第104話虚偽の塔2

「ふう、なんとかなったな」


 俺は汗を拭い、辺りを見渡した。


 周りには骨が散らばっているが、動きだそうとはしない。

 完全に倒したようだ。


「あいつらが出てきた通路には何もなかったよ。やっぱり、このフロアを出るには上の階段しかないみたいだね」


 さっき、スケルトンキングが現れた通路を調べていたステラが帰ってきた。


 俺は階段を見つめ、皆に続くように促す。


 階段を登り、一階に戻った俺達は、見覚えのない通路に出た。


 さっきまでいたフロアとは別の所に出たようだ。


 俺は足元を見る。


 特におかしな床はない。


 クレアが何気なく、通路の壁を触ろうとしたので、俺はストップをかけた。


「クレア、あまりペタペタ触らない方がいい。この塔は罠が仕掛けられている」


「あ、そうですね!」


 クレアは慌てて壁から離れた。


「足元に注意して進もう。何があるか判らない」


 全員頷き、ゆっくりと進む。


 どうやら一階にはモンスターはいないようで、その点は安心だな。


 しかし、油断は禁物。


 いくつかの分かれ道を進み、俺達は大きめのフロアに出た。


 その先に、上への階段を見つけたのだ。


「階段だ!」


 ステラは喜び、階段に近づく。


「ステラ、気をつけろよ?」


「大丈夫だってば。壁には触れてないし、床だっておかしな所は」


 ステラが話している瞬間に、前方から突然何かが降ってきた!


「なっ!」


「避けろステラ!!」


 ステラはステップを踏んで、華麗に躱す。


 今のがクレアあたりだったら危なかった。


 そして、降ってきたそれは。


「オークか!」


 体長は3メートル程。

 緑色をした筋肉の盛り上がるオークが三体いた。


「があ!!」


 オークには知能が高く、喋れる種族もいるが、こいつらは喋らないらしい。


 それぞれが持っている棍棒を振りかざし、こちらに突進してくる。


 ステラは震脚からの正拳突き。

 

 めきゃり、と嫌な音がして、オークを沈める。


 俺は棍棒ごと、オークを叩き切る。


 が、最後の一体、

 俺達にお構いなく、アティの方に走っていった。


 そういえば、オークって女性が大好きなんだっけか?


 オークは抱きつくようにアティにタックル。


 まともに食らえば、軽いアティなど、簡単に組み伏せられてしまうだろう。


 が、アティはこのタックルを横にズレて躱し、通り抜けていく横から耳に杖を一撃!


「があ!?」


 がらりと揺れ、止まったところに、顎、横っ腹、脛と連続で突きを入れ、なす術なく倒れたオークの喉に決めにいく。


 瞬時に倒してしまった。


「ひゅ〜。アティ、やっるー」


 ステラは惜しみない拍手を送る。


 魔法だけでなく、杖も自在に使いこなす。

 これがアティ。

 俺の相棒だ。


「楽勝!」


 差し出した俺の手にハイタッチ。


 お互いにやりと笑った。


「むー、むー!」


 クレアが悔しそうにして、対するアティは不敵な笑みを浮かべた。


「なーに、クレア。君にだって出番はあるさ。獲物を取られたからってそう悔しがるなよ」


 そう慰める時、クレアは面白くなさそうに頬を膨らませた。


「そうじゃありません!」


「お、おう?」


 何故怒る?


 これ以上の追求は許さんとばかりにクレアはそっぽを向いた。


 俺は慰めようとしたのに・・・。


「レオダス。大丈夫だよ。ちょっとづつ学習していこう」


 アトスがポンポンと俺の肩を叩く。


 またもアトスがそんな大人びた表情を。


 なんか、置いて行かれている気がする。


「それにしても、なんでこいつら上から降って来たんだ?」


 俺は天井を見上げると、パカっと割れている。

 あそこから落ちてきたのか。


「なんでタイミングよく、落ちてきたんだろう?」


 アトスは不思議がって、ステラがさっき通過した辺りを探す。


 床にも特に変わったスイッチは無い。


 壁も大きなフロアなので、触りようも・・・。


「ん? なんか壁に突起があるぞ」


 恐る恐る近づくも、なにかが起こるわけではない。


 しかし、よく見ると、光が埃を際立たせているような?


「お、おい。ここの突起物から光が出てるぞ!」


「「「え!?」」」


 全員が寄ってきて、突起物を見る。


「光が確かに出ています」


 クレアは手をサッ、サッと上下させると、確かに何かが。


「もしかして、この光に当たると、罠が作動する仕掛け?」


 ステラは顔を強張らせる。


 なんてこった。


 見えにくい糸とかなら分かるが、光に触れると作動する罠だと?


「恐ろしいな、虚偽の塔」

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