第7話「過去との決別」
「——あれ、準備して、今日はどっか行くの?」
「あぁ、いや……なんかね、資料だけ取りにいかなきゃ駄目らしいから……」
それから一週間、ようやく大学という名のふしぎな学校に慣れてきた頃。
藤崎が工学部電子科の教授に呼び出され、急遽、大学に行こうと支度をしていたところにぼさぼさの髪をした御坂が尋ねてきた。真っ白で下着の透けるキャミソールに下は太ももがしっかり見える短パン。防御力皆無すぎて正直、目の逃げ場がない。
「そっかぁ……ぁぁ~~、ねむーい」
「寝てればいいじゃん?」
普通に呟くと、御坂はぼーっと彼の目を見つめる。キャミソールからはみ出したおへそが目と同時に藤崎を見つめていたが綺麗な碧眼よりも小さな膨らみがあるおへそに視線が引き寄せられていく。
これが万有引力の法則か。その綺麗なおへそに一体全体どのくらいの質量が込められているのか、理系ながらに考えてしまう。
「——な、なに?」
「いや、別に、なんでもないけど……どこ見てるのかなぁって……?」
「べ、別に……どこも……」
胸に手を当てて、頬を桃色の染めあげた顔で上目遣いをしていた。
「ほ、ほんと……? なんか、さっきから視線が合ってなかったし?」
「そ、それは——別にっ」
ただ、ここでバレても面倒なため藤崎は慌てたように振り返って。
「とにかく——行ってくるわ」
「え——ああ、うん」
「じゃあ、行ってきます」
「い、行ってらっしゃい」
玄関で手を振る御坂を横目に、藤崎は家を出た。
視界の端で少し、寂しそうな顔をした彼女。それに気づけずに彼は足早に玄関を出たのだった。
「——ぁぁ、まっぶ……」
玄関を出ると一面窓が覆われた廊下に出た。階段まで向かい、三階から一階まで下りて自動ドアをくぐって外に出る。エレベーターがないのがこのマンションの不便なところだが、おかげで家賃が29000円と地方の中でも比較的に安いため甘んじて受け入れるしかない。
「土曜日に学校行くのってなんか、久しぶりだな……」
感慨に
だからこそ、思うのだ。
中高生の少年たち、もしかしたら小学生もいるのかもしれないが今を大切にしてくれと。
「俺も、おじさんなのかぁ……」
サッカー部時代は週休1日のブラックな部活だったので土日も活動があった。
こうやって土日に学校へ向かうと思い出すが、土日限定走り込みメニューは地獄だ。記憶の傍らに仕舞ってはいるが、いざ思い出すと身震いが止まらない―—くらいには恐怖体験だった。今でも、部員たちの悲鳴が聞こえてくるほどに。しかし、
「——いや、そんなわけないか」
正門に来ると、
ほんと、幼馴染がいるのに最低なことを考える。
そう、分かっていても。
記憶からひょっこり飛び出してくるあの美少女がどれほどまでの存在かは分かるとは思う。実際、藤崎も知ったのは最近だったが、考えると二次曲線の様に浮かび上がってくる思い出に、中々に、苦しんでいる。
「——まぁ、早く忘れないとな……あと一年で大人になるなら、なおさら」
苦笑しながら呟く藤崎。
ようやく、その一歩を歩み出した瞬間だった。
『ははっ、あれだよね、昨日のさ!』
『そうそう、なんでもっとこうしなかったのかな~~ってな』
『わかるぅ~~』
幸せそうな二人。
大学に行くとよく見る光景だが、高校の時よりも密な関係なカップルが多い。
しかし、この人たちは違った。
思えば、唐突に口走っていた。
「————さ、佐藤さん?」
藤崎が口にすると、ピタリと歩みを止める彼女。
微かに揺れる赤い瞳と、一瞬だけ吹き荒れた風に舞った綺麗な黒髪。誰もが憧れる美貌を兼ね備えている、あの人が——彼女が——そこにはいた。
「————ふ、藤崎くん?」
<あとがき>
こんばんは、歩直です!
☆200超えてからなかなか増えませんが、面白かったら☆評価くれてもいいんだよ? なんて、読者様に嫉妬というかおねだりしています……笑笑
というわけで今秋から始まるGWことゴールデンウィークに向けて、学校や仕事も頑張っていきましょう! 一応ゴールデンウィークは毎日投稿していくつもりです~~、まぁ、今とは変わりませんが?笑
最後に、応援、コメント、フォローと星レビューもお願いします! 何か一言でもレビュー欄に書いていただけるだけでも感激なのでこの作品を広めたいよ! って思った方は是非‼‼
さあ、旧作では断ち切れなかった思いを今作では断ち切れるのか? 見ものですね!
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