第26話冒険者としてのスタート
やっと俺の、いや、俺達の冒険がスタートする。
まずは冒険者ギルドに登録し、何かクエストを斡旋してもらおう。
「ねーねー、レオダス。冒険者って具体的に何するの?」
相変わらず俺に引っ付いてくるアティには困りものだな。
苦笑しながらも、俺はアティの額を軽く小突いた。
「あいたぁ!」
小突かれたアティは額をさすさすしながら涙目で俺を睨む。
「なにするのー!」
「お前な、そんなことも知らずに俺についてきたのか?」
「お父様にもぶたれたことないのに・・・」
俺は半眼でアティを見る。
「もしお姫様として扱った方がいいならそうしますよ、アティシア王女?」
「う~」
これが思ったよりも効果があったらしく、アティは口を尖らせた。
「それは・・・嫌だ」
今小突いたのは俺としても中々勇気のいることだった。
なんといっても相手はこの国の王女様だ。
もし城の人間に見つかれば、大問題になって俺は牢獄行き決定だ。
だけど、彼女はそれを望んでいない。
王様もアティには一人の女の子として接してくれと言っていた。
そう、これもまた冒険。
俺、冒険者になるんだし。
「で、冒険者だけど」
俺はピンと人差し指を立てる。
「冒険者ってのは“何でも屋”だ」
「・・・なんか、こう、一気になりたくなくなった」
ふむ。
気持ちは解る。
なんとなく地位が低そうに感じるからな。
「ドブさらいとかもやるの?」
眉を下げながら『それは嫌』と目が言っている。
「そうだな。そういう仕事もあるみたいだ」
「・・・えー」
まあ、女の子は嫌かもな。
「冒険者ってもっとこう、かっこいいと思ってた。ドラゴン倒したり」
そうだろうな。
解っている。
彼女が思っている冒険者とはそういう存在だ。
「ドブさらいは本当に登録したばかりの新人がやる仕事らしいぞ。俺もそれをやるならモンスターと戦っている方が気が楽だ」
アティの顔に活力が戻る。
目をキラキラとさせた。
「そうよね!」
「後はまあ、珍しい植物や鉱石の採取や、猟師や用心棒、傭兵なんてのも募集することがあるって話だ」
「・・・本当に何でもやるんだ」
アティは目を丸くする。
俺も実は詳しくは知らないんだ。
今言った知識も酒場とかで聞きかじった話をしているだけ。
「ともかく行ってみよう。登録しないことには何も始まらない」
「うん!」
*********
冒険者ギルドは、想像よりも大きな建物だった。
荒れくれ者が多く、汗臭いと思っていたのだが、中に入ってみると清潔にされており、職員もキビキビとしていて見ていて気持ちがいい。
俺とアティはお上りさんよろしく、ギルドの中をきょろきょろと見渡した。
目の前には受付のカウンターがあり、その横には大きな掲示板がかけられ、募集クエストがいくつも並べられている。
よく見れば、クエストはランク毎に分けられているようで、自分の格付け以上のクエストは受けられないようだ。
まあそうか。
新人が無謀なクエストを受けて死んでしまっても困るし、募集を出している以上、それを解決してほしい依頼人がいるのだから、いつまでも解消しないのではギルドとしても困るだろうからな。
俺は、受付のお姉さんに声をかけた。
「登録をしたいんだけど」
「こんにちは、登録ですね」
お姉さんはテキパキと書類を用意し、簡単な説明をしてくれた。
内容はさっき俺がアティに話したようなことだった。
驚いたのは、しっかりとした研修のカリキュラムが確立されており、薬草。鉱石、モンスターの生態などを詳しく教えてくれるそうだ。
ギルドが独自に調べ上げた資料は、登録をすれば誰もが閲覧することが出来、ランクが上がれば、貴重な情報を開示してくれるとかなんとか。
やっぱり聞きかじっただけじゃ分からんね。
お姉さんは綺麗な声で説明を続ける。
「さて、冒険者は最低ランクがE、順に上がっていき最高ランクがトリプルAになります。新人は基本Eランクからのスタートなのですが、経歴によってはランク上位から始めることが出来ます」
「経歴?」
「はい。例えば、傭兵だったりとか、猟師、植物や鉱石について知識や経験がある方。他にもユニークスキルを持っている方々が対象になります」
なるほどな。
王宮騎士なども事情があって脱騎士になる人達も珍しくないとか。
軍で訓練を積んだ人間を、Eランクから始めさせるのは人材の無駄というわけだ。
「もし、貴方方にアピールポイントがあれば、書類に記載して下さい」
もらった書類にはアピールポイント記載の欄もある。
ここで俺のキャリアオーバーを記載すれば、おそらく上位ランクから始めることが出来るだろう。
だがだ。
実質レベル70は未だ人類が到達したことがないレベルだ。
ここで正直に書いてしまうと、トラブルに巻き込まれかねない。
なので、別の手段を使うことにする。
「これがあるんだけど」
「はい、何の書類ですか?」
俺はとある封筒をお姉さんに渡す。
ずっと見事な営業スマイルを続けていたお姉さんの顔が笑顔のまま凍りついた。
「・・・えっと、この国王様の印は、本物?」
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