第113話虚偽の塔10
リビングアーマー。
それは鎧型のアンデット。
鎧の中には誰も入っておらず、鎧だけが動く。
なんでも悪霊が鎧の中に潜んでいるとかなんとか聞いたことがあるが、詳しくは知らない。
クレアなら知っているかもしれないけれど、今はご丁寧な講釈を聞いている暇はない。
道理で、無機質な動きで攻撃をしてきたはずだ。
こいつらには恐怖も痛みもないのだから。
だから、強引にでも攻めてくる。
多少傷ついても関係ない。
体の自由を完全に奪われなければ、頭が無くなろうが、心臓を刺されようがこいつらは止まらない。
だが、悪いことばかりじゃない。
こいつらがアンデットだというのなら。
「それなら、私の魔法も通じるはずです」
そう、
クレアの聖魔法は、アンデットや悪魔以外には効きづらいが、刺されば強い。
こいつら相手なら、守りの要であるクレアが攻撃でも活躍できる。
「光よ、満ちて。“ホーリーライト”」
クレアの杖から、眩い光がフロアに満ちた。
俺達にはただの光だが、リビングアーマーは明らかに嫌がっている。
痛みは感じなくとも、やはり聖魔法には弱いみたいだ。
俺は動きが鈍くなったリビングアーマーに詰め寄ると、まず腕の関節部を狙って斬りつけた。
バキンと、腕が外れ、腕もろとも、持っていた剣も落とす。
これならば。
もう片方の腕、次に両足!
動けないところを悪いが、狙わせてもらう。
繰り出される連撃で、リビングアーマーは成すすべなく、その場に転がった。
鎧と兜だけでは、身動きが取れず、ギシギシ、ジタバタと動くだけ。
もう何も出来まい。
「次!」
俺はアトスに向かって視線を移すと、アトスの魔法がちょうど完成した。
「“セイクリットレイ”」
光線がリビングアーマーを射抜く。
本来であれば、身体に穴が空いたくらいで、リビングアーマーは止まらないが、ビクリと身体が震え、動かなくなった。
流石は聖魔法の上位系だ。
さて、後はもう一体。
動けなくなっているリビングアーマーにリズミカルにステラはダメージを与えていき、足の関節部に強打。
ガキンと音が響き、一時的に動きを止めた。
魔法で動きを鈍らせ、足に打撃を食らい、それでも動こうと剣を振るい上げるリビングアーマー。
それを、アティが杖で止める。
「アティ!」
「ステラ! 決めちゃって!」
ハイ、
ミドル、
ロー、
水面蹴りを決め。瞬く間にリビングアーマーの行動を不能にした。
「ふぅ、ナイスフォロー、アティ」
「まっ、あたしらにかかればこんなもんよ」
パーンと、手を掲げて二人はハイタッチ。
これで、三体撃破、か。
これが最後だといいな。
俺は、続いている廊下に目をやった。
この先に、何かがある。
それが、“真実の鳥”なのか、別の何かなのかは分からないが、ここまで来たら成果を持って帰りたいものだ。
「行こう皆」
全員で頷き合って、廊下を歩いていく。
しかしながら、後ろから、
カタカタ、
カタカタカタと、音がした。
・・・嫌な予感がして振り返ってみると、リビングアーマーが揺れている。
「・・・皆、振り返れ」
薄々気が付いているんだろうな。
全員が喉を鳴らして振り返った。
バラバラになっているリビングアーマーが宙を飛んで引かれ合い、なんというか合体した。
「うわ、マジかよ」
ガシャンガシャンと三体が結合し、一つとなる。
いくつかは床に転がったままの鎧もあるが、ほとんどが結合。
その姿は、頭が三つ、腕が六本のモンスター。
見た目は非常に怖いが、実際腕が六本もあるのは厄介だぞ。
右手に二本、左手に一本剣を携えており、隙が無い。
くそ、ワーウルフよりも容易いなんて思っていたが、こんな落とし穴が待っていたとは。
「・・・ゲリュオーン」
クレアがぽつりと呟く。
声はかすかに震えていた。
「ゲリュオーン。なんだそいつは?」
「見ての通り、三位一体の鎧モンスターです。何かを守護していると伝説にありましたが、まさかここに・・・」
なるほど、詳しい講釈は置いておいて、一筋縄ではいかない相手だな。
俺は全員を鼓舞する為に吠える。
「行くぞ、皆!」
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