詫び石17つ目【状態異常に関する倍率の上方修正】
「まさか本当にあのドラゴンを狩っちまうとはな……」
報酬などなどの手続き確認後、団長は独り言のようにそう漏らす。
それに対してルロちゃんは、いかにしてご主人様(俺)がドラゴンを倒したのか・どれだけ頼りになったか・自分はその時どう感じたか・今飲んでいるジュースはどんな味をするかを熱弁していた。
(可愛い……)
一方で、俺に背負われて山を降りている時から一言も発しないアイルちゃん。
もしかして「お魚団の隊長を差し置いてなに勝手に活躍してるのよ!!」と怒っているのだろうか? それとも「役に立てなかった……」とか考えて落ち込んでいるのだろうか? と、心配からくる吐き気に襲われながらおそるおそる顔を見たのだが、
「そこにいたのはただの天使だった」
「にゃっ!?」
なにそのいつも以上に可愛い顔……。
「きゅきゅきゅ、急に何よ!!」
「それは俺のセリフだよ。急に可愛い顔が眼前に現れて心臓が止まるかと思った」
「にゃ……っ!!」
今はリンゴにも勝る赤い顔を両手で隠しながらうろたえたように後ずさっているアイルちゃんだが、俺が声をかける寸前までそれはもうとてもとても嬉しそうな様子で口元を緩ませ、(俺もルロちゃんもあえて触れなかったが)ギルドに着いてからはずっと小さな鼻歌が漏れていたのだ。
一言で表すと『可愛い』。あ、いや……『上機嫌』。
(驚くと「にゃ」って言っちゃうところも可愛いな……『可愛い』の2乗に挟まれて俺の頭もバグりそうだ……)
「そっ、そうやってゴマすっても隊長の座は譲らないからねっ!!」
「……? お世辞に聞こえたならごめん、俺の伝える“力”が足りてなかったんだな。ただ、俺は事実を述べているだけだってことはわかっていてほしい」
「なっ、なっ……」
ぷるぷる震えるアイルちゃん。
数秒後――彼女はとても弱い力で俺の腕に猫パンチして、上目遣いでぽつりと言葉を落とす。
「なによ、それ……そんなこと言ってくれるの、あんただけよ。バカ……ッ」
「……」
「……!? ちょっ、大丈夫!?」
「ご主人様……っ!!」
「なんだ!? 何があった!? しっかりしろ、ムラビト!!」
「俺は見てたぞ!! そこの猫のお嬢ちゃんが何か言った直後にバタンとぶっ倒れやがったんだ!!」
……俺も危うく命を落とすところだった。
名前:ムラビト
状態異常:魅了、混乱、麻痺、腹減り
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