第73話異世界からの来訪者13
賢者サイド
私は一人ほくそ笑みました。
「レオダス。今頃どうしているんでしょうかね?」
私はとある名もない村に立ち寄り、その村の住人全てを悪魔の生贄にしました。
全てはレオダスを仕留める為です。
あそこに悪魔を配置すれば、レオダス達は無視することが出来ない。
あのお人よし共は、無視すればよいことが出来ない愚か者の集まりですからね。
そして、あそこに召還した悪魔共は奴らの手に余る。
以前はアークデーモン一体に手こずったのです。
それがレッサーデーモンを加えてあれだけの数を配置すれば、奴らにはどうしようもない。
おかげで触媒全てを消費しましたが、仕方ないでしょう。
奴らを殺す為ならば。
死地に自分達から飛び込む羽目になるということです。
なんと愚かな馬鹿共でしょう。
奴の死に様をとっくりと見たいところですが、この間の例もあります。
万が一、奴が私を狙ってくるとも限りません。
ここは距離を取っておいた方がいいでしょう。
なに、後から死体を見られれば良いのです。
「それにしても、くっく」
あの逃げ惑う村人達の顔。
滑稽でしたね。
どうやら私は天才というだけではなく、猟犬としての才能まであるようです。
なんと多才なのでしょう。
やはり天才は生まれるべくして生まれてくるのですね。
そんな愉悦に浸っていると、
「よお」
「っつ!」
いきなり声がした。
だ、誰だ!?
どこだ?
私は辺りを見渡した。
いない?
しかし、天才的な私の注意力は足元の影に注目しました。
まさか、上!
私が上を見上げると、そこには一人の男がいた。
「だ、誰だ貴様は!」
空を飛ぶ魔法?
知らない、そんな魔法を私は知らない。
男は地面に降り立つと、じっと私を観察しました。
不愉快です。
この私を不躾に見るなど。
「お前がレオダス達の敵か?」
「な、何故、奴の名が、貴様あいつらの仲間か!」
「ま、今回限りの臨時だがね」
「ど、どうしてここが?」
距離は十分取っていました。
分かるはずがない。
「お前が悪魔を呼んだ以上、お前と悪魔には魔力のパスが繋がっている。それを追って来た」
「馬鹿な! そんな微細な魔力を探知したというのですか?」
「魔力探知は得意なんだ。そこに魔力の繋がりがあるならば、数百キロ先まで追って見せよう」
ハッタリもここまでくると滑稽ですね。
魔力の流れなど、掴めたとしても数百メートルが限度。
単位が間違っていますよ?
「・・・私を、殺しに来たのですか?」
「いや」
私が警戒すると、男は意外にも首を横に振ります。
「それはあいつらの仕事だ。俺はあいつらの敵をちょっと見に来ただけなんだが、なんだ、全く大したことないじゃあないか」
「な、なんだと!!」
私は魔力を右手に集めました。
この得体のしれない男は危険だ。
天才である私の本能が告げている。
「“ファイアーボール”」
私の必殺の魔法が男に向かって放たれた。
決まった。
もう避けられない。
すると、男は剣を抜き、私の魔法を一刀両断にした。
「なっ!?」
ば、馬鹿な。
炎を斬った?
なんだあの凄まじい力を持った剣は!!
「ふむ、魔法の構成、制御は及第点。だが、ソロであることを全く意識していない立ち回りは素人同然。合わせて二流か」
「なっ、なんですって、この天才大賢者である私が二流!!」
「いや、その意味不明な性格を考えれば三流か」
「黙りなさい!」
今度は別の魔法を作る。
「“ストーンバレット”」
石弾が奴に飛んだ。
どうです?
「うざい」
今度は、軽々と手で弾く。
そんな馬鹿な!
魔法を素手で弾くなど。
女子供の柔肌なら貫通する威力ですよ!
「さて」
「ひっ!」
な、なにをするつもりですこの男。
危害を加えるつもりですか、この私に。
男が動いた。
そう認識した次の瞬間、男は既に目の前にいたのです。
「な」
男は親指で人差し指を押さえる形で折り曲げ、弾いた。
「ふべぇ!!」
不覚にも、私ともあろう者が、情けない声を上げ、後ろに吹き飛んだ。
驚きと共に、額に痛みが襲う。
い、今のはまさか、デコピン!
わ、私はデコピンされて吹き飛んだと言うのですか!?
私は起き上がれずに、男を見上げることしか出来ませんでした。
殺される!
私はこの男に殺されてしまう!
が、そんな考えとは裏腹に、男は再び宙を舞う。
「精々奴らが成長するための糧になれ、道化」
そう言うと、男は再び飛んで行ってしまいました。
「な、なんなのですかあの男は・・・」
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