第13話【殺すか、生かすか】

二人の会話を聞いて、周りにいた部下達は、ぞっとする。まだ、十代の少年達が、敵とはいて、女、子供を殺す話をしている。13才の少年に限っては、やっと声変わりを終えばかり。しかし、その顔はまだまだ幼く、オナゴに間違えられてもおかしくない丸く大きいな瞳や、明るい栗毛にサラッとした髪を品の良い感じで、丸く緩やかな円を描くように切られている。左頬に一文字傷があること以外は、その姿はまさしく、容姿端麗。








 その少年の隣にいる師もどんなに、人を殺してきた殺人鬼だったとしても、まだまだ呆気なさが残る18才の少年。しかし、どんなに若くても、二人は、名高い甲賀の忍達を束ねる七人集の一人。


 二人の間で交わされる会話の内容は、今、戦場にある他の七人集のと変わらない。いつどこで、誰を殺るのか。それだけだった・・・。暫くすると、泡沫うたかた達の前に、思わぬ人がやって来た。そこ男は、何人もの部下を引き下げ、白い馬に乗り、戦の勝利を確信しているのか、不適な笑みを浮かべていた。


泡沫うたかた

「直接、見物に来たのか・・・。」


千年ちとせ

「やれやれ、女子供が殺されるを、見物に来るなんて、本当に、いい趣味してますね。あの人。」


 甲賀新左衛門こうがしんざえもんは、泡沫うたかたの前に来ると、馬を止めた。



甲賀新左衛門こうがしんざえもん(こうがしんざえもん)】

泡沫うたかたよ。敵国の人間に、情けはいらない。全員、始末しろ。」


 分かってはいたことだった。


泡沫うたかた

「し、しかし・・・。」


甲賀新左衛門こうがしんざえもん

「お前、ワシに逆らうのか?良いか、泡沫うたかたよ。戦とは、国と国との戦いなのだ。両国の人間がその命を持って国のため戦うのだ。時には、己の部下を、友を、仲間を、失うこともあるだろう。戦とは多くの大切な物を失うものだ。しかし、それでも多くのものを失ったとしても、その戦に勝利しなればなんのためにその大切な物を失ったのだ?死んでいった者達の命の代価は、戦に勝つことで報われる。だが、負ければ、死んでいった仲間の命の価値は無かったことになってしまう。戦を勝利に導け。泡沫うたかたよ。どんな手を使ってでも、、、。明日の明朝みうちょうに処刑せよ。できなければ・・・。分かっているな?」


泡沫うたかた

「・・・御意ぎょい・・・。」


 次の日の明け方近く、泡沫うたかたは鞘から刀を抜き、刀に映る時分の目を見る。そこに映る目は、どこまでも冷たく、残酷で、しかし何かに絶望している目だった。


千年ちとせ

「・・・殺れなければ、切腹せっぷく。上の命令は絶対。でも、なんの罪もない女子供を殺すことは、できない。」


 千才が、やって来る。いつもの嫌み交じりの言葉に、付き合う気にもなれなかった。


千年ちとせ

「・・・俺が、りましょうか?」 


 泡沫うたかたは、ゆっくりと目を閉じる。


泡沫うたかた

「・・・。いや、俺が殺る。二度も同じことを言わせるな。お前は、墓穴でも掘っておけ。」


千年ちとせ

「ん?アンタの?」


泡沫うたかた

「ちげーよ。」


 投げやりに答え、その場を去ろうとした。一人になりたかった。しかし、千才がそれを引き止める。


千年ちとせ

「大丈夫ですよ。泡沫うたかたさん。もし、殺れなかったら、あんたの切腹の時の介錯は、俺がつとめます。」


 千年ちとせは、真剣な声音で言う。



泡沫うたかた

「介錯・・・。そう言えば、お前、名門の武家の生まれだったな。したことあるのか?」


千年ちとせ

「流石にありませんよ。俺が、アンタに連れられて、甲賀に来たのは七才の時ですよ?流石に、物心ついて、数年のガキに介錯なんて、周りがさせませんよ。だから、俺に介錯されたら、結構、痛いかもしれないですぜ?」



泡沫うたかた

「なら・・・。お前に介錯かいしゃくされるわけにはいかないな。」


 泡沫うたかたは、立ち上がり。鞘に忍刀を納め、小屋に向かって歩き出す。千才は、その後ろ姿を見送った後で、部下達に言う。


千年ちとせ

「お前ら!墓穴、掘るぞ!」


 千年ちとせの指示で、周りの部下が穴を掘るべく動き出す。小屋の図を開けば、何十人といる敵国の戦士の褄と子供。


泡沫うたかた

「言い残すことは、あるか?」


 すると、一人の女が言う。











 この、|戦火の狼ひとごろしーーーー!!!!!


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