第14話【失ったモノ、残ったモノ】

俺は、その小屋を焼き払った中からは、女子供の泣き叫ぶ声が暫く響き渡っていた。熱い、熱い、助けてと叫ぶ子供の声。子供だけは発狂し泣く母親の声。だが、容赦なく火は燃え上がる。そして、ついに、俺の刀から放たれた火は全てを燃やし尽くし、最期にはその場を真っ黒な砂地へと変えた・・・。


千年ちとせ

「これじゃあ・・・。死体は出ませんね。あんだけ、人に、説教しておいて、十分苦しませてるじゃないですか。」


泡沫うたかた

「俺たちは、結局・・・。どんなに国を勝利に導いた英雄だと言われたところで・・・人殺しであることには、変わらない・・・。」


 行くぞ。と、泡沫うたかたは静かに千年ちとせに言う。しかし・・・。


泡沫うたかた

「何してやがる?」


 千年ちとせは、燃えて真っ黒の砂地になった小屋の跡地にコスモスの束を置いて、手を合わせていた。


千年ちとせ

泡沫うたかたさん。俺達は、人殺しでも、ただやみくもに人を、殺しているわけじゃねぇ。国にいる人達を、仲間を、守るためだ。」


 千年ちとせは、そう言うと立ち上がり自分の前を通りすぎるとそのまま隊を引きいて立ち去ろうとする。


泡沫うたかた

「コスモス・・・か。お前に、そんな慈悲の心があるとはな。」


 仲間を守るため。だが、俺は、俺達は一体何人の仲間を、この戦で失ったんだ・・・。


 

 そこへ、千年ちとせの虎の隊員である高月広屋こうづきこうやが、慌てた様子で、千年ちとせの元へとかけて来る。


高月広野こうづきこうや

「た、大変です!坂多さかた隊長!夕暮ゆうぐれ大変!」


千年ちとせ

「なんだよ。もう戦は終わっただろう?」


【高月広野】

「そ・・・。それが、只今、一角さん率いるカラスからの連絡で、西にいた摂津の残党殲滅せんめつに成功。しかし、その途中で・・・。」


 その場に、ただならぬ空気が落ちた。嫌な予感がする。背筋にひんやり冷たく痺れる。


【高月広野】

夕暮幻像ゆうぐれげんぞうが、敵の忍の術に破れ、殉死じゅんし致しました。」


 その場に、長い沈黙が落ちた。


 









 俺は、たった一人の血の繋がった弟を失った。


 何のために戦ってきたのか?


 結局、戦に勝って得た物は何だったのか?


 多くの仲間も弟も失って、結局何が残ったのか?


 俺は戦の終結と共に、国を去った。

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