第72話異世界からの来訪者12

「あれがその村か」


 スティーグはやる気のない声で村を観察した。


 スティーグと和解(?)した俺は、スティーグにパーティーに留まってほしいと頼み、一緒に行動することと相成ったわけだが、相変わらずやる気なさそうだな。


「あんた。付いてくるんだから役に立ちなさいよね!」


「ああ、立つ立つ。きっと多分おそらく」


 アティの顔にどでかい青筋が浮き上がる。


「レオダス。やっぱりこいつ追放しよう! マジむかつく!!」


「まあまあ」


 つまらない嫉妬から追放を言い渡した俺としては、罪悪感が沸き、アティを宥める。


 アトスとクレアは微笑ましく笑っている。


 すると、斥候のステラが戻って来た。


 息を切らして戻って来たステラはグイっと汗をぬぐう。


「やっぱりアークデーモンは6体のまま、レッサーデーモンは30体くらいになってる」


 さっき戦ったレッサーデーモンは、やはりこの村から出てきたのか。


 だが、残りが30体ということはあの時倒した10体分減ったとみていいだろう。


 結果として分散したところを撃破出来て良かった。


「ふーん。あの銀色のがアークデーモンか」


 スティーグがぽつりとそんなことを言う。


「え、あんたここから見えるのか!?」


 俺には村の全体像が小さく見えるだけなんだが。


「なんだか、うろうろしているだけで何かしようとはしていないな。さっきのレッサーデーモンとやらも、この近辺にいたし。何かの魔法でくくられているのかもな」


 確かに、ずっとあの村に留まるのは不自然。


 さっきみたいにバラけられたら面倒になるが、ずっと一所に留まっていられると、それはそれでまとめて戦わざるを得ない。


「セリシオめ。悪魔がバラけないように指示を出したのか・・・」


 ふいっと、スティーグが俺を見た。


「そいつが悪魔を召還した奴なのか?」


「そうだ」


 俺は頷く。


「どんな奴だ?」


「とんでもない奴よ!」


 アティが会話に飛び込んできた。


「あいつはね。レオダスを追放して、散々周りに迷惑をかけた挙句、悪魔を召還して、城の牢屋を脱獄したのよ!!」


「ふーん」


 自分で聞いたにも関わらず、どうでもよさそうにスティーグは相槌を打った。


「そうだスティーグ。目がいいならセリシオがいないか分からないか!」


 俺は名案と思い、尋ねてみた。


「うーん」


 スティーグが首を回す。


「・・・そもそも人間の姿が見えないな。家の中にいるか、あるいはもうあの村にはいないんじゃないか?」


「・・・そう、か」


 あの村にいない可能性もある、か。


 奴め、いったい何処に?


「スティーグ。頼みがある」


「なんだ?」


「村の周りを調べてくれないか? セリシオがいるかもしれないし、また周囲に散らばった悪魔がいるかもしれない」


 スティーグは頷く。


「なるほど。確かに、俺がお前達の完成した連携に加わるよりも、そっちの方が良さそうだな」


「仮に、悪魔と遭遇しても、あんたなら単独で戦えるだろう? もし、難しくても撤退は出来るはずだ」


「そうだな。無理そうなら速攻で撤退する」


 そっちの方に重きを置いている気がしないでもないが、こいつ、自分が強いと認識した上で、『俺は強いから負けない』とは考えないんだな。


 むしろ、勝てないと思ったら、見切りをつけて即座に撤退するというスタイルなのか。


「なら頼む。俺達はその間。あの村を攻略する」


「そうだな、役割分担を決めておくのはいいことだ」


 俺は皆を見た。


「アトス、その作戦で構わないか?」


「うん。いいと思う」


 俺はリーダーのアトスに確認を取り、皆を見渡した。


「よし、やるぞ」


 俺達は作戦を開始した。


*********


「さて」


 スティーグはぐるりと、肩を回し、レオダス達を見送った。


 ヴォン、と。


 スティーグの周りで大気が動く。


 彼は風魔法が最も得意だ。


 この世界では、スティーグはうまく魔力の制御が出来ないが、得意な風ならば、なんとか使えそうだ。


 スティーグはふわりと宙に舞い、ビュンと空を飛んだ。


 ドンドン加速し、その速度は音速に迫る。


 そして、魔力の波動を辿り、その人物を見つけたのだ。


「よお」


「だ、誰だ! 貴様は!!」


「お前がセリシオか?」

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