第127話レオダス対セリシオ1
俺はセリシオとの間合いを詰めようと、ダッシュをかけた。
奴との距離、約50メートル。
ここは奴の距離だ。
まずは俺の距離まで行かないと。
「させませんよ!」
セリシオは魔法で迎撃を仕掛けて来る。
俺は咄嗟に右に避けたのだが、セリシオは既に此方に魔法を撃っていた。
「っつ」
ここは更に迂回するしかない。
奴は次々に魔法を放って俺を追撃。
躱し続けてはいるものの、間合いを詰めさせてもらえない。
「ファイアボール」
「ファイアボール」
互いに魔法を使い、これを対消滅させその爆発で俺はまた距離を取らなければならなくなった。
「っく」
なんだ?
何か妙だぞ。
こっちの動きを冷静に読んでくる。
それは、熟練の猛者ならば当然のことだが、セリシオはこれまで、接近戦を挑んでくる相手には逃げを打っていた。
呪文を唱えるにも、間にアルトスや俺、前衛を必ず挟んでいた。
それが今は、一対一だというのにただ逃げるではなく、俺との間合いを図り、俺の動きに先んじて魔法を使ってくる。
これまでのセリシオにはなかった立ち回りだ。
この妙な違和感はなんだ?
言うならば、チェスなんて高等な遊戯はそれほど嗜んじゃいないが、こっちが早指しで打っているのに、あっちはタップリと熟考して打っているような、そんなイメージの違和感。
それに、まさかこんなことになるとは思っていなかったセリシオは杖を持っていない。
杖は魔法使いにとって、魔法を使う為に必要な重要アイテムだ。
魔力の威力、制御、高速詠唱を可能とさせる。
その杖を持っていないのに、滑らかにしてこの威力の魔法を使って来る。
さっきのファイアボールの撃ち合いをなんとか消滅出来たが、明らかに力負けしていたしな。
俺が言うのもなんだが、こいつ、この短期間で何があった?
「何故私はこんなに強いのでしょうか? それが不思議ですか?」
俺の焦り、戸惑いが伝わってしまったようだ。
セリシオはニヤニヤと笑って余裕を持たせている。
落ち着け俺。
ここで冷静さを失っちゃダメだ。
むしろ、話しかけてきたのはチャンス。
ここで会話を続けて皆が来るまでの時間を稼ぐんだ。
「・・・見事な先読みと、魔法の威力だ。お前もこの短期間で相当修行したんだな?」
「フッ、この天才に本来努力など無用なのですが、まあ、多少はね」
乗ってきた。
いいぞ、構ってちゃんなこいつは自分の強さの秘訣を誰かに喋りたくて仕方ないらしい。
「一体どんな力を身につけた?」
「フッ、まあこのまま殺されるのもつまらないでしょう。冥土の土産に教えてあげましょう」
出たぞ、冥土の土産。
まさか本当に口にする奴がいるとは思わなかった。
「スキル最適解。これが転移と共に私が手に入れた力です!」
「最適解?」
聞いたことがない。
俺のキャリアバウンドと同じく、他にはないユニークスキルか。
「その名の通り。一瞬で私が最も最適と思った結論に行き着けるスキルですよ。あなたが瞬間瞬間で考えなくてはならないのに対し、私はじっくりと考え抜いて行動に移すことが出来るのです」
なるほど。
奴のあの先読み。
体感で感じた時間かズレのような感覚はそれか。
だから奴はこんなにも落ち着いているんだ。
何をどうするのか。
それをじっくりと考えることが出来ているのと同義なのだから。
そのスキルは臆病なセリシオに見事にハマるスキルなのかも知れん。
セリシオは俺が一の行動をするのに対し、一手も二手も先を指してくるぞ。
「フフ、自分の敗因が分かりましたね? では死になさい愚か者よ」
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