第15話【傷だらけの狼】

泡沫うたかた

「戦う理由が無くなった、俺は、甲賀の里をこっそり抜けて、何日も森をさ迷った。すると敵国の忍び軍団と鉢合わせし、戦っているうちに崖から川へ落ち、今に至ります。」


傷だらけの狼が下を向く。何か、表面に見えるだけじゃない傷を見るようだった。



【ホタル】

夕暮ゆうぐれさん・・・。」


時雨しぐれ

「戦・・・か・・・。」


泡沫うたかた

「俺は、弟を殺した仲間をを守れなかった。もう戦う理由も、帰る場所も、野望もない。全ては、戦で儚い泡のように消えた。助けてくれたあんた達には悪いが、あのまま死んでも別にもう思い残すことはない。」


五月雨さみだれ

「帰る場所がないなら、いつまでもこの村にいると良い。」


泡沫うたかた

「俺は、甲賀の忍び。今まで沢山、人を殺してきた大量殺人者だ。この平和な村に俺みたいなのやからを置くのは良くない。明日にでも、この村を出ていこう。」


卯月うづき

「良いのよ。あなたも弟さんこと、本当に辛かったでしょう?敵との命の奪い合い。生きるか死ぬかの生活の中で弟や、仲間を守ってきた。あなたは十分に頑張った。弟さんも仲間も幸せだったと思う。だから、あなたもこの村で普通の生活をして幸せになっても良いのよ!今度は、あなたが自分のために生きるの。」


泡沫うたかた

「俺は今まで、忍として生きて来たんだ。今さら、普通の生活など出来ない。」


時雨しぐれ

「では、この東の里の忍びになってください!」


泡沫うたかた

「えっ?」


氷雨ひさめ

「そうだ!この村には気術を教えてくれる人がいないんた。だから、オレ達に気術をも教えてくれよ。」


五月雨さみだれ

「東十朗。良い、機会なのかも知れないな。もう、この里には、気術が必要だ。」


東十朗とうじゅうろう

「あぁ・・・。上住かみすみさんの言っていたが、この里も、もういつ戦の火が来るかも分からぬ。泡沫よ。お主の話を聞いて、それを強く思った。戦えるように、しておかなくては。泡沫よ。氷雨、時雨、一平、ネネ、ホタル、こいつらは未来のこの村を担っていく存在。どうか、こいつらに稽古をつけてはもらえんか?」


泡沫うたかた

「俺は、助けられた身。断る理由などありません。助けられたご恩、必ずお返し致します。」


【ホタル】

「ってことは、泡沫さんもこの村の一員になるってこと、ですよね?」


五月雨さみだれ

「そうだ。新しい家族だ。」

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