第130話セリシオの最後 ざまぁ回
身体が震える。
何故、何故転移が使えないのです?
私の術式は完璧だった筈、
なのに、何故?
目の前にはレオダスが立っています。
私を殺そうと、剣を握って私を睨んでいる。
なんとか、なんとかしなければ。
転移出来ない原因が判れば逃げ道が見つかるかも。
何か情報がないかと辺りを見渡すと、クレアが視界に入りました。
クレアからは魔力が溢れています。
何か、魔法を使っている?
私が視線を送っていることにクレアも気がついたようです。
クレアはキッと私を睨むと、
「アンチ・マジックフィールドを張りました。この場での魔法は、私が封じます」
「な、何ですって!?」
アンチ・マジックフィールド!
魔法使いを只の人に貶める悪魔の魔法。
それをこの女が取得したというのですか!
「“真実の鳥”があった虚偽の塔でレベルアップしました。成長しているのはあなただけじゃないんです」
お、己、この馬鹿女が!
「・・・と言っても、未熟な私では、ちょっとこの場で起こる魔法効果を弱める程度ですが」
なるほど。
レオダスと戦っている最中も、クレアは魔法を使っていたというわけですか。
確かに、まったく意識していませんでしたね。
「ですが、転移は別です。あの魔法を超精密な魔力操作が求められ、空間を渡る魔法です。この、魔法効果を阻害するアンチ・マジックフィールド空間内で、その効果を発揮することは出来ません!」
「う、ぐぅ」
なんということ。
これではクレアを殺さない限り、転移できない。
しかし、この傷ついた身体では・・・。
レオダスがゆらりと一歩私に近づきました。
「もういいか?」
「・・・まだです」
私はレオダスを睨みつけます。
「お前のスキルをまだ聞いていません。その身体能力。一体どんなスキルを身につけたというのですか!?」
知りたい。
この私を追い詰めたスキルがなんであるかを。
レオダスは一拍間を置くと、ゆっくりと口を開きます。
「キャリアバウンド。一時的にレベルを落とし、その反動で、爆発的に一定時間レベルアップさせるスキルだ」
「・・・キャリア、バウンド?」
な、なんですかその出鱈目なスキルは?
で、では、先程動きが鈍かったのは、疲れていたわけではなく、そのスキル効果で一時的にレベルダウンしていた為?
くそぉ!
そうと分かっていればさっさと止めを刺したものを!!
くっ、ですが、そのスキルは大きなリスクを背負う。
対応策はある筈です。
逃げなければ。
ここを逃げ切れば、再びこの男と戦い、今度こそ殺せる筈です。
そう。
私には最適解のスキルがあります。
このスキルを使えば、一瞬で何時間、何十時間も熟考した結論が瞬時に導き出せる。
考えに考え抜いたのなら、この局面を乗り切ることだって出来るはずです!!
さあ、考えろ!!
『逃げられない』
・・・は?
『逃げられない』
そ、そんな馬鹿な。
もっと、もっとよく考えるのです。
『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』
あ、有り得ない。
逃げられる筈だ!!
考えればきっと!!!!
『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』『逃げられない』
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!」
こ、こんな馬鹿なことがある筈が。
どんなに、どんなに考え抜いても、この場を乗り切る方策が思いつかない。
この天才の、最適解のスキルを使っても尚。
「セリシオ」
「ひぃ!!」
目から涙が零れ落ちる。
鼻を垂らして。
あ、ああああはぁ、も、漏らしてしまったぁ~。
「おち、落ち着きなさい。ははっ。よく考えなさい。私はあなた方にとって有用な存在ですよ?」
股を濡らしながら、私は最後の説得を試みる。
「・・・」
「元々パーティーの要であった私が、更に転移と最適解のスキルまで取得したのです。も、もう一度、あなた方の仲間となりましょう。は、はははっ。悪くない条件でしょう!」
黙って、レオダスは剣を上へ、上へと持ち上げる。
「ま、待って。待って下さい! 助けて! 助けてください! 私は、私には生き残るために、アターシャを利用するしかなかったのです!」
上へと振り上げた剣が天辺まで掲げられ、ピタリと止まった。
もう、振り下ろすしかない。
「ゆる、して・・・ゆるじでぐだざぃ~。れおだずざまぁ。ゆるしてぇ~!」
「俺を含めた、仲間達の怒り。レキスターシャ公とアターシャ嬢の悲しみ」
「う、うう」
「そして、アルトスら、お前に奪われた罪なき大勢の人達の命。それが許されると思うか?」
「あ、う、う、うぅ」
「もう一度問う。何か言い残す言葉はあるか?」
言い残すこと?
私は、もう終わりなのですか?
助からないのですか?
何故、
なんで私は、
「私は・・・私は、どこで間違ってしまったのでしょう?」
レオダスは目を細め、
「知るか。そんなことは自分で考えろ。便利なスキルもあることだしな」
「あっ」
・・・ああ、そうか。そうなのか。
ここに至っては、認めるしかないでしょうね。
「私は、あなたを追放した時、既にー」
ザシュゥ!!!!
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