『火の島』上の下
やましん(テンパー)
『火の島』上の下
『あんた、おいらの仕事、手伝ってくれないかなあ。』
焼き鳥やのおじさんが言いました。
『はあ?』
『どせひまだんべ。まあ、ボランティアという感じね。そのかわり、焼き鳥
喰い放題ね。』
『はあ・・・・まあ、あまり、重労働でなければ。でも、それって、許可されてるの?』
『大丈夫だあ。まあ、おいらは古株だ。管理者にも多少の、つてはある。連中は、宇宙ごき政府の雇われでね。地球で言えば、カラス族に近い。頭はもっと良いがね。あんたが美味しく食べてる鳥は、『火の鳥』と呼ばれる、別名『火炎鳥』とも呼ばれる鳥で、あのように時々ジェット噴射して飛ぶんだ。扱いが多少難しい。火炎を浴びると火傷するから。そこいらは、おいらがやるから、客サービスしてくれよ。あんた、あたりが柔らかいから。』
おじさんは、そう言いながら、まだ息絶えたばかりの『火炎鳥』を鉄板に乗せました。
おじさんの焼き鳥は、『鉄板焼き』というのが特徴であります。
で、その焼き鳥になる前の『火の鳥』の肌に、刻印が押してあるではないですかあ。
『讃えよ、ごき帝王。』
そうして、手書きで・・・なんと!
『立て万国の樹上者。』
とあるのです。
『ここね。ここ。』
おじさんは、下の方を火箸でつっついた。
宇宙ゴキの監視カメラは、公園の二隅にあります。
しかし、どやら、ここは死角である。
『この木の上で人生終わらせるのさ、おいらも、あんたも。』
おじさんは、『No.』と、鳥の肌に手書きした。
ぼくも、『No.』と書いた。
宇宙ゴキは、強度の近視である。
監視カメラは、かなり、いい加減らしいです。
しかし、そこらあたりは、ロボットがカバーしているんだという。
『あんた。あれ。ほら、捕まったな。』
ロボット鳥が、スーパーのゲーム・コーナーのリフトみたいな、でも、もっときっちりと掴める足で、何かをブラ下げて、向こうを飛んでいるのです。
それは、あきらかに、人間でした。
『あれは、えさになるんだ。ばらばらに、解体されて。地球でも、同じことが起こっているはず。彼らは、なんでも食べる、そういうあたりでは、人間とよい勝負だけんど、なんせ宇宙ゴキの本体はでっかいからなあ。あんた、見た?』
『まあ、みましたよ。』
『おいら思うに、あんたは、ちょっと待遇がよい。おかしいと思わなかった? 巣の中に、地球とそっくりなコンセントがあったり、冷蔵庫があったり。おいら、話を聞いて、おや、と思ったんだ。』
『いやあ。たしかに、ひと揃え揃ってるとは。でも、よそのことは知らないし。』
『うんだ。ここ以外の訪問は禁止だもんね。あんたとこは、個室のSクラスさね。地球で、なんか、こねあったんだろ。』
『いやあ。ぼくは、落ちこぼれだしなあ。ただ、うちの地下には、地球ゴキとかの、本部があったけど。《ごき大将》とか、いた。』
『それさ。《ごき大将》は、宇宙ゴキにも、大きな顔なんだ。見た目は、小さいがね。そこらあたりのいきさつは、よくは、知らないがね。』
『はあ・・・・・じゃあ、助けてもらってるのか。』
『まあ、たぶん。しかし、気を抜いちゃあだめだ。喰われたら、おしまいだぜ。
《いやあ、喰っちゃった、ごき。》とか。』
『確かに。』
『いいかい。焼き鳥の仕入れは、このバカ高い木の、中間どころで行われる。我々は、そこから下には降りられない。下の連中は、そこから上には上がれない決まりさ。さっきの、捕獲カラスとか、滅多に見ないが、宇宙ごき警察のパトカーとか以外はね。そこに、取引所があるんだ。管理は、くまさんがやっている。』
『くまさん?』
『まあ、見た目がくまさんに似ているからだが、やってることは、ごきの犬さ。この星の、本来の最高知性生物だよ。落ちぶれたがね。地球人も、やがて、ああなるべ。』
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『火の島』上の下 やましん(テンパー) @yamashin-2
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