【第三章】雨の中に消えた双子の命
第8話【夜雨と雨花】
【
「おおお!スゲー!!でっけー!!!」
【
「
そう言うと、
【
「あ、兄上。恥ずかしいから、あんまりはしゃがないでくれよ。ワタシ達は、仮にも泊めてもらってる身なんだから、、、。」
【
「そうだぞ。人様ん家の、風呂であんまり、はしゃぐもんじゃないぜ。お前名前ほんとに
【
「テメェー!
【
「ふん!ここはオイラん家だぜ?なんで、おいらが風呂に入ってたってなんのおかしいこともないだろう?」
【
「だからってな、いきなり出てきたら、ビックリするだろうが!」
【
「まぁまぁ、怒んなよ!そんなに、怖い顔してたら、女にモテねぇーぜ?ほいっ!」
【
「うわっ!」
【
「けけけけけっ!ざまーみやがれっ!」
【
「テ、テメェーよくもやりやがったな!」
【
「おっ!またキレたな!そんなんじゃ、ホタルに愛想つかされるぜっ。それじゃなくても、昨夜寝言で、ホタルーホタルーって言ってたくせに。」
【
「なっ!う、嘘つけ!そんなこと、い、言うわけねぇーだろうが!」
【
「おー。冗談だぜ。でもそんだけ、焦ってるってことは、、、。」
【
「テメェー!マジで怒った!もう許さねぇ!!!人をおちょくりやがって、コノヤロロウ!!!!」
【
「まったく、、、。頼むから、静かに入ってくれ。」
それから程なくして、涼しい廊下に倒れる人影が二人。
【ネネ】
「まったく、お風呂の中ではしゃぐからよー!」
ネネは、のぼせて真っ赤なゆでダコのようになった二人にウチワを
【
「あちぃ~」
【
「は、はしゃぎすぎた」
そんな中、ホタルは庭で
【
「ホタル。やらせてしまって、すまない。手伝うよ!」
【ホタル】
「ありがとう。
【
「ホタル、君は縁側で休んでるといいよ。ワタシは、兄上の様子を見てくる。」
【ホタル】
「分かったわ。ありがとう、
【
「それと、、、」
【ホタル】
「えっ?」
【
「昨日、山でミカンの木を見つけたから、何個か取つて来たんだ。ホタルに1つあげる。洗濯物、お疲れ様!」
【ホタル】
「あ、ありがとう。」
一人、縁側に座るホタルの元へ、小波がやって来てホタルの膝に止まる。そして、もう一人ホタルの元へ来る女性がいた。その女性は、前に生まれたばかりの赤ん坊を抱えていた。
【
「、、、優しい子ね、あの子は本当に、、、。」
その女性は、ホタルに話しかける。
【ホタル】
「
【
「そう。
次平は、とても
【ホタル】
「なんだか似ているなぁー。ふふっ」
ただ、ホタルには一つ気になるところがあった、
【ホタル】
「
【
「あぁ、、、。」
【
「あれは、
【
「母さん、俺達、いつになったら他の里に行けるの?」
【
「お母
さん、私も、他の里に遊びに行ってみたい!」
【
「そうねぇ、、、。もう少し暖かい季節になって、二人の風邪が治ったら、ネネも誘って、皆で行きましょうか。」
【
「暖かい季節って、今は真冬だから、ずっとずっと先の話だなぁ、、、。」
夜障子の隙間から外を見やる。外は、どこまでも続く雪の世界。全ての音は、雪によって閉じ込められてしまうのか、とても静かだ。体が熱い。グラグラと視界が揺らぐ。
【
「私達、いつまで生きていられるのかな、、、。毎日、毎日、体が重くて、息が苦しくて、頭がガンガンして、、、。朝目を覚ますと、なんだかね、とっても、悲しい気持ちになるの。毎日、毎日、見えるのは天井の板だけ、、、。私だって、皆みたいに外で遊びたい。私だって、お祭りに行って、お面を被ったり、ワタアメ買って、皆で囲んで閃光花火をしたい。他の里に行って、見たことがない物沢山みたい。でもね、私達には絶対にそれができないの。ううう、、、。えぇーん、、、、。」
【
「
【
「だって、、、。
【
「二人とも、、、。」
【
「二人とも、、、本当に、、」
、、、、、、できるよ!!!!!、、、、、、、
三人は、その襖を開けた人物を見た。その人物は、父親そっくりの人懐っこそうな笑顔をした五才の少年だった。その男の子は、三人の顔を見るとニカっと笑った。よく見ると、その少年は体中びしょ濡れで、泥だらけ、小さな手は真っ赤に霜焼けしていた。
【
「できるよ!!!にぃーちゃんと、ねぇーちゃんにだって!大丈夫!オイラがにぃーちゃんと、ねぇーちゃんの病気、治してあげる!ほらぁ見てー!」
【
「今日は、オイラがにぃーちゃんと、ねぇーちゃんが元気になる、最高の晩飯を作ってあげるよ!まずは、飲み物から!風邪に効く飲み物と言えばショウガ湯だ!えーと、、、。お湯を沸かさなくちゃな、、、。あ、あれ?
【
「うん?」
【
「あ!見て!廊下に落ちているわ、もう!
一瞬のあれ?という間ができる。そして、
【
「うぅー!
【
「もう!ひどーい!!!!」
三人は、ワッと笑い、張りつめていた。空気が一気に暖かくなる。
【
「まったく、
【
「おぅ!じゃあ、作るか!母ちゃん!」
がんばって!
【
「
【
「こっちだ!
二人が清流の村の出口でニコニコと笑って弟を呼ぶ兄と姉。二人の声に誘われて、急ぎ足で近くにいこうとする弟。弟は、桜舞う中、楽しげに、幸せそうに笑う兄と姉の姿を、見て嬉しくて涙が出た。
【
「待ってくれよ!にぃちゃん、ねぇちゃん!」
【
「えーーーーん!えーーーーーん!」
【
「いっ、
【
「お、おう!もちろんだよ!お前を置いて行くかよ。」
二人は
【
「な!なんでなんだ!?どうしてなんだ!う、
【
「ま!待って!私!あめ玉持ってる!ほーら
、、、違うんだ。違うんだよ。にぃーちゃん、ねぇーちゃん。オイラはただ、ただただ、嬉しいんだ。、、、照れ臭くて言えない言葉を心の中で言ってみる。
あめ玉をもってあーん、と言ってくる
そんな様子を、
<i518270|34716>
https://34716.mitemin.net/i518270/
【ネネ】
「
そこへネネがやって来た。
【
「おー!ネネ!来たか!待ってたぜ!」
【
「はいはい。そしたら、全員揃ったわね。」
【
「よし、はぐれずについて来いよ。」
それから、六人は、里へと向かった。里について暫くは、お寺にお参りに行き、近くで行われている屋台に行っては、
【
「あなた!あなた!子供達がいないわ!」
【
「なんだって!!!」
二人はすぐにいなくなった子供達を探す。辺りを見渡しても、どこも人ばかりで、中々見つからない。
【
「
【
「おーーーーーい!!!!どこに行ったんだ!!!!!」
見つからない。一体、どこに行ってしまったんだろう、、、。雲一つな買った夜空はいつの間にか曇り果て雨が降り始める。
【
「大変!!!雨だわ!!!あの子達、風邪引いちゃうわ!皆どこなの!!!!」
すると、人混みで気づかなかったが、雨で人が減ったことにより、
【
「
【
「
【
「、、、、、、。なんで、にぃちゃんと、ねぇちゃん、なんだろう、、、。なんで、オイラじゃなかったんだろう。」
【
「
ハッとした。薄暗い小道の行き止まり重なるようにして、死んでいる双子の兄妹。雨に打たれてその小さな体から真っ赤な川が流れ出す。
【
「よさめぇーーーーー!!!!!うくわぁー!!!!!!きゃあーーーーー!!!!!」
大雨の中、一人叫ぶ母親の声がいつまでもその薄暗い小道に響いいていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます