銀行へソロ狩り行こうぜ★
黒幕横丁
予め要求金額は統一しておこうね★
実家で暮らしている姉さん、元気にしていますでしょうか? 今頃、せんべいを食べながら過去のサスペンスドラマの再放送を見てごろごろしている時間帯でしょうか?
俺は念願の都市銀行への入社を果たし、配属された店舗で切磋琢磨働いております。時々支店長から小言を言われていることがありますが、そんなことにはめげることなく頑張っています。
我が家の家訓にありましたよね? 【諦めたら其処でジ・エンド】だって。あの家訓が無かったら俺は今ごと路頭に迷っていたことでしょう。ありがとう家訓を考えてくれた我が家の先祖様。
家訓に有難がっている場合ではありませんでした。姉さん、大変です! 事件です。ついに、俺が勤めている銀行の支店にも、銀行強盗という人たちがやってきました。
しかも8人もやって来たのです。これはもう一大事なんですよ、姉さん。せんべい食べている場合ではないです。
『金を出せ! このカバンにありったけ詰めろ!』
その銀行強盗たちは綺麗に声をハモらせながら、8つある全てカウンターそれぞれに草臥れたボストンバッグを置く。そのあまりにも華麗な同時動作に思わずカウンターに座っていた銀行員たちは二度見をしてしまう。
「グズグズするな! 死にてぇのか!」
右から三番目の銀行強盗がそう声を荒げた。
「すいませんが、お客さ……ま? 同じ犯行グループではないのですか? そんなにカバンは要らないでしょう?」
三番目のカウンターを丁度担当していた俺は恐る恐る訊ねる。
「あ? こいつらとは初対面だ」
まさかの初対面。
「ちょうど、銀行強盗しようと銀行を入ろうとしたら似たようなカバンを持ったこいつらを見ちまってな。それで話を聞いたら、これからこの銀行でソロで銀行強盗するっていうじゃねぇか。奇遇だな、俺もだよっ!って意気投合して、で、今強盗しているって算段なわけだ」
同日に8人もソロで銀行強盗するなんて話聞いたことねぇよ。どんだけ舐められているんだよ、うちの支店はっ!
そんな怒りをやや露にしつつも、俺は何とかこの状況を時間稼ぎせねばならない。5番カウンターの先輩を密かに警察に通報するボタンを押したのを俺はちらっと横目で確認した。アレさえ押してしまえば、あとは警察が来るまでこのソロ銀行強盗8人を逃がさないことに徹すれば良い。
諦めたら其処でジ・エンドだ。
「ところでお客様たちはソロ銀行強盗っていうお話でしたよね?」
俺は銀行強盗C(もう説明がややこしくなったのでアルファベット表記でいく)に時間稼ぎの質問を投げかける。
「そうだが?」
「ということはですよ? それぞれのカウンターでそれぞれの銀行員がつめる金額に差が生まれてしまうと争いが生じませんか?」
俺の質問に銀行強盗たちはまるで衝撃を受けていたようだった。いや、普通そこ気付けよ。
すると、銀行強盗Gが手でTのカタチを作る。
「ちょっと、作戦会議だ」
ソロの銀行強盗たちは中央に集まって何やら自分の欲しい金額を話し合い始める。どうやらそれで統一する金額を決めるようだ。
そんな作戦会議中途中で警察が到着、銀行強盗たちは慌てただけで何も出来ず、大人しく捕まっていった。
こうして、銀行に平和が訪れたんだけれども、姉さん、こんな舐められた支店は早く異動したいです。
銀行へソロ狩り行こうぜ★ 黒幕横丁 @kuromaku125
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