第32話【ホタルと怪しい夜の森 後編】
【
「ホタル、少し歩こうか。」
【
「ホタル・・・。怖がらないで。」
【
「ここにいる人達はね。八百万の神々と、志半ばで亡くなった人達の霊だ・・・。戦、飢餓、病気、どうして亡くなったのか、それは人それぞれ違うみたいだけど、そういった人達のために、この八百万の神々はやって来て祭りを開いてるんだ。ちゃんと成仏できるようにね・・・。最後に楽しい思い出を作ってあげてるのかも知れない・・・。だが、神々と言っても、それぞれだ。良き神も入れば、悪しき神もいる。ホタル・・・。今日は良いけれど、神の森に安易に近づいてはいけないよ。」
・・・オンギャー・・・オンギャー・・・
どこからか、赤ちゃんの声が聞こえる。私は、足を止めて、後ろを振り返れば優しげな顔をし、白い衣を羽織った青年が赤ん坊をあやしている。その青年は、優しげな音色で縦笛を吹き、よく見れば、その青年の足元には何人もの赤ん坊がニコニコとその青年の足にしがみついていた。
【
「あの人は、
私は、さっき聞こえた笛はこの人のモノだったんだと少し、暖かい気持ちになった。その後も、私達は、どんどん祭りの中を進んで行く。そこへ、一羽のカラスがどこからともなく飛んでくる。カラスが
なぜだろうか・・・
自分の眼前なある
・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・
息が切れる・・・。
・・・
あれ?声が出ない?どうして・・・
・・・
私の叫びは、彼には届かない。そして、とうとう
・・・チャリン・・・チャリン・・・何かが私に近づいて来る。周りから音が消え、クサリの音だけが、私の頭にこだまする。
足元を見れば、黒いクサリが何やら蛇のように、うごめいている。
体が震えて動けない・・・。何かが私に近づいて来る。体は動かせないはずなのに、意思とは関係なしに自分の首はゆっくりと、右に向いていくと、自分の右肩に傷だらけの男の手が乗っていた。
・・・・・・や、やめて・・・・・・
私は、心の中で叫ぶ。すると、ゆっくりとその手は私の肩から離れる、
チャリン・・・チャリン・・・
クサリの音とは自分から少し、ずつ離れて行く。完全にクサリの音か無くなると、体は動くようになり、私はその場に倒れこむ。
はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。
息を切らしながら、周りの祭りの音かもどって来るのを感じた。
あれは、一体何だったのか・・・。
私は、息を整える。早く
しかし、かけて行こうとして、足がもつれてつまずきそうになる。
私は、右腕に何か違和感を感じ、はっとして自分の腕を見る。
見れば、黒い着物に包まれた傷だらけの男の手が、私の腕をつかんでいた。
イヤーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
ホタル・・・。ホタル・・・。
誰かに呼ばれて、私は目を冷ます。
【ホタル】
「
私は飛び起きる。辺りはすっかり明るくなり、私は昨日もたれていた木で寝てしまっていたらしい。そして、見れば、そこは普段よく修行で使う
【ホタル】
「
【
「八百万の神々?ホタル・・・何を言っているんだい?」
焦る私とは裏腹に、
【
「ホタル・・・。どうかしたのかい?」
【ホタル】
「な、なんでもないわ・・・。」
悪い夢を見ていたんだ。そう思うことにした。私は立ち上がると、
だから、私は気がつかなかった。
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