第39話カルルタート山の攻略は難しい1
「あの時は本当にびっくりしたけど・・・」
焼き尽くした木々を見て、アティは呆れた様子で半眼になる。
「実際に見ると、なんか色々呆れちゃうというか諦めちゃうというか」
「そうだよな」
俺としても苦笑するしかない。
「レオダスって、今、人間では世界最強だと思うのよ」
「やっぱりそう思うか?」
俺の問いにアティはコクリと頷く。
「確か騎士団長のレベルが26だったから、我が国最高峰のレベルが25前後ってところ」
そうだ。
騎士団長は俺にもよく稽古をつけてくれた。
当時は“早熟”のスキルを持っていて、同年代では負けなしだった俺に、挫折を味合わせてくれた人物だ。
そんな人のレベルを三倍近くも上回ってしまった。
無論、レベルが全てじゃない。
基本的にステータスの数値を上げるもので、技術そのものが高まるわけでは無いからだ。
低レベルで高レベルの相手を倒すことはままある。
ただ、これだけ高くなってしまうと、大概のことが力技でどうにかなってしまいそうだ。
「凄いね。最強、最強よこれは!」
アティは我が事の様に喜んでいる。
俺としても嬉しいのだが、力の感覚は馴染んできても、認識まではまだ理解が追い付いていない。
俺が、最強?
「これならこのクエストも楽勝よ。ガンガン進みましょう!」
「こーら、さっき危なかったのを忘れたか? 慢心するなよ。油断した奴から死んでいくぞ?」
「う、分かった」
アティがしゅんとなってしまったので、俺は彼女の髪をくしゃっと触り撫でてやる。
こんなこと、本来王女様にするなんて不敬もいいところだ。
だが、彼女は今王女様じゃない。
俺の大切な仲間なんだ。
「分かればいい。そもそも経験が足りないのは仕方のないことなんだ」
「うん。これからいっぱい経験するね!」
出来る限り優しく笑う。
「頼りにしてるぜ相棒」
アティはキョトンとした。
「相棒?」
「違うのか?」
思わず素で尋ねてしまった。
アティは一瞬ポケッとしたが、すぐに嬉しそうに首を縦に振る。
「うん。あたしはレオダスの相棒!」
「よし、それじゃあ行こうか!」
「うん!」
俺達は山を登った。
途中で危険なモンスターと多数遭遇したが、なんとか切り抜けた。
俺がこのトンデモスキルで強くなってから、これだけの強敵と連続戦闘する機会がなかったが、このクエストは俺にとっても良い経験となった。
ようやく慣れてきた。
自分の身体能力、魔力の多さもほぼ把握した。
これならある程度力加減も出来る。
アティとの連携も出来てきた。
ここに来る前も、簡単なダンジョンで経験も積んだけど、やはり緊張感を伴う強敵との経験値は段違いだ。
驚くべきことに、アティはこの短期間で一つレベルアップして20になった。
まさか、俺と同じレベルになるとは。
まあ、俺は規格外のスキルで本来のレベルが霞んでしまうが、彼女の成長には目を見張るものがある。
ハッキリ言って、このままレベルアップを続ければ勇者パーティーに参戦も可能だろう。
やっとカルルタート山中腹辺りまでやって来た。
これまではなんとかなった。
これからも慎重に行こう。
「ふぅ」
アティは汗をぬぐう。
これまで緊張の連続だ。
今いるこの辺りにはモンスターの気配はない。
だからこそ、無理をせずに、今日はここでキャンプをすることになった。
「疲れたか?」
「まだまだ平気だよ。もっと進めるよ」
「そう言うな。俺は疲れた」
嘘ではない。
彼女を休ませたい気持ちはあるが、俺も疲れが溜まっている。
キャリアオーバーのおかげで、以前ほどではないが、疲れは疲れだ。
「今日はここで休む。俺は起きているから君は寝てくれ」
「レオダスは寝ないの?」
「勿論寝るさ。少ししたら起こすと思うが、大丈夫か?」
アティは頷く。
「じゃあ、休もうか。食事の支度をしよう」
俺達はキャンプの準備をする。
死闘はこれからだ。
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