第100話攻略開始

 な、なんとか誤解が解けた。


 まったく、俺がステラに愛の告白だって?

 なんの冗談だそれは。


 今は、ステラがアティとクレアの二人にお説教中である。


 さて、


「アトス。なんだ、その、妙に大人っぽくなったな」


「あ、うん。なんか僕、悟った気がするよ」


 アトスは「はは」と乾いた笑いをしているが、体からは哀愁が漂い、悟ったというか、ある種の諦めを見て取れた。


 す、すまんアトス。

 お前がこんな風になってしまったのは俺のせいだぁ!!


「あー、その、と、とにかくだ! 虚偽の塔に“真実の鳥”があるかもしれない。どうだアトス、行ってみないか?」


「そうだね」


 アトスは顎に手を当てて、考えを巡らせているようだ。


「駄目か?」


 すぐに行こうと言うかと思ったのに。


「そこにある可能性はそれほど高くないんでしょ?」


「うーん、確かにその通りなんだよな」


 クロスには、あくまでも可能性がある程度だと、再三にわたり念を押されたからな。


 ここで「あるらしいぞ」とは言えない。


「いや、思ったんだ。可能性が低いんなら二手に分かれて、ここで情報を収集する人間もいたほうがいいんじゃないかって」


「なるほどな」


 確かにその手もある。


 俺に言われるだけじゃなく、ちゃんと考えているなアトス。


 俺はそれが妙に嬉しかった。


 だが、その方法は・・・。


「ちょっとお勧め出来ないな。虚偽の塔に出現するモンスターは強いらしいし、戦力の分散は避けたほうがいい」


「そうだよね」


「それに、虚偽の塔はこの都からそれほど遠くはないらしい。移動時間は数日程度。そんなにかからないと思うぞ?」


 アトスは俺を見て、コクリと頷く。

 よし、リーダーからのOKが出た。


「それじゃあ、さっそく塔攻略の準備だ。明日出るぞ!」


「「「「おーー」」」」



*********


 明朝、俺達は装備を確認し、道具をバックに詰めると出立した。


 塔までの道中は順調で、途中、一度だけモンスターと遭遇したが、別に強いわけではなく、行き詰まることもなく塔へと到着した。


「ここが虚偽の塔か」


 俺はポカンとその塔を見上げる。


 たっかいなぁ~。


 縦にまっすぐ伸びた塔は、所々に装飾が施され、幾何学模様を形成している。

 美しい建造物であり、この塔自体が一種の芸術作品であるかのようだ。


 ここからでは何階まであるのかは計り知れない。


 ざっと、15階かそこらではないかと辺りをつける。


 これ、天辺から外を見たら、さぞ見晴らしがいいだろうな。

 いや、ちょっと怖いくらいか?


 どれだけ昔からあるのだろうか。


 建設にどれほど時間がかかっただろう。


 特に古びれた感じも、損傷もしていないようだが。


「さて、皆、これから中に入る。準備に抜かりはないよな?」


「うん、大丈夫」

 アトス。


「任せてよ」

 アティ。


「問題ありません」

 クレア。


「あたしを誰だと思ってるのさ? 余裕余裕」

 ステラ。


「よし、それじゃあ行こう」


 全員で頷き合い、塔の入り口の扉を開く。


 ギィっと、重い音を立て、開かれたその中は広く、所々に別の部屋に続くドアがあり、天井はかなり高い。


 中に入った感じは、大きな宮殿とも言えるイメージだが。


「私、塔型のダンジョンて初めて来ました」


 クレアは物珍しそうに辺りを見回し、アティも当然初めてなので、面白いのかキョロキョロと見て回っている。


「モンスターはいない、みたいだな」


 俺は目を細め、辺りに気配がないかを探るが、近くにはそれらしい気配はない。


 このフロアにはいないのだろうか?

 だが、ここに出るモンスターは強いという話だ。

 警戒は怠らないようにしよう。


「それじゃあ、まずどこから回るか」


 正面を見ると、奥には左右に分かれた通路があり、それとは別に、すぐ左にドアがあり、別のフロアに行けそうだ。


「とりあえず、そこのドアから別の部屋に行こうか?」


 アトスがそう言うので、俺はそっとそのドアノブを握り、右に捻った。


 その瞬間、


 バカっと、床が抜けた。


「なぬ!?」


「レオダス!!」


 アトスが俺の手を握ろうとするが、一歩遅く、俺はそのまま下へと落ちて行った。

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