【第二章】狼ノ神の守りし森
第6話【狼の神が守りし森】
ここは、
【ホタル】
「ふふっ、沢山物が売れて、良い取引が出来て良かった!お米がこんなに沢山!これで、なんとか今年の冬を越せそうね!」
ホタルは嬉しそうに言う。
【
「そうだね!遠出をして、大きな里まで行って良かった。ワタシたちの村は、土壌が潤っていて、野菜を作るのにも、近くに海があるから、海の物にも
【
「でも、魚、貝、野菜が予想以上に沢山、お米に変わったなぁ、、、。村で待っている皆もきっと喜んでくれるだろうな。」
【カラス】
「カァー!カァー!」
【
「小波、静かに!兄上、ホタル、そろそろ、狼が出ると言われる場所だ。注意して行かないと。」
【
「
東の里で、馬借をしている二十四才の
【
「分かった、見てみよう。兄上、ワタシは列の後ろを見張るから、兄上は前を。」
【
「おう。それじゃあ、ホタル。お前はオレ達の側から、離れるなよ。」
【ホタル】
「、、、はい。」
そして、暫く歩くと、道が少しぬかるんだ道に出る。
【
「皆、止まれ!」
【
「ここの道は、ぬかるんでいるな。足を滑らせて、谷底へ落ちたら、大変だ。迂回するぞ!」
と、
【
「
【
「
六作は村で野菜を栽培してい二十七才の男で、妻が二年前に病死してから、男で一つ、家族一人息子の
【
「あぁ、、、。そうだなぁ。兄上。どうやら、ぬかるんで、いるのは、ここだけみたいだ。ほら、道の奥の方は、土が乾いているよ。」
【
「いや。こっちの地帯は、さっきまでの雨のせいでぬかるんでいる可能性が高い。この場合は、迂回するのが得策だ。」
【
「しかし、兄上。迂回していては、時間がかかり過ぎる。夜までに山を下りないと、狼が出る。」
【
「若様方、ここいらの山は、狼の神が納める山。そこいらの狼と同じように考えてはなりませぬ。ここの狼は、普通の狼とは比べ物にならないくらいに大きく、人間に対しては残酷なまでに牙を剥きます。
【
「なんでぃ、
【
「さてさて、どうかな。東の里には、昔から東剣術という伝統の術があり、深い森の中で暮らすワシ等をこの剣術は、狼や熊などから守ってくれた。しかし、この東の剣術には"
【
「気術?」
【
「そう。侍が使う剣術も忍びが使う忍術も、全て術と呼ばれるものには"気術"が根本にある。"気術"とは、この世に存在する気を使った術のことであり、忍びが使う気術を忍術と呼び、侍がこの気術を使うとそれを剣術と呼ぶのだ。気とは、動物や、物や、自然の中にも存在しており、"気術"とはそれら全てに流れる気を使う術のことよ。気術を使うことができれば、人知を越えた能力を扱うことができ、中には、火や水を扱うことができる|
【
「父上達が!?でも、そんなこと初めて聞いたぜ。」
【
「五月雨様と、東十朗様は、若かりし頃に甲賀の忍びと交流をしていたことがありましてな。その時の甲賀の忍びに気術を教えてもらわれておった。しかし、忍びが使う気術は、忍術。人を殺すための殺人術に他ならない。人を簡単に殺めることができる気術をお二人は、自分達以外の村人に教えるか大変迷われた。東の里は、太古の昔より戦や争いとは無縁の暮らしをしてきたのでな。結末を言えば、お二人は気術を自分達以外の村人には教えなかった。噂では、お二人によって選ばれた何人かは、秘密日にこっそりと気術を教わったのではないかという話もあったのだが、息子である若様方が、知らないのだ。それはなかろう。お二人は、殺人術である気術を誰にも教えないという結論を出された。その背景には、気術を使わなくとも、今までの歴史から、今の東の暮らしを守っていける確信があったののだろう。しかし今、世の中は混沌としておる。何百年と他の村や里に場所を知られずに生活できていたワシ達の里もいつ、里の場所が見つかりどこぞの城に攻めこまれるか分かるまい。まぁ、話を戻しますと、そんな混沌した時代に合わせて神もまた不浄のものへと変わってきてしまった。豊かな自然と共に生きてきた神々は、人間と交わることなどなかった。しかし、時と共に、人間は山や森を荒してきた。人間達が行った戦で流された多くの人間の血や、戦いで破れた人間達の憎しみが豊かで美しいはずの山や森を汚し、そこに住まう本来清らかであるはずの神をも不浄のものへと変えつつある。すると、人間に対して何も手を出すことの無かった神が人間を襲うようになってしまった。ここの山を守る狼の神もまた、その一つ。気術も使えない人間が、戦って勝てるのか、今のワタシには分かりませぬ。」
その場に少しの間沈黙が落ちる。
【
「ひ、
【
「、、、
【
「兄上、、、。」
【
「ぬかるんだ場所で馬が足をとられ谷に落ちたりすれば、せっかく買った米が台無しだ。大丈夫。たとえ狼が出たとしても、オレやお前がいるんだ。なんとかなるさ。」
【
「し、しかし、、、」
【
「
そう言うと、
すると、遠くの方で、狼の遠吠えがした。
【ホタル】
「お、狼の鳴き声だわ!」
【
「皆、松明に火を灯すんだ!いくら神でも、狼は狼だ。狼は、火を怖がる!」
【
「よし、オレは、先頭を。
【
「分かった。」
【
「ホタル、お前は、オレの近くにいるんだ。」
【ホタル】
「は、はい。、、、。分かったわ。」
【小波】
「カァー!!!カァー!!!カァー!!!」
小波がけたたましい鳴き声で鳴いた。すると、列の中央に向かって木々の間から、何びきもの黒くて大きい影が襲いかかる。馬が驚いて暴れ、村人達は大混乱に陥った。
【
「
【
「皆!!!刀を抜け!!!!狼を自分の間合いに近づけるな、ちょっとでも隙を見せるな!あっという間に三枚におろされるぞ。」
そんな中、
【???】
「きゃー!」
誰かの声が聞こえる。
列の先頭を見ると、この群れを率いる長であろう一際大きい狼が、ホタルに飛びかかろうとしている。
【
「ホタルーー!!」
【ホタル】
「
熊よりも大きいその狼は、真っ黒に鈍く光る恐ろしい爪と牙を
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