ep3 水難の相

トルコとジョージアの国境付近の街、ホパ。TMSはこの街を牛耳っている。ただそれだけの話なら、マットが出向くことは無かった。

問題は、TMSがルフトゥーンに目をつけた事だ。奴らはルフトゥーンの火薬臭さを嗅ぎつけて、アジアでの荒稼ぎの足がかりにしようとしているらしい。

そんなゲス共に考え直させるために、マットは名を捨て、ホパに向かった。


移動手段は、大型の貨物船への乗合だ。2ヶ月も掛からず、最も安い。10ドルで勝ち取った2段ベッドの上段で微睡んでいると、突如大きな重低音と警報が聞こえてきた。運河で座礁でも起こしたかと飛び起きるのとどちらが早いか、船員が

「海賊だ!お前らも戦え!!」と、ドアを開けて銃を渡してきた。

同室の男━━━ラリーとか言ったか━━━は、手早く銃を受け取り、

「マット、銃の操作は?」

と得意げに問いかけてくる。もちろん、と返し、マットも銃を受け取る。

AK-74に2列並んだゲリラマガジンが装着されている。粗悪な作りだが、とりあえず実射には耐えうるだろう。

「左舷から襲撃だ。着いてこい!」船員が捲したてる。マットとベルは、甲板に向かって走っていく。


2人が到着した時には、戦闘はもう始まっていた。コンテナが整然と並ぶ甲板は通り道が確保されており、金のかかった訓練場のようだ。

マットとベルは慣れたツーマンセルで通り道を進んでいく。どうやらベルにも心得があるようだ。

2つ目の角を曲がった時、貨物船の左舷に出た。見下ろすと、奴らのと思わしき小舟が4,5艘浮かんでいる。すると、ベルが「ロープだ。よく狙え」と声をかけてきた。見ると、海賊が3人、ロープを貨物船に掛けて登ってきている。マットは反射的にそれぞれに2発ずつ撃ち込んだ。

「お見事。これで隠密行動は終わりだな?」

と、ラリーは銃のセレクターをフルオートに切り替えた。

「ああ、やってやろうぜ」とマットが軽く笑うと、弾丸がすぐ横を掠めた。見ると船に乗り込んでいた海賊が、もう既に血を流して横たわっている。横を見ると、ベルが構えた銃を下ろしているところだった。

「……お見事。」

その後も、2人は甲板を制圧しながら回り、20分後には完全にクリアした。

「ありがとう、助かったよ……」と、船長は髭をもごもごさせて言った。その礼として、トルコで1番いい宿を差し出してきた。


その後、マットが甲板で水平線を眺めていると、横にラリーがやってきて、「……吸うか?」と、タバコを差し出してきた。

「ベトナムの最高級品だ。美味いぞ」

「……ああ、貰うよ。」マットはそう言うと、慣れないタバコをバレないように吸った。

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