クロードとエリエの仲間割れ
セシリアには殴られたものの、店を出ると気を取り直してクロードはエリエの屋敷に向かうことにした。
先ほどは思わずセシリアに気圧されてしまったが、冷静に考えてみるとセシリアに対して腹が立ってくる。
「せっかく冤罪を晴らして復縁してやるって言っていたのに、何で僕が殴られないといけないんだ。本当はセシリアを連れていってエリエの前で復縁宣言をしてやるつもりだったがどいつもこいつも! もういい、こうなったら僕一人であいつの悪事を暴いてやる!」
幸いクロードはエリエがカールと密会していたという証拠がある。
そんな訳でクロードはセシリアに対する苛立ちをエリエにぶつけたいという気持ちも合わさり、意気揚々とエリエの屋敷に乗り込むのだった。
一方、突然クロードに来訪されたエリエは慌てた。
カールとの関係が出来てしまい、弱みを握られた直後に当の本人であるクロードがやってくるなんて。最初は執事に追い返させようとしたが、クロードが「お前がカールと密会している証拠は握っている」と言われてエリエは通さざるを得なかった。
エリエは幼馴染だから知っているが、クロードは婚約者であるセシリアを冤罪に嵌めるような男だ。もしここで追い返せば本当に自分がカールと密会していた証拠をばらされかねない。そしてことが大きくなれば、最悪カールが握っているエリエが自白した証拠も表に出てしまうかもしれない。
エリエは後ろめたいことがあって動揺していたこともあり、そう思ってしまった。そして結局クロードと会うことにしてしまう。
やむなくエリエは執事に連絡してクロードを応接室へと通される。
「久しぶりだね」
そう言って応接室に入って来たクロードはエリエの浮気に怒っているのかと思いきやなぜか勝ち誇った表情だった。
「い、一体何の用?」
「釣れないな。僕たちは幼馴染だろ? 用がなければ来てはいけないのかい?」
「そういうのはいいから」
焦っていることもあってエリエは用件をせかしてしまう。
するとクロードはため息をついて口を開いた。
「まあそこまで話してやろう。僕は君たちの関係を知っている。この意味が分かるね?」
「え、本当に……?」
この時クロードはエリエとカールが密会しているということ知らなかったが、エリエの視点ではまるで自分がカールに脅迫されていることをクロードに知られているかのように思えてしまった。
本来クロードがそこまで知っているはずはないのだが、後ろ暗いことがあったのと、クロードが無駄に自信満々なのでそう思わされてしまったのである。
「ああ本当さ。僕は今すぐにでもこのことをばらしてもいい」
「そ、それは待って!」
エリエは必死でクロードを止める。
冷静に考えれば、クロードがエリエがカールに脅されていることを知っていたとしても、それを暴露すればセシリアを嵌めたクロードにも罪が及ぶことになることは分かるはずだった。
そのためクロードにそのことをばらされるはずはなかったが、この時のエリエは動揺していたためそこまで頭が回らなかった。
「一体どうしたらばらさないでくれる?」
「どうしようかな」
クロードはクロードで思いのほかエリエが従順だったので少し困惑する。
とはいえここまで言うことを聞いてくれるなら言うことを聞かせてみるのは悪くないかもしれない、と思い立つ。
「それならまずは手始めにカールと別れてもらおうかな」
「そ、それはだめよ! そんなことしたらカールは絶対に許さないわ!」
もしここでエリエがカールを裏切ればカールは絶対に秘密を暴露するだろう。それだけはエリエにとって許されないことだった。
だがクロードからするとここでカールの名前を出されるのは不愉快だった。
「カールが許さない? まあカールをとるなら僕は好きにさせてもらうよ」
何か会話がかみ合っていないような気がしたが、この時エリエは秘密が暴露されるかもしれないという恐怖からうまく頭が回っていなかった。
それにクロードとの会話で微妙に話がかみ合わないのはよくあることだったし、こういう時のクロードは深く考えずにやりかねない。
そう思ったエリエは慌てる。
このままでは自分の秘密が暴露されてしまうかもしれない。
そしてエリエは決めた。こうなったらクロードも口を封じてしまうしかない。
「ごめん、一日だけ考えさせて」
「ふーん? そんなにカールがいいんだ、まあ別にいいけどね」
クロードは不満そうに言う。
彼は彼でエリエが慌てているのは当然と思っており、すれ違いに気づいていなかった。
「明日またうちに来てくれたらそこで返事をするから」
「いいだろう。せいぜいカールとの別れを惜しんでくるがいいさ。全く、あんな男なんかに」
そう言ってクロードは部屋を出ていくのだった。
それを見てエリエはひとまず安心するとともに、セシリアに毒を盛った時にお世話になった薬師の元へ急ぐのだった。
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