詫び石19つ目【クエストの依頼】

「デュフフ……ずいぶん探したぞ、753番~……」

「?」

「誰よあんた!!」



 鼻が詰まったような声が耳に届き振り返ると、そこには小太りで背の低いおじさんが立っていた。

 そして、その背後には体格の良い長身強面お兄さんが4人。



(ボディーガードか……?)



 ニヤニヤしながらこちらを見ている低身長小太りさんは高そうな服を身に着けていることから、貴族か何かだと考えてほぼほぼ間違いはないだろう。


 それにしても、



(753番……? どこかで聞いた気がするな……)



 何だっただろうかと記憶を辿りつつ、小太りの彼が先ほど声をかけた先――ルロちゃんに目をやると、彼女は真っ青な顔で小さく震えていた。



「……? ルロちゃん?」

「ちょっと、大丈夫……?」

「デュフッ……753番~ぼきゅに黙って出ていくなんて酷いじゃないか~」

「ど、どうして、あなたがここに……」

「どうして……? デュフッ、一生懸命探したからだよ~」



 753番、探した、貴族(仮)、ルロちゃんの怯えっぷり、小太り。


 この5つのポイントでようやく思い出す。



「お前……ルロちゃんにひどい事しようとしてた奴か?」

「デュフフ、人聞きが悪い……“ひどい事”をしたのは、ぼきゅじゃなくて753番の方じゃないか~恩を仇で返すなんてさ~」

「そ、そんな、私は……っ」

「……」



 俺は自分のことをそこそこ心の広い村人だと自負しているのだが、小太りの放った今の言葉を聞いて瞬間的に頭に血が上ってしまった。



「恩……?」

「デュフッ、そうだ。せっかくぼきゅが何不自由ない生活を与えていたのに~」

「それは……っ、……!?」



 とっさに言い返そうとしたルロちゃんの前に出て片腕で制し、無言のまま「何も言わなくていいよ」という意味を伝えると、彼女は口をつぐんで俺の上着をきゅっと握りしめる。


 ルロちゃんの過去を知らないアイルちゃんは、ただ困惑した様子で後ずさったあと俺の背中に隠れた。



「元を辿れば、それも全部お前がルロちゃんにひどい事をして自分だけが得をするためだろ」

「なんだ、お前~……弱っちそうなくせに生意気だな~? もしかして、もう753番とヤったのか~? そいつの処女はぼきゅのものだったのに~!!」

「……」



 ルロちゃんを飼っていた貴族が取り戻しに来た時、最初は「抱くなら俺を抱け!! そのかわりルロちゃんには手を出すな!!」と言うつもりで彼女と一緒に過ごしていたというのに。


 実際、目の前に現れたのは……あまりにも虫唾が走るタイプの人間で。



「許さないぞ~!! 痛い目に遭わせてやる~!!」

「それは俺のセリフだよ、クソ野郎」

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