第121話レオダス対レキスターシャ2

 俺の仲間も、兵士達も、距離を取り、俺とレキスターシャ公だけが残った。


 さて、ここからは俺達だけの時間だ。


「言っておくが、わしはレベル30だ。スキルも剣術を持っている。ぬしが勝てる可能性があると思うか?」


 手は抜かないってことか。


 てか、レベル30?


 この間プラス補正が1上がって実質レベル29になったが、あっちの方が一つ上じゃないか。


 俺が知っている中で最も高レベルの人間だぞ。


 こんな所にこんな人がいるなんて。


 だが、ここは虚勢を張る。


「俺も面白いスキルを持っている。がっかりはさせないよ」


 じっと構えを取って、レキスターシャ公の隙を伺る。


 てかねーな、隙。


 レベル30の剣術持ちか。


 正統派でガチガチの剣士じゃねーか。


「来ないのか? では、こちらから行くぞ」


「っつ」


 レキスターシャ公が突進してくる。


 速いな。


 剣と剣がぶつかり合い、火花が散った。


 凄い力だ。

 この人本当に50歳超えてるのか?

 気を抜くとそのままもっていかれそうだ。


「やるな、わしの一撃を止めるか」


「こっちこそ。どうしてその筋力を維持できるんだ?」


「たゆまぬ努力だ。訓練を欠かしたことはない!」


 そう言いつつ、レキスターシャ公は攻撃の手を緩めない。


 その歳で、これだけの力を維持できる。


 確かに努力を重ねているんだろう、ストイックだな。


 俺はそれを受けるだけで腕が痺れてきた。


 このままでは押し切られる。


 俺は腰を入れて、蹴りを食らわせようとしたが、それに気が付いたレキスターシャ公はさっと後ろに下がった。


 くそ、よく見てやがる。


「中々やるな。わしの攻撃を凌ぐか」


「こっちは現役なんでね」


「やせ我慢をするな。わしは今の騎士団長アールベルトに稽古をつけたこともある」


 俺に一度は挫折を味合わせてくれた騎士団長の師匠か。


 勘弁してくれよ。


 近距離戦は危険だ。


 俺は距離を置いて魔法を放つ。


「“ファイヤバレット”」


 放たれる火炎の弾。


 それが、レキスターシャ公に迫ると、


「“アイスバレット”」


「なっ」


 俺の火炎の弾を、あっちは氷の弾で迎撃、対消滅させた。


 更に、


「“ファイアバレット”、“エアボール”」


「なぬ!?」


 出された二重魔法に俺は度肝を抜かれ、必死に躱す。


 おいおい、この人、アティと同じように二つの魔法を同時に使えるのか。


 レベル30で? 剣術のスキル持ちで? 魔法まで使える、しかも二重で?


 え、チートじゃないですかね。


「どうした? その程度の腕でわしを止めようというのか?」


 くそ、このおっさん。


「“ファイアボール”」


「くっ、“ファイアボール”」


 あっちの“ファイアボール”をこっちも“ファイアボール”で迎撃した。


「あんたも魔法剣士だったとはな」


「何故わしがこの国の将軍でいられるのか解ったか」


「ああ、身を持ってね」


 コテコテの剣士かと思ったんだけどな。


 強いぞ、この人。


 てか、遠距離戦は近距離戦よりも、更に不利だ。


 やっぱり剣で勝負するしかない。


 それにだ。


 俺は段々腹が立ってきた。


 こんなに強いのに。


 こんなに努力をしている人なのに。


 なんで今、この人はこんなことをしているんだ?


 娘に言われるがまま、なんでこんなことを。


 確かに気持ちは解るが、だけど、もっとこの人は強い筈だろ。


 身体だけじゃなくて、心も!


「む?」


 俺の気配が変わったのが解ったのか、レキスターシャ公は腰を落とし、警戒を強める。


 ああ、だけど今の俺にはそんなもんはどうでもいい。


 むしろ、どんどんむかっ腹が立ってきたぞ。


「あんたを止める。なんとしても」


 皆を助ける。


 仲間は勿論、ここにいる兵士の人達も、アターシャ嬢も、そしてこの人も。


 ゆらりと、俺の身体が揺れた。

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