第10話 会議

次の日、上井たち日沖探偵事務所のメンバーは、事務所に全員集まり会議を開いた。


情報分析を担当している中里理栄が、モニターの前で説明を始めた。


「それでは、これより会議を始めます。最初に今の状況をお伝えします。依頼者の名前は、柵木祐美子。柵木ビル管理事務所の社長、柵木誠吾の妻です。依頼内容は、最近、夫に元気がなく悩みを抱えているようなので調べて欲しいというものです。我々は現在3日間、柵木誠吾を尾行しましたが、特に怪しい点はありませんでした」


理栄はそこまで話すと、いったん会話を止め、目の前にあるノートパソコンのキーを叩いた。


すると、モニター画面に決算書が映し出された。


「これは柵木ビル管理事務所の決算書です。見ての通り、会社は黒字を維持していますが、売上高は減っています。主な原因はこの2年でテナントとして入った企業が15件も倒産しているからです。この数は会社の規模を考えると、少し多いです。このあたりのことは、今後、詳しく調べたいと思います」


次に理栄はモニターに谷本優佳の画像と野球のユニフォームを着た男性の画像を出した。


谷本優佳の画像は、昨日、上井が柵木家の前にいる所を撮影したものだった。


「こちらの画像は、昨晩、柵木家の前で撮ったものです。写っている女性は谷本優佳。現在、大東海大学の3年生で、野球部のマネージャーをしています。隣の画像は柵木誠吾の次男、柵木重則です。彼は昨年まで彼女と同じ野球部に在籍していましたが、試合中の怪我が原因で退部しました。彼女の話によると、柵木重則は現在、錦糸町にある闇カジノに出入りし、そこでディーラーをしているそうです。分かっていることは以上です」


理栄が話終わると、代表の日沖政仁が口を開いた。


「闇カジノの件だが、錦糸町に光塚(みつずか)組が仕切っている有名な所がある。ディーラーができる所だとしたら、間違いなくそこだ。そこでみんなの意見を聞きたい。谷本優佳の話が真実だった場合、私は柵木誠吾の困り事であるないに関わらず、柵木重則をこの状況から救いたいと思う。皆はどうだ?」


「彼を助けることに賛成します。まだ前途ある若者ですから」


上井はすぐに返事をした。


「私も彼を救いたいです」


モニターの前にいる理栄が上井に続いた。


「僕も賛成です」


冨田も同意し、


「皆に同じ」


早希も賛成した。


「よし、これで皆の意見が揃ったな。我々は柵木誠吾の身辺調査と並行して柵木重則も調査し、場合によっては助けるよう行動する。そこで、彼が本当に闇カジノに出入りしているのか、そしてどこまでその世界にはまってしまったか、まず状況を知りたい。裕一郎」


「はい」


「闇カジノに入れるよう俺が手配するから、お前は中に入って柵木重則の様子を確認してこい」


「俺が行くんですか?」


「そうだ。前途ある若者を救いたいんだろう?」


「ええ、まあ」


「ということで、頼んだぞ」


上井は社長命令で光塚組が仕切っている錦糸町の闇カジノに潜入することになった。

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