第36話【時の雨と氷の雨、それぞれの雨の優しさを知って・・・。】
・・・暖かな日差しが差し込む。
【
「ネネ・・・。皆は?葉姫様はどうした?」
ネネは、
子の刻。ホタルは、城の最上階の葉姫の部屋から、外の月を眺めていた。ドアを叩く音がし、返事をする。
【
「ホタル、大丈夫か?」
【ホタル】
「
声が小さくて、一瞬誰だか分からなかったが、どうやら
【ホタル】
「えぇ・・・。今のところ、問題ないわ。」
【
「そうか・・・。もし、何かあったら、すぐに言えよ。俺が必ず、お前を護る・・・。」
【ホタル】
「うん・・・。ありがとう・・・。
無事に任務は遂行したかに思えたのだか・・・。普段城の敬語にあたっていた兵士達が、長きに渡った戦からまだ帰って来ていないとのことで、城の守りは弱く急遽、私たち三人で姫様の警護にあたることになった。そして、私は姫様に瓜二つとのことで、影武者として姫様の部屋で城の兵士達が帰って来るまで、過ごすこととなった。
城の屋根ほ上では、
でも、私は知ってしまっている。皆の前では、ずっと優しい笑顔を向けているあの人が、誰もいないところで、毎日顔を洗おうと桶の水に映る自分の姿を見て、悲しそうな顔をしていることに・・・。
体が弱くて、すぐに体を壊してしまうあの人が、寒い夜の森に私を探しに来て、私の心を救ってくれた優しさに、あの人は見た目や普通の人とは違う能力に、きっとずっと一人で悩んでいた・・・。
あるとき、道で出会った山賊に化け物だと言われたあの人の一瞬見せた悲しそうな顔を今でも、忘れられない・・・。私達には分からない、苦しみ葛藤があの人の中にある・・・・・・。でも、それでもあの人は、笑う・・・。皆に、笑っていて欲しいから。皆に幸せでいて欲しいから。自分の中にある悲しみや苦しみは、絶対に見せない・・・・・・。
強くて、優しくて、そして、寂しいあの人の本当の姿を私は知ってしまっている・・・・・・。
・・・・・・。
夜空に浮かぶ満月を見て、誰にも聞こえない、ただ自分だけが聞こえるか聞こえないかの声で、漏れてしまったあの人の名前・・・。
熱は下がっただろうか・・・。
まだ日も上がらぬ明け方。ホタルは、何やらただならぬ気配を感じて目を覚ます。すると、自分の上に見知らぬ忍び装束を来た男が覆い被さるように自分のお腹の上にいるではないか。ホタルはとっさに布団から出ようとするが時すでに遅し、その男にものすごい勢いで首を掴まれる。空気が吸えず、声もだすことが出来ない。
【忍】
「可愛そうに。眠っていたら、毒で楽に殺してやったのにな。起きてしまったのなら、こまま首を絞めて殺してやろう。」
必死の抵抗虚しく、どんどん目の前が暗くなっていく。このまま死ぬのだろうか?そんなことを思った時だった。
【
「ホタル!」
【
「ホタル!大丈夫か!?」
ゲホッゲホッゲホッ・・・。
むせるホタルの背を
【忍】
「ホタル?ふん、なるほど、その女は、葉姫ではないのか・・・。」
【
「お前は!一年前、古戦場後で会った、、、。」
【
「あの時の小僧か。あの時はちゃんと名乗っていなかったな。俺は伊賀の
自分のことをこいつは知っているのか?こいつと会ったのは、あの古戦場で会った一度きり。あの時は、名前を教えてなどいなかった。
【
「お前、なぜそれを?」
【
「これでも、忍なんでね。情報収集には、たけている。」
【
「それよりも。弟はどうした・・・?ここ一年、お前の弟を探していた・・・。」
【
「・・・なんだと?」
【
「お前、自分の弟が人とは違うと思ったことはないな?銀色の髪に、青い目、それに普通の人にはない人間離れした、身体能力。それに、動物とも会話できる・・・。しかし、お前の弟は隠しているだけで、それ以上の能力を持っている・・・。お前の弟は、人間でありながらの化け物だ。お前達の手には追えないだろう。俺が引き取ってやる。弟を出せ。」
【
「何を言ってやがる!あいつは、化け物なんかじゃねぇー!!!俺の大切な、弟だ!ここに弟はいない!とっとと国に帰りやがれ!」
【
「大切な弟?・・・何言ってやがる?笑わせるな!お前のような男はよく見てきた。無能で、頭も悪く、努力をすればいつかそれが実を結ぶと信じている愚か者だ。」
なんなんだコイツは・・・。自分の心の奥底の深い部分にある黒い部分をつつかれた気持ちになる。
【
「やめろ・・・。」
【
「弟に何一つ勝てず、努力しても努力しても届かない。そんな弟をいつしかお前は、疎ましく思っていた・・・!」
【
「やめろ・・・。」
体が震える・・・。
【
「なぜ自分ではないのかと、なぜ自分ではいけないとかと・・・。お前は、ずっと弟を殺したくて仕方が無かった!!!!!!!!!!!!!!」
心の中から黒い何かが吹き出してきたようだ。
【
「やめろー!!!!!!!!!!!!!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます