第27話ギルドは大慌て

「本物、ですか?」


 お姉さんは恐る恐るそう尋ねた。


 俺は頷く。


「当たり前だろ? 王印なんて偽造したらその時点で首が飛ぶぞ」


 俺が見せたのは王様がしたためてくれた親書だ。


 これがあれば色々と優遇してくれるだろうとのことだったが、効果はてきめんだったらしい。


 俺としては一からスタートでも問題ない。


 勇者パーティーにいた経験は俺の力になっているし、キャリアオーバーもある。


 キャリアオーバーは勿論、追放された前職(?)も書く気にはなれなかったが、新人からでもランクアップする自信はあった。


 ただ、ここには王女であるアティがいる。


 危険な目に合わせるわけにはいかないが、簡単で単調なクエストばかりではつまらないだろう。


 今の俺なら余程油断しなければ、彼女を危険に晒すことは無いだろうし、冒険者に対して、少々幻滅している彼女に刺激を与えてやりたい。


「し、少々お待ち下さーい」


 お姉さんは事務所内に引っ込んで行った。


「やっぱりお父様の手紙は効果絶大ね」


「そらそうだろうな」


 ギルドは民間の機関ではあるが、それでも国王を無視することなど出来ないだろうし、危険なモンスターが現れた場合、国がギルドに対して依頼することも少なくはない。


 ギルドにとっては王国は貴重なお得意様なのだ。


 待つことしばし、カチッとしたスーツに身を包んだ男性が現れた。


 白髪のオールバック。

 ワックスで固めた髭と、美しい足運び。

 痩せ型ではあるものの、確かに鍛えられたその身体。


 一見執事のような風貌ではあるものの、只者ではない。


「当ギルドのマスター、サルバリアンです。本日は冒険者登録ありがとうございます」


「レオダスだ」

「アティよ」


 アティは髪を後ろでまとめ、フード付きのローブを被りながらそう言った。


 バレたらバレたでその時はその時なのだが、一応身バレしないようにする方針でいく。


「親書を確認しました。間違いなく国王陛下の直筆です」


「ああ」


 抑揚なく俺は頷く。


「親書にはアティ様は勿論、レオダス様は並々ならぬ実力の持ち主とのこと。Eランクからのスタートは人材の無駄遣いだと思います」


 上手くいった。


 これなら高ランクからスタート出来る。


「本来であれば、ダブルAランクからのスタートでも良いと思うのですが、流石に前例がなく、当ギルドと致しましても直接依頼をこなしてもらい、実力を確認した後に、ランクアップさせていただきたいのですが、それでよろしいでしょうか?」


「と、すると俺達のランクは?」


「Aからでは如何でしょう」


「A!?」


 マジか!?


 C辺りからスタート出来れば御の字と思っていたのだが、いきなりAだと?

 しかもだ、実力が確認できればすぐにダブルAに昇級出来るという。

 破格待遇も良いところだ。


「やはりダブルAからでないと納得出来ませんか・・・」


 俺はブンブンと首を横に振る。


「じ、十分だ」


 ギルマスサルバリアンはホッとした様子で息を吐く。


「よかった。推薦があるとはいえ、いきなりダブルAからでは、もし何かあれば貴重な人材を失うことになりますからな」


「はは、感謝するよ」


 本心だろうが、国王が推薦した人間がアッサリと死にましたとなれば責任問題になりかねないからな。


 そんな気苦労をかけてしまった彼に心の中で感謝と共に謝罪をする。


「こほん、では」


 受け付けのお姉さんは、咳払いをすると、一枚の紙を出した。


「このクエストなどは如何でしょう?」

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