第6話 会社員時代
高校を卒業した道汚は、地元の企業で工場作業員として働き始めるようになる。会社員として働きながらも時々、FM徳島の高橋さん関連のラジオ番組に時々呼ばれながら過ごしていた。そんな生活が過ぎて一年半が経った頃、堂島道汚は十九歳になり、仕事を続けていた。仕事にも少し慣れてきて、このまま歳を取っていくのかと思っていた矢先の事だった。高橋さんから自分の番組を持たないかという誘いが来た。今の会社を続けるべきか、それとも夢を追いかける為に会社を辞めてラジオ番組を持つか。堂島道汚は悩んだ。そして堂島道汚、二十歳。二年間働いた職場を退職し、自身のラジオ番組を持つことになった。その番組こそ【今夜も俺は眠れナイト】だった。
「午前一時。さあ始まりました。今夜も俺は眠れナイト。パーソナリティーは私、堂島道汚。何度も言いますが、堂島道汚の”汚”は、汚いと書いて道汚です。間違いではありません。本名です。いやー、今日もリスナーの皆さんから沢山のお便りを頂いているので紹介していきたいと思います。ラジオネーム、カール君さんからのお便り。僕の小学校では、兎を飼ってるんですが、名前がありません。良い名前はありませんか?うーん、そうだなぁ。その前にカール君さんは小学生?ダメだよ、早く寝ないと。良い子はこんなラジオ聴かず、九時には寝ないとね。それで兎の名前なんだけど、どうしようか。私は昔、亀を飼ってたんだけど、亀の動きがさ。なんかこう人生、生き急ぐなよ。のんびり行こうぜって感じで言ってもらえたような気がしたから先生って名前にしたね。そんな感じの発想から師匠ってのはどうだい?兎のその瞬発力は、まさに師匠。良いと思うんだけど」
眠れないリスナー達からのお便りを読みながら、堂島道汚が答えていくスタイルは、深夜枠だった事もあり、口コミで少しずつ知名度が増していった。悩み相談から面白い話や怖い話。内容は様々で、そこに堂島道汚が思った事を語っていく。コツコツと人気を集めていった番組になった。【今夜も俺は眠れナイト】を続けて、三年が経った頃、昼のラジオでのゲスト出演が決まった。普段は昼間にラジオを聴いている層に自身をアピールできるチャンスとなった。
そのラジオは【我ら、ひる昼ヒルズ】というお昼の情報番組だった。その日話題になっているニュースを読んでトークする番組だった。
「さあ時刻は午後二時。今日も始まりました。我ら、ひる昼ヒルズ。パーソナリティーは私、野口紀子。今日のゲストは、深夜枠のラジオ、今夜も俺は眠れナイトでお馴染みのこの方です。堂島道汚さんです」
「はい、どうも。こんにちは。堂島道汚です。道汚の汚は、汚いと書いて汚です。誤字ではありませんよ。本名です」
「はい。お決まりの挨拶ありがとうございます。嬉しいですねー。生のご挨拶を聞けるなんて感激です。私もいつも眠れナイト聴いてますよー」
「えー?野口さん、眠れナイト聴いてくれてるんですかー?ありがとうございます。でも夜中の一時なんで早く寝た方がいいですよー。ねぇ、お肌にも良くないですからね」
「いやー、つい夜更かししちゃうんですよねー…。さて今日も色々なニュースがありました。やっぱりなんといっても一番大きな話題は、これ。権民党の浅井英寿議員の汚職問題。建築業界から多額の賄賂を受け取っていたんですけど、道汚さんどうですか?このニュース」
「汚職?汚れと聞くと、つい反応してしまいますね。道汚なんで」
「そっちですか?」
「まあでもやっぱりね。国を守る仕事をする人がね。言うなれば日本国の代表みたいなものですよ。汚れずに綺麗に仕事をして欲しいものですね」
「そうですね。汚れといえば道汚さんは、家の中は綺麗にしているタイプですか?私、掃除が苦手なんですよね。だから部屋の中がいつも散らかってるんですよ」
「掃除ですか?掃除は私、綺麗にする方です。ほら、やっぱり名前に汚れが付くくらいなので、部屋まで汚いと嫌だなと思って気を付けてますね。せめて部屋くらいはと思って」
「ほんとですか!?掃除のコツって何かあれば教えて欲しいです」
「うーん……そうだなぁ。やっぱり基本は、断捨離ですね。物がありすぎるから散らかってしまうんです。だから部屋にいらない物を置かないようにする事がコツの一つなのかなと思ったりもします。部屋を広く使えるようになると、心の負担もなんだか減ったような気がしてストレスが減りましたね。後は部屋の色彩なんかにも気を配って統一感を意識すると良いと思いますよ。是非やってみてください」
「ほんとですか!?私も断捨離頑張ってみたいと思います。道汚さん素敵なアドバイスありがとうございます。さあ続いては電話クイズのコーナーです。今日の商品は、堂島道汚さんのサイン色紙をプレゼントします。どんどん電話お待ちしております。それでは今日の問題です。サーモンがピンク色になる理由は、次の内どれ。一番、遺伝子の関係でピンク色になる。二番、環境に適当する為にピンク色になる。三番、餌であるエビの色が着く事でピンク色になる。さあお電話お待ちしております」
「あー、これね。意外と知らない人もいるんですよね。ちなみに私は、ホイル焼きとかをよく居酒屋で食べてますね。美味しいですよね、サーモン」
「さあ早速一人目繋がりました。お名前は?」
「佐々木です」
「佐々木さん。それではクイズの答えは?」
「三番の餌のエビの色が着く事でピンク色になる」
「正解です!おめでとうございます。道汚さんのサイン色紙をプレゼントします」
「ありがとうございます」
「佐々木さん。道汚さんに何か聞きたい事はありますか?」
「道汚さんは兄弟っていますか?」
「私ねー、一人っ子なんですよ。兄弟とか欲しかったなー。お兄ちゃんとかいる人、憧れますよね。私ね、母が仕事だったから小学生の時は鍵っ子でしたよ。帰ってきたら兄弟と遊ぶとかそういうのなかったんで、ずっとペットの亀を眺めてましたね。佐々木さん、ありがとうございました。これからも応援よろしくお願いします。色紙送りますね」
「楽しみに待ってます!」
「……はい。只今の時間を持ちまして、以上でお電話の方を締め切ります。今日のゲストは、堂島道汚さんでした。道汚さん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、呼んで頂きありがとうございました」
「また次回の放送でお会いしましょう。それでは」
そうして【ひる昼ヒルズ】は、無事に終わった。
番組スタッフの間で堂島道汚は好評で、これがきっかけとなり、様々なラジオ番組にゲストで呼んでもらう事ができて、ラジオの仕事が増えていった。
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