第12話【小屋の中にいる者】
その後、甲賀の圧倒的優勢は変わらず、敵国の本拠地を突き止めた。甲賀の国をおさめる
【敵の侍】
「に、逃げろ!!!!!
森の中で逃げ惑っていた侍の一人が木の根に足をとられて、その場に派手に倒れこむ。そして、その侍にゆっくりと歩みよる忍装束の上に虎の文字が彫られた羽織を着た少年。まだ13才のその少年は、背に一本の刀と、左手にもう一本、刀を持って面倒くさそうに歩いて来る。
【千年(ちとせ)】
「やれやれ・・・。侍なら、ここを死に場所にするくらいの覚悟で、戦に参加しなよ。・・・おめおめと、背中見せて逃げやがって。まぁ、どうせお前はここで俺が斬らなかったとしても、士道不覚悟(しどうふかくご)で切腹になるのは目に見えてるし・・・だったら、ここで俺が名誉の死を与えてやろうじゃねぇーか。」
何の感情ももたないような、飄々(ひょうひょう)とした口調でそう言い放つと、その少年はこちらへ歩いて来る・・・。
【敵国の侍】
「ら、雷鳴(らいめい)の虎(とら)、、、!!!!や、やめろ、、、。やめてくれー!!!!」
足をバタバタとばたつかせながら、なんとか逃げ出そうとする侍に、少年は言う。
【千年(ちとせ)】
「・・・おめでとう。名誉の
少年は、左手に握った刀に気を込める。すると、刀から雷の音がバチバチと鳴り響く。
【敵国の侍】
「う、、、うわ"ぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
その場に、雷が落ちる音とともに、男の首がポトッと落ちた。
【千年(ちとせ)】
「泡沫(うたかた)さーん。こっちは、終わりましたぜ。もう時期、敵の本拠地ですね。」
たった今、人の首を落とした少年は何事なかったかのようなケロッとした口調で言った。
【泡沫(うたかた)】
「あぁ。そうだな。あそこを落とせば、ようやくこの戦が終わる。」
【千年(ちとせ)】
「あーぁ。面倒くさいな。本拠地なんて、一体何人斬ればいいんです?本拠地っていうくらいだから、それなりに数いますよね?俺の剣は、一撃必殺型なんで、一度
まるで、感情のこもっていないような口調でその、少年は目の前にいる男に言った。
【泡沫(うたかた)】
「何、言ってやがる?
泡沫はため息交じりに答えた。
【千年(ちとせ)】
「あ、バレました?」
【泡沫(うたかた)】
「お前、
【千年(ちとせ)】
「はい。
少年は、さらっと答えた。
【泡沫(うたかた)】
「あー、もういい。お前の発言には、全部
【千年(ちとせ)】
「すごいじゃないですか!泡沫(うたかた)さん。人は、己の
千年は、明るい口調でニコやかに言った。
【泡沫(うたかた)】
「良かったですね!じゃねぇーよ。お前、しばきたおすぞ!」
いつもの二人の会話はこんな感じだ。しかし、急に泡沫(うたかた)は、真剣な面持ちになる。目の前に敵の本陣が現れたのだ。泡沫(うたかた)は、身を
【泡沫(うたかた)】
「千年(ちとせ)、俺と、お前の部下をここに集めろ。そして、本陣が見つかったと
【千年(ちとせ)】
「甲賀の侍どもはどうします?あいつらも手柄たてたいんじゃねぇーですかね?・・・呼びますか?」
千年(ちとせ)は、真剣な声音で尋ねると、泡沫(うたかた)は言った。
【泡沫(うたかた)】
「あいつらは、呼ばなくて良い。今まで、関わりのなかったやつらに背中を預けらるか。・・・それよりも、早く蹴りをつけるぞ。先手必勝(せんてひっしょ)ってやつだ。」
千年(ちとせ)は、声に出さすに頷くと、その場から一瞬にして姿を消えた。次に千年(ちとせ)か現れたのは、日が暮れた夜、自分の部隊と、泡沫(うたかた)の部隊を引き連れて戻ってきた。
【泡沫(うたかた)】
「皆、ごくろう。これで、この戦も終わりだ。敵の本陣に攻めこむぞ。」
【千年(ちとせ)】
「泡沫(うたかた)さん、上からの許可が下りました。
【
「夕暮(ゆうぐれ)隊長、坂多(さかた)隊長、
【泡沫(うたかた)】
「よし、行くぞー!」
泡沫(うたかた)の合図で、まず、狼の隊員が本陣の壁を焼きにかかる。それぞれが、クナイ、手裏剣に、火の気を宿し、投げつける。あっという間に木製の
泡沫(うたかた)は自分の部下達を後ろに下がらせ、勢いよく、小屋をこじ開けた。すると、その小屋に中に広がる光景は、泡沫(うたかた)の予想を越えたものであった。
【泡沫(うたかた)】
「い、一体、どういうことだ、、、。これは、、。」
中にいた者は、侍でも、足軽でも、忍びでも、なく、戦場で命をかけて戦っている敵国の有象無象の戦士達のまだ小さいガキ等と、その妻だった。俺は、どうするか迷った。そこへ、千年(ちとせ)がやって来た。
【千年(ちとせ)】
「なーに、やってるんですか?泡沫(うたかた)さん。敵は見つかりましたか?何、突っ立てるんですか?」
興味なさそうに、歩いて来た千年(ちとせ)も、小屋の中にいた人々を見て、息を飲んだのが分かった。
【千年(ちとせ)】
「ガキと女?こんな所に、なんで、、、。」
小屋の中にいる子供は泣き叫び、母親は震える体で泣き叫ぶ子供を抱き、その場でうずくまる。死を覚悟した様子だった。甲賀の忍達は、黙りこんでしまった。その後、俺は
【千年(ちとせ)】
「俺が
千年(ちとせ)が、ふらっと来て、
【泡沫(うたかた)】
「、、、やめておけ。お前、さっき、ガキと女を見たとき、刀を持った手が震えてたぜ。いつものお前の剣なら、一瞬にして苦しまずにあの世に送ってやれると思うが、今のお前じゃな。苦しませて、結局とどめをさせない、なんてことになりかねない。俺が殺る。お前は、大人しくあの人達の墓穴でも掘っておけ。」
【千年(ちとせ)】
「こんな時だけ、師匠ずらですか?俺はあんたが思ってるよりも、子供じゃねぇーですよ?」
【泡沫(うたかた)】
「はいはい。言いたきゃ言っておけ。だが、あの人達を殺すのは、俺だ。」
【千年(ちとせ)】
「・・・・・・。分かりました。じゃあ、俺は大人しく墓穴でも掘ってますかね。」
【泡沫(うたかた)】
「あぁ。そうしろ。」
少年は、そう言うとその場から立ち去ろうする。しかし、少し行った所で振り返り、男に聞いた。
【千年(ちとせ)】
「・・・そういえば、ここ暫く、幻像(げんぞう)の姿が見えませんが、どうしたんですか?」
【泡沫(うたかた)】
「あぁ・・・。あいつには、西の方にまだ、忍の残党が残ってるとの連絡が、一角(いっかく)さんから来たんでな。そっちの方の何人かの隊員とそっち加勢に行かせた。」
【千年(ちとせ)】
「・・・そうですか・・・。まぁ、あいつなら大丈夫でしょう。」
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