お偉い賢者様に出て行けと追放されたが、新しく取得したスキル“キャリアオーバー”で王女様と共に無双する~ 何? 俺がいなくなって上手くいかないのはなんでか? 知るか、そんなことは自分で考えろ!!~
第42話賢者サイド クレア視点 カミングアウト!
第42話賢者サイド クレア視点 カミングアウト!
クレアサイド
「久しぶりですね。王都は」
私達三人は、王都へとやって来ました。
ざっと一年ぶりの王都です。
感慨深い気持ちもありますが、抑えられない、そわそわした気持ちでいっぱいです。
この都にレオダスがいるかもしれない。
ステラさんはあまり期待するなと言っていましたが、一縷いちるの望みがあるのであれば、それにかけてみたい。
そんな私の気持ちが伝わってしまったのでしょうか。
ステラさんは、苦笑しながら私を見ます。
「クレアさん。言ってるでしょう? 過度な期待は禁物です」
「は、はい。分かっています。分かっていますとも!」
とは言え、気持ちが高ぶって抑えられません。
「はぁ~、恋する乙女は判りやすいっすね」
「ふぁ!!」
お、おかしな声が出てしまいました。
だってステラさんが変なこと言うから。
どどどど、どうしてステラさんがずっと隠していた私の淡い思慕に気が付いてしまったのでしょう?
あああ、か、顔が熱い。
もしかして私今、顔が真っ赤っか!?
「な、なんのことでしょうか?」
私は必死になって隠そうとします。
何故でしょうか。
ステラさんは半眼で私を見つめます。
「こんなに判りやすいのに、隠せていると思っている辺りが凄いですね」
か、確信を持たれています。
な、何で一度もあったことのないレオダスの想いを判ったんでしょうか。
「・・・クレアは判りやすいからね」
「勇者様!?」
え?
もしかして、勇者様にもバレている?
う、嘘。
嘘嘘。
「や、クレアさん。すっごく判りやすいです。付き合いが短くてレオダスさんとクレアさんが実際会話した所を見ていない私でも判ります」
ぼん!
とうとう私は爆発して顔から湯気が上りました。
「まあ、それでいて僕のお尻を変な目で見るのは止めてほしいんだけど・・・」
「ぶぼほぉーーーーーー!!!!」
思わずむせて、四つん這いになってしまいました。
な、何故それを?
ステラさんが驚愕の目で私を見ます。
そ、そんな目で私を見ないでぇ~~。
「・・・え、クレアさんてショタまで装備してんすか? 流石にドン引きなんですけど」
「ち、ちがっ! 違うんです!!」
私は立ち上がり必死に言い訳を探しました。
わたわたと、手足を意味なく動かして。
「勇者様は8歳の時から知っていますから。『可愛いなー、大きくなったなー』って思っていただけで」
「それを世間一般ではショタっていうんですよ」
私は顔に両手を当ててしゃがみ込みました。
死にたい。
もう私を見ないで~!
「で、クレアさんのカミングアウトはともかく、これからどうしますか?」
あ、ステラさんがもうこの話題を切り上げようとしています。
でも、私はしばらく回復できそうにありません。
チラっと二人を見れば、勇者様は顎に手を当てています。
「レオダスの実家はこの王都らしいんだ。だからもしレオダスがこの王都に寄ったのなら、一度は実家に帰ってると思うんだけど」
「おお、それは貴重な情報ですね。それでその実家は?」
ステラさんがそう尋ねると、勇者様は困った顔になります。
「・・・知らない。クレア知ってる?」
「わ、私も知りません・・・」
なんてことでしょう。
私はレオダスのことをこんなにも知らなかったのです。
ステラさんは唸りました。
「うーん、じゃあどうしましょうか。人一人探すにはこの王都は広すぎます」
気が重くなってきました。
ズーンと気が沈むと同時に気分が落ち着いてきて、私はゆっくりと立ち上がります。
「一度、国王様に挨拶をしたいと思います」
「ええ!!」
ステラさんが飛び上がりました。
「こ、国王様って王様ですか? ああ、馬鹿みたいなこと口走ってる」
勇者様も頷きます。
「そうだね。王都に来たわけだし、王様にご挨拶しないといけないよね」
「さ、流石は勇者パーティー。さらりと国王様に会うって言っちゃうとは・・・」
ぐいっとステラさんは顎まで滴っている汗をぬぐいました。
「じゃあ行こうステラ」
「はえ?」
ステラさんはポカンと口を開けます。
「あたしも?」
「そうだよ?」
あれ?
プルプルと震え出しました。
「な、何故にあたしも?」
「だってステラも僕らの仲間でしょ?」
ステラさんがぱっと真顔になりました。
「あたし、仲間から抜けたつもりだったんですけど」
「うん。もう一緒に戦ってくれとは言わないよ。でも、ステラのおかげで僕らはここにいる。立派な仲間でしょ?」
ステラさんは苦笑して、頭をぽりぽりとかきました。
「勇者様は純真ですね。好きですよそういうの」
「ありがとう。あと、僕を“勇者様”っていうのは止めてくれない?」
「? どういうことっすか?」
はい。
よく分かりません。
だって、勇者様は勇者様です。
「僕にはアトスって名前がある。それで呼んでよ」
困った顔でステラさんは私を見ます。
わ、私も困ってしまいます。
いきなりそんなことを言われても。
「なんか、距離を感じて、嫌だ」
寂しげに言う勇者様を見ていると胸の辺りがチクっとなりました。
そんな風に思っていたんですね。
「え、えーと、じゃあアトス様」
「“様”はいらないよ」
「ええ、じゃあ、アトス、さん」
「“さん”も」
「え、あー、あー、っと・・・」
「レオダスは僕を“アトス”って呼んでくれたよ」
そう。
そうでした。
レオダスだけは勇者様を名前で呼んでいました。
ああ、レオダス。
貴方は本当に・・・。
「じゃ、じゃあ“アトス”。よ、よろしく」
「うん、ありがとうステラ」
勇者様は破顔した。
ああ、眩しい。
尊いです勇者様。
その穢れのない笑顔。
こ、こんな風に思っているからショタと呼ばれてしまうのでしょうか!?
「クレアもね?」
「ええ、私もですか!?」
「・・・嫌?」
う、うう。
そんな顔をされたら。
「わ、分かりました。でも、さん付けが限界です。それでいいですか?」
「うーん。分かったよ。クレアは普段からさん付けだからね」
「すいません」
「レオダスだけは呼び捨てだけどね」
ボン!
再び顔が赤くなりました。
も、もう勘弁してください~。
ああ、笑われています。
「じゃあ、行こうか王宮に」
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