火累の話だ。
もちろん口には出さなかったが。
「・・・・・・そいつは他人と話すのが苦手なんだと」
「う、うんうん!」
あ、こいつは他人と話すのが嫌いなわけじゃなくて苦手だったんだな。
「・・・・・・でもそいつは何とかして友達を増やしたいらしい」
「! うんうん!」
火累の奴、そんなこと思ってたのか。なら態度を改めればいいのに。
「・・・・・・でもそいつは人と話す時、緊張とは少し違うが、平常心でいられなくていつも上手く話せないらしい」
「そうなんだ!」
なら、いつも火累が上から目線なのは本意じゃないってことか?
プライドが邪魔して上手く話せない火累。
難儀な性格をしている。
「・・・・・・そいつに何かアドバイスをやってくれないか。オレが伝えるから」
「・・・・・・そっかぁ。アドバイスかぁ・・・・・・」
「あ、あぁ・・・・・・。た、たの・・・・・・」
俺が頭を回していると、明後日の方向を向いた火累が何やら言った。
あ? これはまさか・・・・・・。
たのむ、って言おうとしてるのか!?
「うん、なにかな!?」
「・・・・・・な、なにもない」
ぐいっと近付いた俺に火累はそう言って口を閉じてしまった。
俺は唇を尖らせる。
「え~」
「・・・・・・いいからアドバイスを寄越せ」
「むぅ~・・・・・・」
すっかり普段の様子に戻った火累に、俺は「頼む」の一言を引き出すのを諦め必死に頭を回す。なにせ、火累からの真面目な相談事である。何としてでも成果を上げておきたい。
「う、う~ん・・・・・・そ、そうだなぁ~・・・・・・」
火累がちらちらと期待するようにときおり見てくる。
・・・・・・何も思いつかないんだけどどうしよう。
なぜなら俺はこいつに全く共感できない。頑張れよしか言えない。リアルで友達欲しいなんて思ったことないし、幼いころから親しんできたVRゲームではいつも苦もなく大勢に好かれるような美少女になりきってきたからそんなことを思ったことがない。
・・・・・・適当なこと言おうかな。
うん、それでいこう。こういうので一番大事なのは思い込みだからな、うん。効くと思ったら効くし、効かないと思ったら効かないんだよ。
なので火累が全幅の信頼を寄せている至高の女の子、倉吉初花の言うことなのだから何を言おうともこいつには効果があるだろう。。
「・・・・・・あ、あー、わ、わたしのおばあちゃんが言ってたんだけど、手のひらに魚が四つの
「さかながさかんなさま・・・・・・」
一音一音口にした火累が実際に䲜を手のひらに書いてぱくっと飲み込んだ。火累が首をひねる。
あんまり効果を実感してもらえなかったようで焦った俺は急いで話を終わらせる。
「う、うん! これで解決かな!」
「・・・・・・あ、ありが・・・・・・伝えとく」
ありがとうを言えない火累をからかっても良かったのだが、俺の内心はそんな場合じゃなかった。ともかく嘘がばれちゃいけない!
「う、うん! その子、上手く話せるようになるといいね!」
「・・・・・・ああ」
「あ」
視界に飛び込んできた光景に、先ほどまでの焦りはどこかに吹き飛んで呆けてしまう。
「・・・・・・あ?」
火累が笑ったのだ。本当に少しだが。
それに気づいたと同時に何かが俺の中を突き上げ、きゅぅうっと心臓の辺りが縮む。
そして顔がじんじんと熱を帯び始め、火累を見ていられなくなる。
・・・・・・いや何でだよ! なんで俺は火累にときめいてるんだよ! 火累がちょっと笑っただけだぞ! ちょろいにもほどがあるぞ!
「・・・・・・おい、顔が」
「か、かお!? あ、ちょ、ちょっと赤くなってるのかな!? ゆ、夕日のせいでそうみえるだけだよ!」
「・・・・・・?」
「あ、わ、わた、わたし今日、用事があるんだった! か、かかっ、帰るね!」
どうも今日は倉吉初花と混ざりすぎているらしく、焦った俺は回れ右。
「あ? いや、ちょっと待――!?」
「―――――!?」
走り出そうとしたところで、背後から伸びてきた火累の手に肩を掴まれバランスを崩し俺の身体は前に向かって傾き始める。すると、肩に置かれていた手が俺を強引に引っ張り火累と俺の身体の位置が入れ替わる。すなわち俺が上で火累が下。同時に背中に手が回され、抱き締められる。
そして・・・・・・。
どっしーん。
「いたたたた・・・・・・」
俺は言いながら目を開く。
真っ暗だったので地面に手を突き身体を少し起こす。
当然だが真下にあったのは火累の顔だった。
間近で見たこいつの顔に思わず見惚れていると
「(ぐりぐり)」
「んあっ!?」
身体を貫いた感覚に俺の口から嬌声が漏れる。
「(ぐりぐり)」
「んあっ!?」
再び俺を襲った感覚にまたしても嬌声が漏れる。
どうやら俺の股間が何かにぐりぐりされているらしい。
「(ぐりぐり)」
「ん~~~~~~~~!?」
続く同じ感覚に声にならない声が俺の口から迸り、このままだとどうにかなってしまいそうだったので上半身を全力で起こして火累から距離を取る。
そして股間に押し付けられていた物の正体を確かめようと股間の辺りに視線を落とす。
「!?」
火累の股間が! 俺の、というより倉吉初花の股間を! ぐりぐりしていた!
硬くなってはないようだがお前それは・・・・・・!
「いったぁ・・・・・・」
「せ、せ、せ・・・・・・!」
「あ? 倉吉さん?」
「責任取れるのかなぁ~~~~~~~~~~~!?」
ばっちーん!
「は? は? は??」
「火累くんのっ、ばかぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!」
ラッキースケベの範疇を超えてるだろうが!
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