第41話賢者サイド 最悪の事態に
賢者サイド。
クレア達が消えた日の明朝。
軽めに睡眠をとった私とアルトスは、二人が帰っているかと部屋を訪れたが、やはりというべきか、帰ってはいなかった。
「やっぱりいねえ。一体何処へ行ったんだ?」
アルトスは鼻息を吹き、腕を組んだ。
私は爪を噛む。
あの二人、一体何を考えているのです?
何処かへ行くのであれば、私に一言告げるのが正しい対応でしょうに。
本当に一体何処へ?
「まさか、二人であの攻略中のダンジョンに行ったんじゃねーだろうな?」
「あり得ませんね」
アルトスの浅慮な考えを私は一蹴した。
この猿が。
アトスはともかく、クレアがそんな短絡的な考えをするわけがないでしょうに。
この場合、二人は一緒に行動していると考えるのが自然。
クレアがついていればアトスの無茶な行動に制止をかけるでしょう。
※アトスも十分にそれは解ってはいるのだが、セリシオから見てアトスはまだまだ自分の傀儡であるお子様と思っているので、短絡的な行動を起こしても仕方がないと思っている。
「どうすんだよ、探す対象がステラだけじゃなくて、三人に増えちまったぞ?」
少しは自分で考えなさい。
ああいえ、考える頭もありませんね。
考えたとしていい案が出るとも思えませんし。
私は顎に手を当てる。
そうだ。
ステラも探さなければならないのでした。
くそ、何処から手を付ければ。
その時、天才的頭脳を持つ私に、ある閃きが降り立ちました。
「ま、さか・・・」
もしかしたら、あの三人は一緒に行動しているのではないでしょうか?
考えられる。
あの二人はステラの追放に反対の立場を取っていましたし、ステラに接触すれば、あのバカ女が何を吹き込むか分かったものではありません。
もし、もしそうだとすれば、本当に何を吹き込むつもりでしょう?
考えるのです。
私は天才。
あんな女の考えくらい簡単に読める筈。
「お、おい、どうした? 何か思いついたのか?」
馴れ馴れしくも、アルトスが私の肩を手で触りゆすってきます。
それを振り払い、私は閃いた考えを伝える。
「もしかしたらあの三人は一緒に行動しているのではないかと思ったのですよ」
「なっ! マジかよ」
こんな馬鹿にそんな考えが思いつくわけもありませんか。
「じゃ、じゃあよ。あいつらはもうこの町にいないかも知れないんじゃないのか?」
「!!」
そうです。
その可能性も確かにあります。
我々に追われていると知れば、あの女がこの町を離れるという選択をしてもおかしくはない。
それに、あの二人が付いて行ったとしたら?
そうだとしたら、
そうだとしたら、私は、置いていかれた?
「馬鹿な!!」
「うぉ!?」
私が突然大声を上げたので、アルトスは驚いていますが、そんなことはどうでもいいのです。
私は勇者補佐。
このパーティーの頭脳ですよ?
この私を置いていくなどどういうつもりですか。
いや、考えるまでもありませんね。
あの女が二人をかどわかしたのです。
本当に何という女。
とんでもない疫病神でした。
くそ、あんな女など一時的とはいえ、パーティーに加えるのではなかった。
「お、おい。何だってんだよ?」
「・・・あなたの言う通り、その可能性はあります」
「やっぱりか」
そ、そう言えば、これはアルトスの考えがきっかけになって閃いたとなるのでしょうか?
まさか、この私がこんな猿に教えられたというのですか?
「あん?」
私が睨むと、アルトスは不振気に眉を寄せます。
こ、こんな猿に私がぁーー!!
「なんだってんだ?」
「・・・い、いえ。なんでもありません。そうなると何処に行ったのでしょうか?」
「王都じゃね? ここから近いし」
なんと安直な。
いえ、ですが悪くない考えかもしれません。
私から離れたいのであれば、やはり近くの街に移動するのが自然でしょうし。
くっ。
本当に何故あの二人は私を置いて・・・。
「・・・ま、さか・・・」
レオダス!
もしかしたら、ステラはレオダスの死を不審に思ったのではないでしょうか?
それを二人に吹き込んだのでは?
不味い。
これは非常に不味い事態です。
ここでレオダスの生存が判ってしまうと、嘘をついた私の信頼が揺らいでしまう。
勇者は御輿。
あんなお子様と旅などしたくありませんが、いてもらわなくてはならない存在です。
レオダスは私に追放されてから何処へ行くでしょうか?
特に当てのないあの男は生家に帰るのではないでしょうか?
あの男の生家はどこだ?
あんな奴に興味などありませんでしたから、特に聞いていませんでした。
ですが、皆でくだらない会話をしている時に、何処の生まれかが話題に上ったことがありましたね。
確か、あの男の生まれは・・・。
王都!
「・・・王都へ向かいます」
「やっぱりか。あいつらは王都に行ったんだな!?」
そんな単純な話ではないんですよ、愚か者め。
なんとしても、あの二人よりも先にレオダスを見つけなければ。
やはり殺しておくべきでした。
追放など生温かったのです。
「さっさと支度なさい。行きますよ、王都へ!」
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