第4話 ―《神創終焉》―
◆
「じゃあ、始めましょう」
「うん、そうだね――ボクが先に行くよ」
「お前が?――そうね……じゃあ、お前が行ってきてください」
「わかった!ずっと、この日を待ってたんだよ――」
「じゃあ、成功させてきてくださいね。」
「神の名のもとに」
◆
「第七層級の、〈邪神〉……だと?」
ヤグモ以外の全員がどよめきとともに彼女を見た。
皆はヤグモが言った言葉を理解できず、目を揺らしている。
「まてまてまて、話が急だ。ヤグモ」
漆葉は皆を代表するかのように、そして珍しく焦った顔をして言った。
「ン……急だと言われてもなあ、イリヤダスト。確認したことを言っただけなんだが?しかもちゃんと前置きはあったぞ?」
漆葉は少し間を開け、腕を組んだ。
「しかしだなあ。……そういや、お前はここ一か月で〈敵〉を感知したのか」
ヤグモは真剣な眼差しでこちらを見る。
「ああ。それも第五層級の〈悪魔〉が三体と第六層級の〈邪神〉を感知した。それも一度に、だ。いずれも仲間の魔術奏者とともに討伐したがな」
再度どよめく。第五層以上の〈敵〉が出ること自体が珍しいのに、一度に四体。よくそれを討伐できたものだ。改めて彼女が〈七天魔軍〉ということを感じる。
……まて、一度に四体もの〈敵〉の出現。そして第七層級の〈邪神〉の確認。
彼女の言いたいことが分かった。ヤグモが言っていること、それはつまり――
「わかったぞ――お前の言いたいことは、≪
≪
皆がざわめく。中には「≪
「――なるほど。≪
「ああ。可能性があるってことだ。だが高い確率で起こるだろう」
カナリは頷いて、薄い水色の魔法陣を背後に三つ展開した。
それぞれ魔法陣は漆葉、花厳そしてヤグモに向いている。
≪
「「⁉」」
花厳とヤグモは驚きの表情とともにカナリを睨む。
「カナリ!どういうことだ!我々を裏切るのか⁉」
花厳は真剣な顔をして対抗するように桜色の魔法陣を展開する。
「裏切るわけではないですよ――あなたたちならわかってくれると思ったんですが。ですよね?イリヤダストさん」
全員が漆葉のほうを向く。漆葉は笑った。
「ああ。……お前らもわかってやれよ。ムイ、魔法陣を閉じろ」
花厳は漆葉を見つめながら、手を震わせ魔法陣を閉じた。
「――⁉イリヤダスト!お前……なぜだ⁉」
「大丈夫だ。……おいカナリ、お前、やれるだけの技術はあるんだろうな?」
周りの皆は冷や汗をかいてこの状況を見ている。意見をしたくても、この状況で言葉を発することは難しかった。
「フ――私はこれでも〈七天魔軍〉の一人ですよ。できるに決まっているじゃないですか」
カナリは上品な笑顔でそう言い、右手を前に出す。
「では行きます。――貫きなさい、『
氷の刃は三人のほうへ真っ直ぐに放たれた。
だが、三人に当たることはなかった。
サクッ、と雪を切るような音がそれぞれの後ろから聞こえた。それと同時に悲鳴が聞こえた。
後ろを見ると、三人の魔術奏者の顔に氷の刃が刺さっていた。
「どういうことだカナリ!関係のない人を殺すとは……貴様狂ったか!」
「そんなに怒るなよヤグモ。こういうことだ」
漆葉は苦笑いしながら言う。
三人は顔から血を流し後ろに倒れたと思ったとき、死体が煙に変わり、消えた。
そしてその煙は中心に集まり、人の形を作った。だがその姿は人であり、人でなかった。見た目は小学校高学年くらいの子供だが、肌は褐色で背中からは蛾の翅が生えていた。
「うー、見つかっちゃったかあ。やあ、ボクはイラ。第七層の〈邪神〉だよ」
周りの全員が魔法陣を展開し、いつでも戦闘ができるように構えている。
「あわわ、今は戦うつもりはないんだ。負けちゃうからネ。挨拶だよ、挨拶」
蛾の翅を生やした子供は笑って言った。
そして漆葉は言う。
「何をしに来た?さっきの話を聞く限り、殺されに来たわけじゃなさそうだが」
「当たり前でしょ、こんなところに殺されに来るバカはいないよー。話し合いに参加したかっただけ。ただ、一つだけ言ってあげる。ふふーん、優しいでしょー」
「もったいぶるな。さっさと言え」
「うん、≪
そして子供は
「≪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます