詫び石22つ目

「Aランクの依頼に挑戦するわよ!!」



 次は何をしようか?

 アイルちゃんにそう聞いて返ってきた言葉は“それ”だった。



「Aランク……?」



 こう言っては気を悪くする……のは、明白なので、心の中にとどめておくが……アイルちゃんが自ら進んでAランク依頼を受けたがるなんてとても意外なことだ。


 チームを結成したばかりの時はあんなに渋っていたのに……やっと俺を頼るに値する男だと認めてくれたのだろうか? 嬉しいな! 頑張るぞ!!



「ふふん……そうよ!!」



 嬉しい、のだが……。



「もちろん隊長の指示に従うけど、」

「指示じゃないわ!! 希望よ!!」

「立場が低くなってて可愛いな……」

「にゃ……っ!?」



 アイルちゃんの驚いた声を聞いて、ついさっきまで黙々とアイスクリームを食べていたルロちゃんの動きが止まる。



「……ご主人様? アイル様? どうしました?」

「何でもないよ」



 よしよしと頭を撫でた時のルロちゃんの笑顔だけで1日の疲れが取れるな……。



「話の続きだけど……アイルちゃん。俺達はもちろん隊長の指示……希望に沿うし、『隊長の補佐』として頑張るよ。でも、1つだけ条件を出してもいいかな?」

「条件……?」

「うん。副隊長なのに出しゃばってごめん」

「ふ、ふんっ!! わかってるなら良いのよ!! それで、条件って何?」



 Aランクの依頼を受けるのはもちろん構わない。

 それは決して「俺はバグの加護があるから余裕だぜ」なんて傲慢な理由ではなく、少しでもアイルちゃんの自信や力になれるのなら喜んでという素直な感情からくるものだ。


 しかし同時に、不安要素が生まれてしまうのも本当のことだ。

 それは、



「俺の目から見て、アイルちゃんやルロちゃんが危険だと判断できる状況に陥ったら、その時は隊長の言うことを聞かず出しゃばるし勝手に手助けさせてもらう。この条件を受け入れてくれるなら、アイルちゃんの希望を聞くよ。どうかな?」



 前回のようにタイミング良くラグが発生するとも限らない。

 もし再び同じ状況になったら、俺はきっと……いや、絶対に「隊長の顔を立てること」ではなく「彼女たちを守ること」を優先させるだろう。


 俺の言葉を聞いてアイルちゃんはぱちくりとまばたきを繰り返し、少しの間を置いて顔を赤くしながら一言。



「嫌、って……言うわけないでしょ……?」

「なんて可愛さなんだ……この魂尽きるまで守り抜くよ」

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