第94話報告

「「「襲われた!!」」」


 俺は皆と合流すると先程の件を話した。


 全員が皆一様に驚く。

 まあ当然か。


 アティとクレアは俺の傍に寄って来ると、どこか異常がないか確かめるべく、ギョロギョロと俺の観察し、服を引っ張ったりしている。


「大丈夫なの?」


「この通り、無傷だ。大丈夫だよ」


 二人はほっと胸を撫でおろした。


 ふぅ、心配させちゃったな。


 だが、俺が負けるなど、滅多にないだろう。


 俺にはキャリアバウンドのスキルがある。


 これはキャリアオーバーの進化系になるのだが、ハッキリ言って使い勝手が悪い。


 キャリアオーバーはレベルをプラス50にしてくれる恐るべきスキルだ。


 この世界ではレベル15もあれば十分強いと言われていて、20オーバーともなれば、何処へ行っても胸が張れる。

 25ともなると名前を言うだけで誰もが知っている。

 そんなレベルの話だ。


 もし、レベル30オーバーの人間がいるとしたら、それは英雄と呼ばれる存在なのだろう。


 俺のレベルは本来20。

 だから、キャリアオーバーのスキル補正があるのなら、俺はレベル70となる。


 英雄レベルを余裕で倍以上になってしまった。

 正に規格外の能力だ。


 が、この進化系であるキャリアバウンドは、俺が任意でレベルを下げることで、その反動でプラスレベル50を超えるプラス補正を手に入れることが出来る。


 俺は以前、一時的にレベル93となり、超人的な力を手に入れた。


 だが、これには大きな代償を伴った。


 反動としてレベルが1まで下がってしまったのだ。


 おまけにしばらく激痛が襲った。


 本来のレベル20までは一晩で戻ったが、キャリアオーバーの時にあったレベル補正プラス50はすぐには回復しなかった。


 現在、補正レベルはプラス8。


 一時的に得ていた全能感は失われた。


 だがだ。


 それでも実質俺はレベル28なのだ。


 英雄に一歩足が届く位置にいる強者。


 勿論、レベルが全てではない。


 仮にだが、俺を超えるレベルの人間がいたとして、そいつが戦闘技術を全く持っていない相手であるならば、俺は負けないだろう。


 まあそんなわけで、数が五人いようが、チンピラ程度には後れは取らないわけだ。


 セリシオ。


 お前はまだ俺の力を侮っているよ。


 本気で俺を殺そうとしたのか、あるいは、脅しの意味があったのか。


 前者ならお生憎様だ。


 後者なら完全に逆効果だ。

 元々やる気だった俺の心に火をつけた。


「皆には刺客は襲って来なかったみたいだな?」


 全員コクリと頷く。


 まずは一安心。


 どうやら奴は俺にまだご執心のようだ。

 俺を一番の障害だと思っているらしい。

 ありがたいことだ。


「だが、失敗したとなると、今度は皆の所に刺客を送り付けるかもしれない。不効率ではあるが、明日からは一緒に行動したほうがいいだろう」


「そうだね」


 アトスは俺に賛成する。


 続けて皆頷いた。


「さて、俺の報告は以上なんだが、皆はどうだ? “真実の鳥”について、何か手掛かりは掴めたか?」


 暗い顔をして、全員が首を横に振る。


「あたし、ここの冒険者ギルドに行ってみたけど、それらしいクエストはなかったよ」


 ステラがそう補足報告した。


「・・・そうか。まあ、気にしないでおこう。そう簡単に情報があつまるとは思っていないだろ?」


 聞き込みを開始して経った一日。


 そうそう上手くいくとは思っていない。


 だが、このままというわけにはいかないよな。


*********


 俺は彼女の部屋の前に立った。


 考えたのだが、真っ当なやり方では、曖昧な存在である“真実の鳥”は見つけられないのではないかと思えてきたのだ。


 だとするならば、裏道を使うしかない。


 俺一人でもいいのだが、これから行く所はちょっと一筋縄ではいかない場所だ。


 となると、同行者が必要。


 考えた結果。

 俺は彼女に頼もうかと決めた。


 コンコンとノックする。


「はいはーい」


 返事がして、ドアが開と、中からステラが出て来た。


「あれ、レオダスじゃん。どうしたの?」


「ああ、ちょっと話があって。今いいか?」


「ん? まあどうぞ」


 ステラはコテっと首を傾げるも、特に何も考えることなく、俺を部屋の中へと招いた。


「ほいで? 何の用だの? もしかして、夜這い~?」


 思ってもいないだろうに、ステラは「きしし」と笑う。

 まったく、こいつは。


「ステラ、頼みがある」


「ん。何? このステラさんに何をお望みなわけ?」


「俺と付き合ってくれ、ステラ」

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