詫び石18つ目

 ……と、いうことで。色々あったがAランクの依頼を無事にクリアしたため、食事を済ませてから再び神託所へ戻ってきた。



「……と、いうわけです!」

「さすがです、ご主人様! 説明を省く姿も絵になります!」

「べっ、別に……称号が欲しくて来たわけじゃないんだからねっ!!」

「なんか面倒なのが増えてんな!?」



 この短時間でアイルちゃんの存在に気づくとは……さすが強面のおじさん略して強おじ。



「約束通り称号は頂いていこう」

「何で偉そうなんだよ。また小突かれてーのか」

「さっさと称号をよこしなさいよっ!!」

「そうです! ご主人様はあなたに言われた通り、ギルドに入ってちゃんと依頼をこなしました!! 勇者の称号をください!!」

「本当にうるせぇ奴らだな!?」



 強おじは大きなため息を一つ吐いてから椅子に腰を下ろすと、自身を落ち着かせるためかジョッキに入った何かをゴクゴクと豪快に飲み込んだ。


 そしてもう一度ため息を吐き、アイルちゃんを指さす。



「そこの小娘は『ツンデレ猫』だ」

「なっ……!? つ、“つんでれ”……? って、何よ!! 説明しなさい!!」

「で、お前は……」



 そこで言葉を切った強おじは、俺を見つめたまま唇を引き結んだ。


 しばらくの静寂。ゴクリ……。



(惚れられたのかな……うーん、さすがに強おじは体格が良すぎるな……どうやって交際を断ろう……)

「おい、今なにか変な勘ぐりしてただろ」



 さすが強おじ、とても鋭い。そしていい拳だ。

 痛む頭のコブを撫でつつ次の言葉を待つ。



「……まあ、いいだろう。『勇者』の称号をくれてやる」

「……!! ありがとうございます!!」

「ただし、よく聞け。神にとって今のお前は“ギリギリ許容範囲”でしかないことを忘れるな。お前には『魔王』の素質がある。いつ俺たちの敵に回るかわからねー存在だ」

「そ、そんな……照れます」

「褒めてねーんだよ」



 コブが2段になる俺、驚いた様子でこちらを見るアイルちゃん、立っているだけで可愛いルロちゃん。



「これからも気を緩めず、普段の行いには気をつけろ。お前たちも、コイツが少しでも怪しい発言・行動をしたら容赦なく拘束して教会もしくはギルドの団長に突き出せ。いいな」





 夢の『勇者』になれた俺は、心なしか弾む足取りで2人と手を繋いだまま街中を歩いていた。

 これから何をするか、どこへ行くかはお魚団の隊長・アイルちゃんが決めることなので、俺とルロちゃんは余計な口出しをせず指示を待つだけ。


 当の本人もとい本猫はご機嫌でソーセージ揚げ棒にかじりついている。



(可愛い……)



 そんな時だった。



「やっと見つけた……久しぶりだな、753番」

「?」

「……っ!? あ、あなたは……」

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