詫び石23つ目【不具合修正のお知らせ】

 このたび、お魚団の隊長・アイルちゃんの希望で受けたAランクの依頼は「ゴブリン集団の駆逐」である。



(ゴブリン……)



 名前は聞いたことがある。

 ……スケベで繁殖力の凄まじい生命体であるという噂も耳にした。


 その駆逐がAランク指定=完遂が難しい内容であると認識されている。

 それは、つまり……今まで挑んだ者達がみんな、ゴブリンに……く、屈辱的な目に遭わされて、心が折れたりした、可能性が……。



「そうはさせるか!!」

「……っ!?」

「にゃっ!? きゅ、急に大きな声出さないで!!」

「うん、ごめんね!!」



 そして、我々お魚団がやって来たのは地図の端に位置するとある村。いや、『村だった場所』と言うべきだろうか。

 今ではすっかりさびれて“人影は”1つも見当たらず、建物はどれもボロボロだ。


 ここが“こう”なった理由は、もちろん前述のゴブリンによる仕業。

 奴らは人間を追い出してここに住み着いたのだ……と、ギルドの団長が言っていた。



(……でも、)



 そのわりには不気味なほど静まり返っている。

 ここに辿り着いたのはつい数分前だが、見渡す限り何もいないどころか物音すら聞こえない。



「なんだか気持ち悪い場所ね……」

「そうですね……」



 どこかに身を隠しているのかもしれないというのは当然、頼りになる隊長・アイルちゃんも考えて3人で捜索してみたわけだが、確認できたのは異臭のみだった。



(もしかして、俺達より先に依頼をクリアしたチームがいる? いや、それなら団長が依頼を取り下げているはず……どういうことだ……?)



 可愛い2人を眺めながらあれこれ考えていた時、頭の中に「ポーンッ!」と軽快な音が響く。

 直後――以前耳にした女性の声がこう告げた。



『不具合修正のお知らせ』

「!?」



 ついに俺の最強バグが運営側にバレ……修正されたのか!?



『一部、敵モンスターのグラフィックが正常に表示されない不具合を修正しました」

「ギギギッ!!」

「――っ!? アイルちゃん!! 後ろだ!!」

「えっ?」

「アイル様!!」



 同時に、今まで何もいなかったアイルちゃんの背後にゴブリンが3匹現れる。

 いや、それだけじゃない。さらに湧いて出て……!



(まずい!!)

「にゃっ……!? あわ、あわわっ!! わわっ、我が剣となり盾となれ! その身を従えるはアイル=プシナなり!! 現れ出でよ!!」



 アイルちゃんが片手に小さな本を持ち、何やら唱えた瞬間――……、



「グギュルルルルッ!!」

「……えっ?」



 あの時たしかに倒したはずの巨大ドラゴンが現れ、咆哮を響かせた。

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