第74話異世界からの来訪者14
「さて、どう攻めるか」
レッサーデーモンが30にアークデーモンが6。
この数字でどう攻める?
「いいかな?」
アトスが口を開く。
「何かいい案があるかアトス?」
「とにかく分散させることがカギと思うんだ。ゲリラ戦をするのはどう?」
「なるほどな」
数が多ければ、まとめて相手にしなければいい。
ダンジョンでの戦いが多かったから広いフィールドでの利点を忘れていた。
だが、ゲリラ戦なら夜戦がいいんだけど、夜はあいつらが活性化するし、あの爛々と輝く目、夜目が効きそうだ。
では、この場合はどうすべきか?
バトルフィールドが村であることを有効利用し、家などの遮蔽物を使い、一体づつ倒していくのがベターだろう。
「ちょっといい?」
「なんだステラ」
ステラがちょんと手を挙げた。
「あいつら声がめちゃくちゃ大きいでしょ。一体に気づかれたら、全部お終いだよ」
「そっか・・・」
いい案だと思ったんだろう。
アトスが肩を落とす。
「確かにステラの意見は最もだ。じゃあ、もっと上手い手はあるか?」
尋ねるとステラは「うーん」と唸るも、いいアイディアは浮かばないようだ。
「やれるだけやってみてはどうでしょうか? 見つかったら逃げるという感じで」
そう、クレアが提案した。
ふむ、いずれはバレるとしても、出来るだけ減らしていく作戦か。
「逃げながら戦うって手もあるな。長い列になってくれればしめたものだ」
それなら、先頭から倒していくことも出来る。
「どうだアトス?」
尋ねると、アトスは頷く。
「それでいこう」
*********
俺のドラゴンスラッシュが閃いた。
ザシュっと音がして、レッサーデーモンが倒れる。
ステラが如才なく、倒したレッサーデーモンをそっと物陰に隠した。
既にこの調子で5体倒している。
いいペースだ。
この調子ならこのままいけるかもしれない。
しかし、村を徘徊しているレッサーデーモンの一体と遭遇してしまった。
アトスが走る!
抜かれた聖剣がレッサーデーモンの首めがけて放たれた。
見事叩き込み、レッサーデーモンは崩れ落ちる。
ふう、今のは危なかった。
アトスに親指を立てて賞賛すると、転がっている悪魔を再び物陰に。
俺達はデーモンがあまり固まっていない所に移動した。
一体だけうろついて来た奴を狙って確実に仕留める。
「魔法を使えれば早いんだけど」
アトスがそう言うが、俺は手でバッテンを作る。
魔法は強いが、派手だ。
ここは静かに。
アサシンの如く事を進めるのだ。
その為の主力は俺とアトス。
俺の高いレベルと、アトスの聖剣があれば、レッサーデーモンなら問題ない。
次にやって来るレッサーデーモンを、今か今かと待っていると、
「GG!!」
いきなり悪魔が吠えた!
「なっ、どうしたんだ!?」
ぎょっとした。
何があったんだ!?
ステラが慌てて確認から戻ってくる。
「ヤバいよ! やっつけたレッサーデーモンが他の奴に見つかった!」
「くそ、そういうことか!」
家の中や物陰に隠しておいたが、とうとう見つかった。
奴らに仲間意識があるのか分からないが、何かが起きていて、それを周りに知らせるくらいはするらしい。
俺達は身を咄嗟に隠した。
まだ見つかったわけじゃない。
悪魔の亡骸が発見されただけなのだ。
「よし、ここは一旦離脱しよう」
「うん」
「意義なし」
アトスとステラは俺に同意して頷く。
俺達はゆっくりと移動する。
が、
出会い頭にレッサーデーモンと鉢合わせした。
「やばっ!」
「GAAAA!」
悪魔が叫ぶ。
もうゆっくり移動する意味はない。
俺達は全速力で走った。
悪魔は家の中から、通りから、ぞろぞろと出てくる。
俺達を認めると、同様に叫び、追いかけてきた。
「怖いーーーー!!」
ステラは泣きそうだ。
確かに、大勢の悪魔から追われる絵など、恐ろしすぎる。
子供が見たら絶対泣くだろう。
村を飛び出し、そのまま走り続ける。
これで、追ってこなければいいんだが、そうはいかなかった。
奴らも村を出て、追撃して来る。
やはり悪魔。
俺は別にして、身体能力は常人よりも遥かに上。
このままでは追い付かれる。
だが、もう少し。もう少しだ。
俺は二人を抱え走る。
「わっ」
「ちょ、ちょっとー!」
まあ、アトスはともかく、女の子のステラにはちょっと気まずいが、そんなことはこの際些末だ。
俺が抱えた方が早い。
そして、そこに到着した。
「アティ! クレア! 頼む!」
「“エアボール”」
「“セイクリットストライク”」
二人の魔法が、悪魔共に直撃した。
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