第76話異世界からの来訪者16
「お前は銀色を相手にしろ。他のは俺がやる」
スティーグは俺がやろうとしていた、悪魔の輪の中へ突撃すべく走った。
その速度、正しく電光石火。
飛び込む勢いそのままに、一撃でレッサーデーモンを仕留める。
「あいつなら一人でも」
スティーグはレッサーデーモン入り乱れる中心に自ら飛び込み、悪魔を翻弄する。
あいつらに連携など取れない。
スティーグ目掛けて襲い掛かるが、あいつはひらりひらりと躱し、同士討ちを誘っている。
縦横無尽に動き回り、上手く誘導しては、針に穴をさすように、わずかな隙間をかいくぐり、中心からボロボロに悪魔共を崩しにかかる。
あいつ、一対一の戦いだけじゃなく、複数人との戦闘も出来るのか。
これなら、レッサーデーモンは任せて大丈夫だ。
俺達五人はアークデーモン残り四体を相手にしなければ。
「俺が二体を引き受ける。皆は残り二体を頼む」
「「「了解!」」」
この分担は正解だと思いたいが、どっちも厳しい。
俺が三体を相手にしようかとも考えたが、流石に無理と思う。
そして、それは正しい。
二体を相手をして、俺は持ちこたえるので精いっぱいだ。
「くそ、連携とまでは言わないまでも、同士討ちはしないな」
スティーグのように上手く誘えればよかったのだが、こいつら相手には難しい。
四人を見るが、あっちもあっちで苦戦している。
ここは、負傷を覚悟して、
「うおおおおおお!!」
一体に斬りかかる。
アークデーモンは鋭い爪で、ドラゴンスラッシュをガード。
そして、横からもう一体が俺に突進する。
「ぜあ!!」
横から迫るアークデーモンを無視し、俺は斬りあっているアークデーモンに集中。
高速での斬り合いの末に、斬り捨てる。
だが、結果もう一体に対しては無防備だ。
なんとか身を捻るも、タックルを食らい、独楽のようにぐるぐる回りながら吹き飛んだ。
「ぐは!」
「やばい、レオダスが!」
ステラが焦りの声を上げる。
残りの三人も目を見開いた。
「“セイクリットレイ”!」
「“エアボール”!」
「“セイクリットストライク”!」
三人の魔法で、アークデーモンは一度距離を取った。
俺達五人も、一度集合する。
「レオダス、傷を」
「ああ、大したことはない」
クレアが心配し、俺に回復魔法をかける。
残り三体。
なんとかいけるか。
すると、悪魔三体は、叫び声を上げて、手を頭上に掲げると、黒い球体が出現。
どんどん膨らんでいく。
「闇魔法!」
「不味いです。三体揃ったら途轍もない威力に」
クレアが悲鳴を上げた。
これはやばい。
回復を待っていられない。
俺は体に鞭打って、三体に飛びかかろうとした。
「もしかして、苦戦してるか?」
またも間の抜けた声と共に、スティーグが顔を出した。
「あ、あんた。レッサーデーモンは」
「終わった」
見ればレッサーデーモンの姿はどこにもない。
全て倒され塵となったようだ。
「で、不味い状況だな」
三体共同の闇魔法を見て、さしものスティーグも目を細める。
「しょーがねーなー、本気出すか。面倒だけど」
今まで出してなかったのか。
そうツッコミを入れようとしたが、出来なかった。
視覚出来るほどの生命エネルギーがスティーグから噴射したのだ。
衝撃で俺達はスティーグから離れた。
そして、その生命エネルギーは、右手へ流れ、そのまま剣へと収束。
剣に全てのエネルギーが注ぎ込まれると、混じり合い。
極光を放った!
「なあっ!!」
眩しい。
なんて眩い光だ。
「丁度三体か。おい、レオダス、アトス。剣を出せ」
説明している時間はないとばかりに、語気を強めて端的に命じたスティーグに従い、俺とアトスは剣をスティーグに向けて突き出した。
そして、スティーグの剣を俺達二人の中央で重なり合わせると、なんと俺達二人の剣も光を放つ。
「こ、これは!」
「凄い、なんて力!」
驚く俺達を気にも留めず、スティーグは構えた。
「これでお前らも斬撃を飛ばせる。相手は三体だ。一人一体づついくぞ」
「分かった!」
「了解!」
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