第33話アティの独白
アティ視点。
あたしがレオダスと出会ったのは、12歳の頃。
お父様がレオダスのスキルに興味を持ち、城へ招いたのだ。
上流階級の男の人しか知らないあたしには、レオダスのような気さくに話しかけてくれる男の人は初めてだった。
これはお父様の計らいで、あたしを年頃の女の子として扱ってほしいと言われていたらしい。
レオダスは城の中しか知らないあたしに色々なことを教えてくれた。
書物でしか知らない世界をもっと詳しく、実体験をもって話してくれたので、本とは比べものにならないくらい面白く、興味を惹かれた。
レオダスはあたしのお兄ちゃんのような存在になった。
それからもレオダスと他愛もない話をしたり、彼の訓練を遠くから眺めたり、それだけであたしは楽しかった。
だけど、そんな楽しい時間は長くは続かなかった。
レオダスが勇者と共に冒険へ行ってしまったのだ。
その中には、あの忌々しい賢者セリシオと、もう一人、教会から派遣された聖女クレアがいた。
クレアは綺麗な人だった。
なんとなく、いつかこの人もレオダスに惹かれるんじゃないかという不安に駆られた。
あたしの不安をよそに、彼らは旅立ってしまった。
勇者を護るためにお父様はレオダスを呼んでいたのだから、旅に出てしまったのは仕方がない。
仕方がないけれど、やっぱり寂しかった。
覚悟は出来ていたけど、やっぱり悲しかった。
あたしはそれ以来、城をちょくちょく抜け出しては、レオダスの実家を訪れるようになった。
解っている。
彼が戻ってくるなどあり得ないと。
でも、もしかしたら。
そう思って通っていた。
お父様は頭を悩ませていたみたいだけど、レオダスを送り出したことがやっぱり悔しくて、あたしはせめてもの嫌がらせの意味も込めて、これを続けた。
そんなある日。
いつもの日課としてレオダスの家を訪れると、本当にレオダスがいた。
びっくりした。
あり得ないことが起こった。
あたしは我儘を言ってお父様に頼み込み、レオダスを城に招いた。
そして、言ったのだ。
一緒に冒険に出たいと。
勿論お父様は反対した。
でも、あたしの熱意が本物だと解ると、レオダスと会ってから決めると言ってくれた。
ドキドキしてレオダスとお父様の対面を見守っていたけれど、お父様は驚く程すんなりとあたしの同行を許してくれた。
何がそうさせたのか、こそっと聞いてみたけど、以前見たレオダスとは明らかに違う凄みを感じたと、お父様は言った。
お父様の人を見る目は確かだ。
そのお父様が言うのだから本当なんだろう。
これでようやくあたしはレオダスと冒険が出来る。
そう思った。
でも、レオダスはあたしに試験を出した。
いくつか今度行くカルルタート山を想定したシミュレーションを行い、それをクリアしなければ、冒険には連れて行かないと。
だから頑張らないと。
やっとレオダスと冒険できるんだ。
絶対にレオダスが納得する結果を出してやる。
あたしが彼と並び立つ為に、これまで努力してきた成果を見せてやる。
大好きな人と一緒にいる為に。
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