人生のゴール。

山岡咲美

人生のゴール。

 人生のゴールとはいつだろうか?


 人によってはそれが結婚だったり人生が終わる死の瞬間であったりするのかも知れない。



「オレは違う!」



 俺にとってゴールとは現世での死を経験し、異世界へと転生、最悪のスタートからチート能力に目覚め、現世での知識で一山当てて、ハーレムパーティーを組み、魔王を倒したのち、パーティーメンバーの誰かもしくは魔法王国の姫君or異世界幼馴染みの誰かと結婚、もしくはその全員を嫁にする、パーフェクトトゥルーエンドを向かえる事、それこそがゴールなのだ。



◇◆◇◆



「勇者、なにやってのよ、アシュラマルのミルクの時間よ!」


「わかってる魔王! でもミルクは魔王の担当だろ!」


 俺は勇者イサム・フォンタ、現世での名前は本田勇武ほんだいさむ今は魔王の夫をしている。


「なにそれ? 女性差別発言? 訴えるわよ勇者!」


 この異世界で魔王が勇者を何処に訴えるんですか? と勇者は思ったが世界の半分を支配する魔王、ヱスタリヲン・フォルテシモ・バックギャモンはそう言いきった。



「なんでこんな事になったんだろう……」



 確かに俺はハーレムパーティーと旅をしていた、この異世界に幼馴染みもいて、魔法王国の姫君とも懇意こんいにしていたのに…………。



◇◆◇◆



「魔王ついにここまで来たぞ、この魔王城最深部、玉座の間までな」



「ちょっと待って、今メガネしまうから」



 …………。


 …………。


 …………。



「可愛い……」



 パーティーメンバーのグッドルッキングナイト、グッドルッキングウィッチ、グッドルッキングプリーストは、俺達の早めのご登場に何だか男同士が絡み合う怪しげな本と真紅のアンダーフレームのメガネをその怪しげな本のキャラクターのキャラクターグッズと思われる金髪と黒髪のイケメンのえがかれたメガネケースへとしまおうとしてふたが「パチン」となかなか言わず慌てており、なんとか玉座の座面下にある隠し金庫へと丁重に納めようとしたら指を挟んでのたうち、転げ回ってる始末。



 慌てすぎだ魔王。



「待たせたな勇者、わらわは魔王ヱスタリヲン・フォルテシモ・バックギャモン貴様らに死を与えるものだ!!」


 魔王は漆黒のエナメルスーツと軽やかに舞う黒のロングマントで肢体したいを包み真っ赤な長い髪をなびかせた、その髪からは二本、羊の様に巻いたつのがあった。



 魔王、今さら恐ろしげに振る舞っても遅い、ラスボス戦が台無しだ。



「何か魔王、メガネかけてエロい本とか見てなかったか?」

 イケメン男子風の女子、グッドルッキングナイト、アオイ・シュルツは嫌な顔をした。



 それに関しては見てみぬふりしてやれアオ

イ。


「あと部屋のところどころに飾ってあるあのぬいぐるみ男子はどういう事でしょうね?」

 氷の魔法が得意なクールビューティー、グッドルッキングウィッチ、チナ・ルッツはどうもUFOキャッチャーの景品であろうその人形を見て冷たい視線を魔王に向けた。



 いや完全魔王、勇者と同じ異世界転生人だろ!



「わたくしと致しましてはそのBL本やお部屋より勇者様の「可愛い……」と言うお言葉の方が気になります」

 しまった! 勇者はついメガネ萌えの本性が出てしまっていた、そして天然系毒舌女、グッドルッキングプリースト、ノルン・エヴァは魔王の読んでいた本をハッキリBL本と言ってしまっていた。



 勇者は混乱した、情報量が多すぎる、魔王は勇者と同じ異世界転生人でBL好きでメガネ女子でとっても可愛い、もはや魔王の衣装もコスプレにしか見えない。



「勇者、ボク達に言い訳は?!」

 グッドルッキングナイト・アオイの勇者への攻撃。


「いや違うんだ、メガネ、メガネがね……」

 メガネが「可愛い……」では言い訳にならない。


「勇者はアタシ達より魔王が「可愛い……」と?」

 グッドルッキングウィッチ・チナの勇者への攻撃。


「そんなことない! みんな可愛いよ!!」

 勇者よ、女の子に向かって「みんな可愛いよ」ではダメである、自分が唯一無二の一番じゃないとダメなのだ。


「さようなら勇者様、ワタクシ達お暇をいただきますわ」

 グッドルッキングプリースト・ノルンの勇者への攻撃。


「いやちょとまって!? どうしたの? ここまでみんな一緒にやって来たじゃないか、みんな? みんなーーーー!!」


「レニー姫と幼馴染みのナナコさんには勇者は魔王と幸せに暮らしていると伝えておきます」

 グッドルッキングウィッチ・チナが冷たく言い放ち3人は魔王城から、いや勇者のもとから去っていった。



「………………………………………………」


「勇者よ、しばらくここにいてもよいぞ」



 俺は涙が溢れた、そして魔王に惚れた、魔王はメガネの似合う、そしてメガネの似合う、さらにメガネの似合う可愛い(少しだけ妄想のはかどる)女子じゃないか!



◇◆◇◆



「勇者、なにやってのよ、阿修羅丸アシュラマルのミルクの時間よ!」


「わかってる魔王! でもミルクは魔王の担当だろ!」


「なにそれ? 女性差別発言! 訴えるわよ!」


 世界の半分を支配する魔王、ヱスタリヲン・フォルテシモ・バックギャモン、本名羽華鳥真名はかどりまなはそう言いきった。


 今彼女は何かが捗っていて忙しいらしいが知りたくもない。



 なんでこんな事になったのかは解らない、でも彼女は俺の可愛い奥さんである。



 人生のゴールがここに、いや勇者と魔王と新たな家族のスタートがここにあるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人生のゴール。 山岡咲美 @sakumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ