第3話 ―〈七天魔軍〉―
◆
机に突っ伏して一人の生徒が寝ている。回りの生徒はもちろん、教師も彼の居眠りには気が付いてた。
最終校時である今、周りの生徒も虚ろな目をしながら授業を受けていた。
だが一人の生徒以外は起きていて、授業を受けていた。
教師はため息をつき、振り返る。そして一人の生徒を見て回りの生徒に声をかけるように呟いた。
「あいつ、朝のことがあったのにまた寝てるよ……。今度は真面目にチョーク当てよっかな――?」
先生の独り言のような呟きに、周りの生徒は目を開いた。そして期待をしながら教師と生徒を見た。
隣の女子生徒は隣の生徒を起こそうとしたが教師の伸ばした左手を見て、やめた。
教師は、まるでいたずらをする子供のような笑みを浮かべ、チョークを投げようとした、その時だった。
不意に、寝ている生徒が右手を伸ばし、教師に向けた。そしてその男子生徒は顔を上げ、鋭い目つきで窓の外を見つめる。周りの生徒は状況が理解できず、驚きの目で彼を見ていた。
少しの間を開け、彼は三本の指を立てた。
「3」
と彼が言い、指を折る。
「2」
そしてまた、指を折る。
ざわめきとともに、皆が彼に注目する。
そして最後。
「1」
最後の指を折ったとき、急に彼が立ち上がった。
「終了だー!」
とガッツポーズをしたまさにその瞬間、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
◆
校舎がある。
正門からは生徒たちが鞄を持って出ていく中、校庭の真ん中で話しながら歩いている二人の姿があった。
漆葉と花厳だ。
花厳はいつものように笑いながら尋ねた。
「ねえねえ漆葉君、さっきの何だったの?急に窓の外見たと思ったら叫んじゃって。うふっ、漆葉君っていつもわからないよー!」
漆葉は肩をすくめて言った。
「いや別になんでもないぜ?窓の外を見てたのは至って単純!」
「なにー?」
「窓に映った時計の針見てた」
とドヤ顔で言ったのを見て、花厳は声を出して笑った。
そんな二人を見ていた周りの生徒はを半目で見ながら話していた。
「漆葉のやつ、花厳さんとイチャつきやがって――死ねっ!」
「くそーリア充め……非リアに見せつけるように楽しそーに話しやがって……。リア充はんたーい!はんたーい!」
……なんか冷たい目線がこっちに来てる気がするが、気のせいかな?
そしてなにかを思い出したように漆葉は目を開き、花厳に小声で尋ねた。
「なあ、今日って魔法最高術者部隊の会議があったよな?あれってもう行っていいんだっけ?」
「うん、いつでもオッケーだった気がするよ!」
「じゃあ人目のないところに行って【クリュプタ】に行くか。」
と漆葉はいい、花厳の手を引っ張って足早に門を出て行った。
花厳は足をもたつかせながらも、彼の背を追いかけて行った。
◆
「あいつ……花厳さんを……!」
「女子を優しく扱わんとは……!」
と周りの生徒は半目で言っていた。
◆
空がある
晴れた空だ。しかしどこを見てもそれは星の瞬く夜空だった。
周りに見えるのはどこまでも続く草原。
そこは、神聖域【クリュプタ】と呼ばれる別世界だった。
◆
光とともに現れたのは、少年と少女だった。
周りには五人の少年少女、そして十数人の魔術奏者たちがいた。
中央に集まる七人からはとても重く、そして力強い空気が発せられている。
まるで人ではない何かを感じられる。
「よし、全員揃ったとみていいな?」
と言ったのは黒髪で長髪の女子だった。
……第六天魔、≪
あいつの魔法はとても不思議だ、と漆葉は思う。
ヤグモが使う魔法は魔法陣が展開すると同時に霧のように消え、不意を突いて星が瞬くように発動するからだ。
ほかのやつらも強い。
この〈七天魔軍〉になっているということはとてつもない実力があるということだ。場合によっては負ける可能性だってある。
第一天魔、≪
第二天魔、≪
第三天魔、≪
第四天魔、≪
そして第五天魔、≪満開の咲≫ムイ・ブロセム。
そこで凛とした声がした。
「皆にここ一か月で感知した〈敵〉がいたら、報告してもらいたい」
ヤグモは目を閉じ、何かを考えるような様子を見せながら尋ねた。
まず最初に聞こえたのは元気そうな男子の声だった。
「オレは感知しなかったっス。平和っス」
それに続けてハイテンションな明るい声が聞こえた。
「マリはぁ、第四層の野獣級を三体くらい感知して~、倒したよー!」
そしてどこかの貴族のような上品な声と、The・イケメンな声が聞こえた。
「私はレンさんと同じで感知しませんでした」
「僕は第三層でしたが数体の〈邪神〉と〈悪魔〉を感知しました。特に被害はありません」
周りが言い終わり、残すは花厳と漆葉だけとなった。
そして真剣な表情で辺りを見つめ、
「今日、第五層の巨獣級の〈邪神〉二体を感知した。一緒にムイもその場にいたため、手分けして討伐をした」
と言った。
五人がはっ、と息をのむのが聞こえた。
隣にいる花厳が頷く。
「はい。特に被害はありませんでしたが、最近は五層以上の〈敵〉が出現していなかったので、油断していました。」
と言う花厳を見てヤグモが腕を組み、頷いた。
「やはりそうか……。思っていた通りだったようだ」
「思っていた通り……というのはどういうことですかヤグモさん」
上品な声でカナリが尋ねる。皆が頷き、彼女のほうを見つめる。
そしてヤグモが少し間を開け答えた。
「実は――魔界【リヤルゴ】に仲間の魔術奏者を偵察をさせに行っていたのだ。」
そして、とヤグモが話を続けようとしたとき、身を乗り出してレンが尋ねた。
「⁉それは一体……」
とその時、花厳が冷たい笑顔で言ったのだ。
「レン君、人が話しているときに邪魔をするのは人としてどうかな?私、人が話しているときも邪魔をされるのは嫌いなの。うふふ」
あたりの空気が冷たくなってきているのを感じた漆葉は左手を伸ばし、花厳を止めた。
そしてヤグモは真剣な表情で話した。
「……いいだろうか。それでだ、【リヤルゴ】で――」
少し間を開け、ヤグモは言ったのだった。
「魔界【リヤルゴ】で、第七層級の〈邪神〉が確認された。」
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