第114話賢者サイド 偽りの報告
「そうですか、始末しましたか!」
久々にいい報告を聞き、思わず声を大きくしてしまいました。
フフ、それも仕方がないでしょう。
こんないい報告はまたとないのですから。
「確かに仕留めたのですね?」
「へい、旦那。旦那に頼まれたあの5人は確かに仕留めましたぜ」
フフ、私は気配を消すのに長けた暗殺者3人を刺客としてレオダスに差し向けました。
もっと人数を揃えられればよかったのですが、気配を消しながら尾行できる凄腕となると、すぐには集まらなかったのです。
予想通り、奴らは謎の塔に上ろうとしていたようですね。
もしかしたら、そこに“真実の鳥”とやらがあったのかもしれません。
しかし、この暗殺者達によって、レオダスを亡き者に出来たのです。
素晴らしい、素晴らしい報告ですよ。
この手で止めをさせなかったのは心残りと言えば心残りではありますが、私は公爵になる男。
自ら動くのではなく、誰かを動かすことも覚えなくてはなりませんからね。
新たに力を手に入れ、万が一に備えていましたが、その必要もありませんでしたか。
「それで? 奴らを倒した証拠は持ってきましたか?」
「え?」
「何を呆けているのです。何か持ってきたのでしょう?」
私が眉を上げると、暗殺者達はおどけています。
もしや、
「何も持っていないのですか?」
「な、中々手強くってよ。こっちも必死だったわけだ」
「黙りなさい。その程度の仕事も出来ないのですか!」
なんで、こうも私の周りには無能しかいないのですか?
類は友を呼ぶという言葉があるそうですが、確かに私の周りは馬鹿ばかり。
優秀なのは私だけというわけですか。
「こ、こっちだって文句はあらぁ! なんだあいつらは、滅茶苦茶強ぇじゃねーか」
私は鼻で笑う。
「あの程度の連中が強い? あなた達の腕が鈍いだけでしょうに」
「なっ、これでも俺らは評判の実力者だぞ。だが、あいつらはそんな俺らが敵わな・・・手こずる連中だったんだよ!」
愚かな。
確かに奴らは勇者パーティーです。
ですが、それは私がいたからこそ機能していた張りぼてのパーティーなのです。
頭数では奴らに及ばないでしょうが、それでも、私がいないのであれば、それ程手こずる道理はないはず。
「前金は返さねえからな。もうアンタからは依頼受けねーぞ!」
「あ、こら。待ちなさい!」
汚らしいセリフを吐き捨てながら、男達は去っていきました。
無作法者め。
ですが、いいでしょう、レオダス達を仕留めたのですから。
さて、それではとうとうあの計画を実行に移しましょうか。
*********
「おい兄貴、あんなこと言ってもよかったのかよ?」
「うるせー、そう言われただろうが」
暗殺者達はお互いに言い聞かせるように話し合う。
そう、彼らはレオダスらの暗殺に失敗したのだが、セリシオに虚偽の報告を行ったのだ。
これは彼らの独断ではなく、レオダスの指示であった。
再び、自分達が襲われないように、セリシオが油断するように、この暗殺者達を逆に利用したのである。
彼らはなんの情報も与えずに、自分達をあんな凄腕連中と戦わされた恨みもあり、レオダスの提案を受け入れた。
彼らにもプロ意識はあるにはあったのだが、クライアントへの怒り、そしてレオダス達の報復を恐れ、あっさりと言うことを聞いてしまったのだ。
セリシオの周りに無能が集まるのではなく、セリシオが彼らを見下し、能力を引き出せなかったが故の結果であり、無能はいったい誰なのか、彼はこの先も気が付くことはないだろう。
が、この顛末は、セリシオの運命を決定づける一つのエピソードとなるのであった。
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