第60話エピローグ
悪夢の一夜は明け、城の混乱はやっと収まった。
何体もいたレッサーデーモンは、アトスらによって全て倒されたとのこと。
収まったとはいえ、何人かの人間がレッサーデモーンの牙にかかってしまったという。
そのレッサーデーモンも人間から受肉したものだ。
死んでしまった人間は生き返らないが、埋葬は出来る。
だけど、レッサーデーモンの器となった人間はそれすら出来ないのだ。
たらればを言っても仕方がない。
だけど、あれだけの力があれば、もっと多くの人が救えたのでは?
そう思わずにはいられなかった。
身体の痛みは引いて、レベルは20に戻ったが、“キャリアバウンド”のレベル補正はプラス5。
時間経過で回復すると思うが、プラス50には一気に戻ってくれないらしい。
それでも、実質レベル25だ。
十分強いと言えるが。
「皆、昨日は本当によくやってくれた」
謁見の間にて、王様はそう言って頭を下げた。
王様が頭を下げるなど、まずあり得ないことだ。
皆一様に驚いたが、それだけ大変な事態を収めたのだと、改めて実感した。
「皆がいなければ、被害はより大きくなっていただろう。本当に感謝している」
「いいんです王様。それが僕の、僕らの使命ですから」
アトスがそう言うと、俺達は頷く。
アトス、本当に立派になったな。
王様はアトスを見て笑った後、苦い顔をした。
「それにしても、セリシオ。奴があれ程、自分のことしか考えない身勝手な人間だったとはな。人を見る目はあったつもりなのだが、俺もまだまだだ。あの時、首を跳ねていればこんなことにはならなかっただろうに」
「そんな、お父様は悪くないわ。あんなイカレた奴の考えなんて誰も読めないもの!」
アティがフォローをすると、王様は薄く笑い、アティに感謝を示した。
「そうだな。後悔も反省も後でいくらでも出来る。今は奴を探し出すことが先決だ」
「その後、アイツの行方は?」
俺が尋ねると、王様は首を横に振る。
「未だ見つかっていない。国中に指名手配を出すつもりだが、全てに行き渡るには時間がかかるだろう」
「そう、ですか」
おそらく、この王都には既にいないだろう。
このままでは国境を越えられるかもしれない。
俺が暗い顔をしていると、王様は俺を見た。
「レオダス。お前の懸念は分かるが、それは俺が考えること。お前まで気にする必要はない」
「・・・はい」
「それに、当然、皆に感謝するが、お前には特にしなくては。あのアークデーモンを倒してくれて感謝の念が絶えん」
「いえ」
「アティから聞いていたが、“キャリアオーバー”か。いや、“キャリアバウンド”に更に進化したのだったな?」
「自分でも驚いています」
こんなチートなスキル。
前代未聞だ。
それが俺の中に宿るとは。
(やはり、アルデロイの血統か)
「はい?」
ボソっと言ったから聞き取れなかったぞ?
「いや、いい。それよりも、もう出立するのか?」
そう。
俺達は既に荷物をまとめて、出立するつもりだ。
「そう急がずともよかろう?」
俺は「いいえ」と言ってパーティーを見る。
「俺が抜けてから全くダンジョン攻略が進展していないようです。流石にこれ以上の停滞は不味い」
俺達は世界を救わなければならない。
いつまでも足踏みはしていられない。
「それに、旅の最中、セリシオの手掛かりがつかめるかもしれません」
「ふぅ。あい分かった。気を付けて行け」
「「「はい」」」
俺達は返事をし、俺はアティを見た。
「アティ、本当に一緒に行くのか? ここにしばらく居てもいいんだぞ?」
俺達と違ってアティは王女だ。
未だ混乱しているこの都を離れていいもんか?
「お父様はともかく、私には特にやることはないもの。一緒にいくわ」
「いいんだな?」
俺が念を押すとアティは頷く。
「相棒でしょ!」
「そうだな」
是非もないだろう。
俺達は王都を出て、この間までいた町に戻ることにした。
*********
私は暗い地下に潜り、再起を図ろうとしていた。
貴族である私がこのように泥に塗れるなど、誰が想像したでしょうか?
「レオダス。絶対に許せません。必ずこの手で息の根を止めてやる」
そう固く誓い、レオダスに折られた腕を治すべく闇回復術師の元へと歩く。
「それにしても、奴のあの力は一体?」
レベル19のレオダスでは考えられない身体能力と魔力だ。
身体が震える。
馬鹿な! この天才の私が。
「必ず、奴を超える力を手に入れてやる。私は大賢者なのですから」
そう、暗い笑みを浮かべ、私は国を出る算段を練る。
*********
「ステラ! 前をかき回せ! ただし深追いはするなよ」
「了解!」
「俺がリザードキングを押さえる。アトスは抜けるかもしれないリザードマンに備えて待機。聖剣の大技よりも周りに気を配れ!」
「うん」
「クレアは待機。回復は俺の指示に従ってくれ」
「はい!」
俺達は例のダンジョン最深部まで迫っていた。
初めはステラとの調整を慎重に取り組み、なんとか五人の連携を組み立てた。
やはり、彼女は一流だ。
飲み込みも早く、すぐに連携に馴染んでいった。
そして、ダンジョンボスであるリザードキング率いるモンスターと相対している。
リザードキングは凶悪であるが、俺ならば押さえられる。
リザードマンは15匹。
数は多いが、ここまでやって来た俺達なら問題はない。
俺は巧みに敵を誘導し、上手く一塊になったところで、
「撃て! アティ!!」
「“ファイアボール”! “エアブレイド”!」
連続で放たれるアティの魔法が、リザードキングを含めたモンスターを一網打尽に吹き飛ばした。
「よし、やったなアティ」
「イェーイ!」
俺とアティはハイタッチする。
やはり、俺とアティの呼吸はぴったりだ。
これを見て、クレアが何故か「むー」っと唸る。
「は、離れましょう離れましょう」
ずいずいっと俺達の中間に入り、腕を開く。
「あによー。“パートナー”との絆を確かめ合ってるのよ」
「今は“パーティー”なんですから皆でです!」
「そうっすね。いや、ハマリますねレオダスさんの策は。改めてリスペクトしますよ」
「そうだね。それじゃあ」
そう言ってアトスは手を掲げ、パーーン! と、俺達はハイタッチした。
そして、ダンジョン奥の宝箱に目を向ける。
「ここに、魔王を倒す為の貴重なアイテムがあるって話だったな?」
「そうらしい」
俺はアトスに確認する。
胸がわくわくする。
冒険は楽しい。
無論、楽しいだけじゃなく、辛いこと、悲しいこともあるが、それでもこの胸のわくわくは止められない。
未知に挑戦する高揚感。
勇者とか世界とか、それとは別に、俺はこの五人で旅するのが楽しいんだ。
さあ、この宝箱には何が眠っている?
「それじゃあ、開けるぞ」
俺は宝箱に手を伸ばした。
ーーーーーーーーーーーーーー
ご愛読ありがとうございました。
まだ話は続きますが、この物語は一度お終いです。
さて、わたしは小説家になろうのほうでも執筆しています。
最強教師は最低のクズ野郎~俺を教師に誘うなら、生徒は美少女限定にするけど、いいんだよな〜
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などなど
こちらも読んで下されば幸いです。
さく・らうめ
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