第75話異世界からの来訪者15
この作戦。
最初から、コッソリと行動して、全ての悪魔共を静かに倒せるとは思っていない。
必ずどこかで見つかる。
その場合のことも想定して動かなくてはいけなかった。
大人数で行動できないという理由もあったが、アティとクレアには、村から離れた、この地点で待機してもらっていた。
俺達がここに戻ってくるのは十中八九、悪魔に見つかって追いかけられている時。
だから、すぐにでも魔法が撃てるように魔力を練り上げていたのだ。
作戦は最初から二段構え。
ここまでは上手くいったようだ。
「“ファイアボール”! “グラウンドショック”!」
アティの二重魔法が炸裂。
前方のレッサーデーモンを吹き飛ばした。
よし、ここでやるぞ。
俺は気合を入れなおしたが、そうそう上手くはいかない。
「アークデーモンか!」
後ろで構えていればいいものを、アークデーモンが二体こちらに走ってくる。
「アトス。クレア、そっちを頼むぞ!」
「うん」
「分かりました」
「ステラ、出来るだけレッサーデーモンを引き付けてくれ。アティ、ステラのフォローを頼む」
「うぇ~、これはしんどいな」
「ぼやかないでステラ、レオダス了解よ」
よし、それじゃあ、俺はもう一体のアークデーモンの相手をする。
俺達と悪魔の戦いが始まった。
俺はアークデーモンと一対一の戦いだ。
だが、以前と違うのは、俺が怪我を負っていない点。
これならば、余裕とまでは言わないが、十分に対応可能だ。
そして、これはアトスにも言える。
前回はセリシオに不意打ちの一発を食らってしまったが、あいつの邪魔が入らなければ、アークデーモンは退治出来ていた筈なのだ。
アトス一人では無理でも、クレアと組めば、耐えることは出来る。
その間に俺がこいつを倒せれば。
「GAAA!」
鋭い爪を振り回し、アークデーモンが吠える。
俺はそれを丁寧に捌き、徐々に押していく。
よし、このまま、
「GAA」
太い尻尾を鞭のように伸ばしてきた。
くっ、焦るな俺。
ステップして回避。
一度距離を取り、魔法を唱える。
「“ファイアバレット”」
撃ちだした魔法が、アークデーモンを焼く。
流石上位悪魔。
食らっても五体満足に健在。
だが、隙は十分。
俺は素早く間合いに入り、一刀両断にした。
よし、まずは一体。
「うあああ!」
「アトス!」
なんとか踏ん張っていたようだが、怪我をしたらしい。
血を流しながら必死で攻撃に耐えている。
「クレア、そいつは任せてくれ。アトスの回復を!」
「は、はい!!」
後ろから攻撃しても卑怯とか言うなよ!
アトスに攻撃を続けているアークデーモンを背後から一撃。
これで二体目。
「アトスさん!」
「だい、じょうぶ」
「動かないで、傷は深いです」
不味い、しばらく二人は動けない。
そこにきて、ステラとアティも押され始めている。
「やばいやばいやばい!」
「しっかりステラ! “ファイアボール”!」
レッサーデーモンに囲まれているステラを、必死にアティがフォローする。
だが、数が多い。
二人で相手をするのは無理があるか。
その上だ。
「こ、ここでアークデーモンは無理!」
ズウンと、音を立てて、アークデーモンが囲んでいる輪の中に飛び込んできた。
ステラは青ざめ、アティも恐怖で顔を引きつらせる。
「くっ!」
こうなりゃヤケだ。
あの輪の中に突撃してやる!
その時だ。
「よお、頑張ってるな」
間の抜けた声がした。
「スティーグ!!」
こんな時だというのに、緊張感皆無。
相変わらずどこまで本気なのか分からない男が、この時ばかりは頼もしく見えた。
「結局周りには悪魔はいなかったぞ」
「一々報告しなくていい!」
そんな暇はないのだ。
俺は悪魔の中に突撃すべく、前かがみになった。
「まあ、慌てるな。ここからは手を貸そう」
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