第51話邂逅

「セリシオを、追放する?」


 アトスはステラに問い返した。


 ステラはどうってことなさそうに言った。


「足手まといっていうか、あっちの方がよっぽど害悪ですよ。頭固くてこっちの意見は聞かないし、前衛を気にせずに後ろからバンバン撃ってきてモンスターに全然集中できないし、自己中だし」


「そうだね」


「そうだねって、おいアトス?」


 お前がそんなこと言っちゃっていいのか?


「実はステラに誘われて、本当にレオダスを見つけられたら、そうしようかと思っていたんだ」


「アトスさん・・・」


 反対するとばかり思っていたクレアだが、悲しそうな顔をしながらも肯定の意を示した。


「百歩譲って、レオダスを追放しようとしたのは理解できる。許せないけど、レオダスのレベルが上がらないのは、僕も辛かった」


「アトス・・・」


『辛かった』か。


 俺が悩んでいたように、アトスも、恐らくクレアも悩んでいてくれたんだな。


「だけど、あいつは僕になんの相談もなくレオダスを追放した。そればかりか死んだと言って僕らを騙した。そんな奴に背中を任せてはいられない」


「アトス、お前」


 しばらく見ない内に、成長しやがって。


「いいのか? それでいいのか? クレア?」


 アトスの意見は分かったが、クレアはどうなんだ?


「私も、同じ気持ちです。彼は嘘をついたばかりか、レオダスの事を散々馬鹿にしました。怒っています」


 マジか。


 クレアって怒ることあるんだ。


「筋肉だるまもね、レオダスさんのこと嫌ってましたよ。自分が如何にレオダスさんに護られていたのかも解っておらず、平然と悪いと感じている部分をあげつらい、どうしようもないっすよ」


「はぁ」と、ステラはため息をついた。


 筋肉だるまってアルトスのことか?


「で、どうします? 二人が抜けるんだったら、あたしはまた加わってもいいですよ? 新生勇者パーティーってことで」


 そう言って「きしし」と笑った。


「新生、勇者パーティー・・・」


 いいのか?


 本当に俺は戻っても、いいのか?


「・・・レオダス」


 その時、アティが酷く不安そうな顔で俺を見た。


「・・・あ・・・」


 思い出す。


 短いながら、アティと冒険した思い出を。


 俺がここで戻ったら、彼女はどうなる?


 また、王宮に戻るのか?


 本当はそれが当たり前なんだ。


 それが正しいあり方なんだ。


 だが、だが俺は。


「・・・悪い。俺はもう冒険者として生きる。お前達と一緒には行けない」


「レオダス・・・」


「そんな、レオダス」


「あちゃー、ダメっすか」


 三者三様に失意の様子を見せた。


「レオダス!」


 逆にアティは嬉しそうに俺に抱き着く。


 クレアはとても切なそうにそれを見つめた。


 俺はそっとアティを離し、三人に告げた。


「まあ、だが、俺達は冒険者だ。依頼があればそれを受けよう」


「「「え?」」」


「だから、依頼を出せ。ダンジョン攻略に加勢が必要なら雇われてやる。冒険者はなんだってやるんだからな」


「いいの?」


「レオダス!」


「ははっ! そうでした。それが冒険者でした」


 今度は三人が嬉しそうな顔をした。


「そんな運びとなるが、どうだアティ。冒険者としてなら俺達も加わっていいんじゃないか?」


「あ、あたしも!?」


 アティは驚くが、そんなのは当たり前だ。

 何故なら、


「俺が行くならお前も行くに決まっているだろう? 頼りにしてるぜ相棒」


「・・・あ」


 俺が手をかざすと、アティは震える手を強く握り、もう一度開くと俺とハイタッチした!


「当たり前でしょう!!」


「むーー!」


 俺達が絆を確かめ合うと、何故かクレアが怒って俺達を引き離した。


「は、離れましょう! 同じパーティーになるなら、ふ、風紀は大事です」


「なーにが風紀よ。さっきは自分だって抱き着いたじゃない!」


「あ、あれは感極まって・・・」


「理由があれば許されるってわけじゃないわ。だったらあたしも感極まったのよ!」


「うーーー」

「いーーー」


 なんなんだ一体?


 何故か喧嘩を勃発させた二人を止めようとした、その時だ。


「勇者様!!」


 聞きたくない声が聞こえた。


 振り返るとそこには、


「・・・レオダス、貴様!」


「・・・セリシオ」

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